ZAITEN2025年05月号
業界に警鐘を鳴らすことを放棄した罪深きみずほ
「金庫泥棒問題」は即刻刑事事件化せよ 弁護士 紀藤正樹
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今年2月、元行員による貸金庫からの窃盗被害を公表したみずほ銀行。被害の発覚は2019年のことで、5年以上もの期間、公表されなかった。さらには貸金庫窃盗被害のあった期間に同じ元行員が別の事件を起こし、21年に逮捕されていたことも明るみに出た一方で、貸金庫窃盗については公表から1カ月が過ぎた3月21日時点で刑事事件化されないなど不祥事の全貌は不透明なままだ。
こうした現状に〈金融庁からの処分も免れ、刑事事件化もせず役員も辞任せず。ひどい事件です〉とX(旧Twitter)に投稿したのが弁護士の紀藤正樹氏。紀藤弁護士に、みずほの不十分な対応、金融業界、日本企業が抱える不健全さなどについて聞いた。
―メガバンクの相次ぐ不祥事に金融業界全体の信用・信頼が揺らいでしまっています。
24年10月末に三菱UFJ銀行で発覚した元行員による貸金庫窃盗事件ですが、同行の公表後に他行での被害も後追いで公表されたことで大きな社会問題になっています。貸金庫という、一般的な消費者にはあまり馴染みがないとはいえ、「銀行のもっとも安全なサービス」と多くの人が漠然とイメージしていた貸金庫の中身が行員によって窃取されていたという事実は衝撃的です。「自分たちの預けたカネは無事なのか」と銀行そのものに対する信頼が崩れ、批判が集中することは、市民感情を踏まえれば無理からぬことです。
そんな中、今年2月18日に元行員による貸金庫窃盗事件を公表したみずほ銀行の姿勢には大きな問題があります。
三菱UFJ銀行が公表したことを受けての後追い公表で、しかも最初の公表では詳細も何もわからないプレスリリース1枚。批判が殺到するのは当然でしょう。
―次々に明らかになる事実をどのように見ますか。
組織としての隠蔽体質が露見していることに尽きると言えます。
みずほの貸金庫窃盗の犯人である元行員が、貸金庫窃盗と重なる期間に、システムを不正利用して現金約5200万円を盗んでいたことが判明しています。19年8月に社内で発覚して、同年10月には懲戒解雇処分されたうえで、21年2月に逮捕・起訴されており、貸金庫事件もこの過程において社内で把握されており、なぜその段階で問題を公表しなかったのか、理解に苦しみます。
もし公表されていれば、業界内や社会に広く注意喚起され、三菱UFJ銀行の事件は未然に防げた可能性があります。
また、行員による貸金庫という銀行業のシステムの不正利用は、監督官庁である金融庁への報告が必要になるはずで、行政による介入も本来あって然るべき事案だったとも言えます。結果的に三菱UFJ銀行での事件は、メディアでも大きく取り上げられた一方で、公表のタイミングで〝後発〟とみなされたみずほへの追及はあまりに弱い。いわば隠蔽することが得と言うか、正直者が損をすることになってしまっています。
......続きはZAITEN5月号で。