ZAITEN2025年03月号

月刊ゴルフ場批評89

「唐沢ゴルフ倶楽部 唐沢コース」批評

カテゴリ:月刊ゴルフ場批評

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 唐沢ゴルフ倶楽部は栃木県南、佐野市近郊の丘陵地に位置し、唐沢コース、三好コースそれぞれ18ホールを有する。今回取り上げる唐沢コースは1961年開場、栃木では6番目に古い。

 栃木県でも佐野市は埼玉県にも近く、アクセスの良さから人気コースが多い、いわゆる〝ゴルフ場銀座〟。しかし、唐沢コースはなぜか知名度が低く、地味な印象だ。

 市街地から進入路を進むと、小高い山の斜面に美しく整備された樹々が立ち並び、清々しい空気感に満ち溢れる。後から聞いたら、唐沢山一帯は県の自然公園に指定され、唐澤山神社や唐沢山城址など歴史と由緒のある土地だった。

 急坂を登った先に見えてくるのは、山を背負うように樹々に囲まれたワインレッドの屋根が印象的な木造のクラブハウス。飾りっ気はなく少々くたびれてはいるが、階段や天井の木材は温かみがあり落ち着いた雰囲気だ。

 マスター室側に出ると、目の前には古池が広がる。池といってもバブル期のコースのようなやたらゴージャスな庭園風ではなく、古びた寺院にでも来たような趣で、その佇まいに心を奪われる。

 コースのリポートに入ろう。1番ホールは急な斜面をカートに揺られ登った先に見えてくる。両サイドを老松にセパレートされたフェアウエーが真っすぐに伸びているが左サイドは即OBの崖。出だしから正確なショットが必要だ。

 唐沢コースは距離も短く、コウライの1グリーン(一部2グリーン)。グリーンもコンパクトな砲台が多く、典型的なクラシックタイプといえるだろう。ドッグレッグやブラインドホールも多く、短いが気を抜けない。

 要注意なのは、落としたらなかなか上がってこられない〝地獄谷〟の数々。特に、13番パー3はグリーンから少しこぼれただけで、40㍎もの打ち上げのアプローチを強いられる過酷なホールだ。  あちこちに点在する地獄谷では、どこも少しのミスショットには手痛い代償が待っている。ホール自体にはそれほどのアップダウンは感じないが、左右に曲げた時の落差が大きいのだ。

 距離よりも正確性、グリーンは手前からが攻略のポイントだ。これでは飛ばしたい若者にはウケない。飛ばし屋には、距離のしっかりある三好コースがお勧めだ。  でも、プレー自体はそんな窮屈感はなく、四季折々の美しい草花や、赤松の林と青空のコントラストに目を奪われ、大袈裟だが陶然とした気持ちさえ感じる。

 ランチの「唐沢そば」も、毎日打ちたてのそばを仕入れるというだけに香りが強く、素晴らしい。  

 それでも地味というか、人気が今一つなのは、時代的にクラシックタイプのコースが敬遠されがちだからなんだろうな。〝地獄谷〟もカジュアルゴルファーには厳しいだろうし、実際に経営も苦労が絶えないと聞く。

 昨年末、PGMを擁する平和がアコーディア・ゴルフを買収し、保有コース数では世界最多というニュースもあった。減少するゴルフ人口の歯止めにはぜひ期待したいが、唐沢コースのような古き良きコースも生き残っていってほしいと願うばかりだ。

●所在地 栃木県佐野市富士町1番地 ●TEL. 0283-24-2525 ●開場 1961(昭和36)年4月13日 ●設計者 陳 清水 ●ヤーデージ 18ホール、6201ヤード、パー72

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