ZAITEN2025年02月号
月刊ゴルフ場批評88
「新東京都民ゴルフ場」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
新年1発目は関東最古の河川敷コース、「新東京都民ゴルフ場」を取り上げよう。
9ホール構成でドライバーが打てるのは3番、5番の2ホールのみというスケールだが、開場当時は上田治設計の堂々たる36ホールだった。
運営は京都GC、札樽GC、茨城GCなど錚々たるコースを手がけてきた安達建設。まだまだ特権階級の嗜みだった昭和20年代に、ゴルフの大衆化を目指して都内の河川敷にゴルフコースを造ろうと考えたのがすごい。
その後、時代の波とともに18ホールに縮小され、場外飛球の問題もあって2007年からは9ホールでの営業。また、度重なる水害によって、何度もコース全体が浸水。19年の台風19号では壊滅的なダメージを受け、当時の運営会社はコース存続を断念した。
まさに消滅の危機だったが、医療法人の葵会グループが救いの手を差し伸べ、翌20年には再オープンに漕ぎつけた。
同年8月に行われたオープニングセレモニーには、同コースに在籍したこともある青木功や倉本昌弘を始め、多くの関係者が駆けつけ、存続を喜んだものだった。
そして24年10月にはマルハングループ入りし、現在に至っている。
急に思い立って昼すぎからの9ホール。ネット予約もできるが、平日は到着順、営業時間は「日の出から日没まで」とおおらかだ。
都内らしく狭いのは駐車場(37台)。いきなり「すいません、今満車なんです。すぐ空きますから」とスタッフは平身低頭。週末だったらどうなってしまうんだ? フロントで受付し、チケットを買って前精算。そして、送迎バスで土手の向こうのコースへ向かう。前の組は女性2人、その前はご高齢と思しき男性1人。その前は女性1人といった感じで、「組み合わせ」せずに回らせてくれる。
スタートホールは約160㍎のパー3。3組前の女性はドライバーを片手に、グリーンが空くのを待っている。若者には「ミニコース」でも、シニアや女性ならドライバーを使えるホールも増えるわけか。
ティグラウンドは人工芝だが最近張り替えたらしく、硬くならずティも刺しやすい最新版で快適。
フェアウエーの幅も広く開放感たっぷり。3番パー4や5番パー5では、気持ちよくドライバーを振り回せる。
ところが、途中でビックリ。6番パー3と7番パー3の間に、「寿ホール」なる60㍎のエキストラホールがあるのだ。 コースは7番から折り返すように、土手沿いを進むレイアウトだが、なぜ1ホール「おまけ」が? 調べても由来が出ていない。
あくまで推測だが、土手沿いは歩行者や自転車が通行する。この条件でドライバーを振り回し右側のネットを越えるホールを造ると、打球事故の可能性が高まり危険と判断、ホールを短く分断したのかもしれない。
ネーミングも含めて「寿ホール」の謎はつきないが、1ホール多く楽しめたから、まぁいいか。距離は短くても結構周り甲斐があって、「ゴルフ」を楽しむには十分だ。
●所在地 東京都足立区新田1-15-1 ●TEL. 03-3919-0111 ●開場 1955(昭和30)年9月9日 ●設計者 上田治 ●ヤーデージ 9ホール、1965ヤード、パー31