ZAITEN2025年05月号

新理事長は「奥のイエスマン」

農林中金「奥退任」でも〝院政支配〟の言語道断

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 外国債券の運用に失敗し、2025年3月期に1兆9000億円もの最終赤字を見込む農林中央金庫。かねて「A級戦犯」と批判されてきた理事長の奥和登(1983年入庫)は2月下旬になって、ようやく3月末で引責辞任すると発表した。  

 記者会見では、含み損を抱えた債券(約12兆8000億円)の売却によるポートフォリオの入れ替えが完了し、26年3月期には300億~700億円程度の黒字に転換する見通しが立ったと説明。全国の農業協同組合(JA)グループからの約1兆4000億円の資本増強支援にもメドがついたことを挙げて、「職責を全うできれば経営責任を明確化しようと考えていた」などと嘯いた。

 だが、奥が最初に赤字決算見通しを公表した昨春以降、理事長のイスを何とか死守しようと保身に汲々としてきた姿は「誰もが知るところ」(元役員)だ。しかも、後任理事長には「奥のイエスマン」と後ろ指をさされてきた常務執行役員・最高財務責任者(CFO)の北林太郎(94年入庫)が就くというから呆れかえるばかりだ。  

 財務を管理できず、過去最大の赤字決算を許したCFOは、本来、トップの奥とともに真っ先にクビが飛んで当然のはずだ。しかも社内で「単なる経理屋」(中堅幹部)と揶揄されてきた北林には、組織を統率する求心力や、何かと経営に介入してくる農協の中央組織JA全中や自民党の農林族議員と渡り合えるような器量も期待できない。畢竟、引責辞任したはずの奥が「アドバイス」などと称してしゃしゃり出て、北林を思い通りに操る〝院政支配〟が展開されることは想像に難くない。巨額赤字の尻拭いをさせられたJA関係者から「お為ごかしもいいところだ」と憤懣やるかたない声が漏れるのも、むべなるかなだ。

組織ぐるみの過小開示

「巨額含み損を抱えた3年前から退任を考えてきた」  奥が記者会見でこんな戯言を口にすると、詰めかけたマスコミの記者の間で失笑が漏れた。言っていることとやってきたことは、あまりにもかけ離れているからだ。というのも、18年に理事長に就任した奥は昨年5月時点で2期目(1期3年)の任期を迎えていた。その時点で25年3月期の赤字転落が不可避の見通しだったこともあり、政治サイドや農林水産省、JAグループからは奥の任期満了による退任と経営刷新を求める声が出ていた。

......続きはZAITEN5月号で。

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