ZAITEN2025年01月号
植田日銀の金融正常化路線に
玉木国民民主「高圧経済の壁」
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「金融政策の独立性」を掲げる日銀とて、政局混乱の影響からは逃れられない。総裁の植田和男は「経済・物価情勢が見通し通りに推移すれば、引き続き政策金利を引き上げていく」と金融政策の正常化路線の推進に大見得を切る。
だが、15年ぶりの衆院での与党過半数割れで石破茂政権の政権運営が大きく揺らぐ中、キャスティングボートを握った国民民主党は賃金デフレからの脱却が定着するまで積極財政と金融緩和を続ける「高圧経済政策」を提唱。植田日銀の追加利上げの動きを激しく牽制している。
先の総選挙で議席を改選前から4倍に増やし一躍「時の人」となった国民民主党代表の玉木雄一郎は、周囲に「うちの経済政策を丸呑みするくらいの覚悟がなければ、石破政権に協力するメリットはない」などと嘯いているようで、その矛先は日銀の金融政策にも向いている。「これまで政策レクに行った記憶もほとんどない」(局長級OB)というほど弱小政党扱いしてきた玉木国民民主への対応に苦慮し、翻弄される植田日銀の様は滑稽にさえ映る。
追加利上げを真っ向否定
「物価上昇率プラス2%の名目賃金上昇率が安定的に達成されるまで金融緩和と積極財政をやるべきだ」「2025年春闘で中小企業の賃上げ率の度合いを確認するまでは、追加利上げをすべきではない」
11月1日に米通信社ブルームバーグが配信した玉木のインタビュー記事は、総裁の植田や副総裁の内田真一(86年入行)ら日銀執行部を震撼させた。日銀は次回12月の金融政策決定会合か、来年1月の会合で現行年0・25%の政策金利を0・5%に引き上げる追加利上げを目論んでいたからだ。玉木発言はその可能性を真っ向から否定し、少なくとも春闘の賃上げ動向が判明する来年3月会合まで追加利上げの判断の先送りするように迫ったものだ。
しかも、玉木が提示した追加利上げ容認のハードルは格段に高い。インタビューで言及した「名目賃金上昇率」が具体的にどの指標を指すかは明らかにしなかったが、「高圧経済」を主張する玉木のスタンスからすると、現時点で4%に到達していない毎月勤労統計の所定内給与のような賃金指標を指していると見られる。物価上昇率が日銀の見通し通りに2%程度で推移するなら、追加利上げを容認してもらうには所定内給与は4%程度増加する必要がある。
だが、今年9月の毎月勤労統計を見ると、所定内給与は2・6%増にとどまる。ベースアップと定期昇給を合わせた平均賃上げ率が5・1%と33年ぶりの高水準を記録した24年春闘の結果を反映してもこのレベルである。仮に経営体力が弱い中小企業の賃上げ状況にまで「玉木基準」を当てはめるとすれば、日銀は永遠に追加利上げを行えない状況に陥りかねない。
......続きはZAITEN1月号で。