ZAITEN2025年05月号
軽率な現場無視で営業損失25億円の代償
Meiji Seikaファルマ「コスタイベ不調」の不都合な真実
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今年3月3日14時、雨の降る東京地方裁判所で1つの民事訴訟が幕を開けた。 開かれたのは中堅製薬企業Meiji Seika ファルマ(Meiji)が名誉毀損で立憲民主党の原口一博衆議院議員を訴えるという前代未聞の裁判。この日の第1回口頭弁論には、Meijiの代理人弁護士だけ出席し、被告となる原口代議士やその代理人弁護士らは姿を見せず、報道によればあっさり閉廷したという。 この裁判で、Meijiが名誉毀損だと主張しているのは、
①同社を旧日本陸軍で人体実験を行ったとされる731部隊になぞらえたこと
②同社の新型コロナウイルス感染症に対するワクチン「コスタイベ」の承認審査過程が公正ではないと訴えていること
③コスタイベが生物兵器だとしていること
④コスタイベの承認審査で必要となる治験を人体実験とみなしていることの4点。
いずれも原口代議士がSNSなどを通じて発信し、同社やコスタイベの評判を落とし、影響が生じているとした。
「意見や論評の範疇を超える」
昨年12月の会見でMeijiの小林大吉郎社長は、この4点を挙げ、提訴を決めた理由をこう説明した。原告側代理人を務める三浦法律事務所の松田誠司弁護士によると、原口代議士の一連の発言で受けた損害は「55億7120万円を下回らない」という。ただ、「金銭が目的ではない」(小林社長)として、賠償額は1000万円に止めたとしている。
受けて立つ原口代議士も1歩も引く気はない様子だ。2月25日に会見し、「徹底的に闘っていく」と宣言した。Meijiの示した4点は「ほとんど私の言ったところとは関係ない」などと語気を強め、「疑問を封じ、言葉を封じている」とボルテージを上げた。
シェア1%未満疑惑
早くも泥仕合の様相を呈しつつあるMeijiと原口代議士の訴訟。どちらの主張に分があるかは、遠からず決着することだろう。 ただ、原口代議士の一連の言動がどこまで影響を与えたかは分からないが、コスタイベが市場で受け入れられていないのは厳然たる事実だ。
親会社である明治ホールディングス(HD)が今年2月に発表した2025年第3四半期決算によると、ワクチン・動物薬事業は25億円の営業損失。コスタイベの評価減などが響いたためで、46億円の営業利益としていた通期見通しも12億円の営業損失になると下方修正した。インフルエンザワクチンの出荷が前年同期比では大幅増となっていることを考慮すると、いかにコスタイベが足を引っ張っているかが分かる。
......続きはZAITEN5月号で。