ZAITEN2025年04月号
「年賀状じまい」を加速させた空前の失策
【特集】日本郵便・千田の「値上げ」で笑う〝悪い奴ら〟
カテゴリ:企業・経済
2025年1月1日に東京都新宿区の新宿郵便局で年賀郵便配達の出発式が開催された。日本郵政社長・増田寛也の「新年のおもてなしの心を込め、しっかり届けてきてください」という挨拶は元日の朝に空しく響く結果となった。
日本郵便発表の速報値では、25年の元日に全国で配達された年賀郵便物(年賀状)は約4億9052万枚で、前年比34%減と大幅に減少した。11年に同約20億枚、22年に同約10億枚と漸次的に減少していた年賀状は、直近のわずか3年で半減することになった。
こうした年賀状の急激な減少の背景には2つの理由がある。
1つ目は、言わずもがな24年10月に「はがき」の料金が63円から85円に約35%も大幅な値上げとなったことだ。郵便事業の黒字化を目的とする値上げだったが、いかにもお役所仕事的な机上の計算に基づいたものだったと断罪せざるを得ない。値上げ幅と同率の売上減が起きてしまえば元も子もない。人件費や集配システムなどのコストをふまえると、結局赤字は解消できず、この大幅な値上げは失策だった。
安直な値上げは日本郵便の想定を超え、さらに日本社会全体の「年賀状じまい」の決定打となった模様だ。もう1つの理由をある物流有識者が指摘する。
「そもそも、企業や大学でも請求書などの文書をデジタル化して外部とのやり取りはメールで済ませるようになったが、24年10月の値上げ以降この流れも一気に加速していた。
この2、3年で『年賀状じまい』という言葉が聞かれるようになった。印刷会社などでは年賀状印刷に代わって『年賀状じまい』用の印刷サービスも登場している。礼節を重んじる日本社会でも、経済的合理性から『年賀状じまい』に対する心理的なハードルがこの値上げによってかなり下がったのではないか。25年の年賀状の激減は『年賀状じまい』元年とも言える」
手紙やはがきなどの信書を配達する郵便事業という社会インフラが、早晩破たんするということは誰の目にも明らかでもはや社会の共通認識と言える。
官僚たちの獲物
07年の郵政民営化から20年弱が過ぎたが、日本郵政が持つゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式を手放す「完全民営化」から遠のく動きも活発化している。
......続きはZAITEN4月号で。