ZAITEN2025年02月号
行き詰まる再建計画―
【特集】東電・柏崎刈羽原発「再稼働画策」に蠢く奴ら
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少数与党に転落し、国民民主党をはじめ、野党の協力なしには2025年度の予算編成も税制改正もままならない石破茂政権。財務省をはじめ霞が関の主要官庁が右往左往する中、独り経済産業省だけは「左うちわ」のように見える。政府の経済対策でラピダスなど国策半導体プロジェクトへの巨額の補助金を確保し、エネルギー基本計画の改定では原発復権に道筋を付けたからだ。ただ、好事魔多しとはよく言ったもの。首都圏の電力供給の安定化と、東京電力ホールディングス(HD)の経営危機回避に向けて急務である柏崎刈羽原発(通称・KK)の再稼働のめどは立たないままだ。
地元の新潟県では、先の衆院選で「原発ゼロ」を党綱領に掲げる立憲民主が5選挙区全てで勝利し、自民党候補が全滅した。再稼働の実現に不可欠な県の同意は一層見通し難くなった。11年の福島第1原発事故後の公的支援スキームづくりを主導し、社外取締役も務めた経験から「東電の守護神」を自任する元経済産業事務次官の嶋田隆(1982年旧通商産業省)は、古巣の経産省の官僚も動員して地元を何とか懐柔しようと策謀をめぐらせている。
小早川社長の空騒ぎ
「12月の新潟県議会に請願が出なかったのはショックだ。24年度内の再稼働は絶望的となり、再建計画の改定作業にも大きな支障が出ている」。社長の小早川智明(88年入社)ら東電経営陣は深い失望感に苛まれている。原発再稼働を巡っては、地元商工会などからの請願を受けて県議会が審査・採決し、知事が同意するプロセスが慣習化している。県議や商工関係者の間でもKK再稼働や東電に対する不信感が根強い新潟県では、誰も同意プロセスのスタートとなる請願づくりに動かなかった。最終判断を下すキーマンである知事の花角英世(82年旧運輸省)も「結論を出す時期は見通せない」と厳しい姿勢を堅持している。
小早川ら経営陣が再稼働を焦っている背景には、25年3月末までに再建計画を更新しなければならない事情がある。福島第1原発事故の賠償や廃炉で公的支援を受ける「原子力損害賠償・廃炉等支援機構(原賠機構)」との取り決めで、今後10年程度の収支見通しを示す必要がある。「1基動けば、年間1000億円規模の収支改善効果がある」と見込むKKの再稼働時期が定まらないままでは、「数字を詰められない」(東電幹部)のだ。
......続きはZAITEN2月号で。