メガバンクをはじめ、金融機関のビジネスモデルが崩壊する中、「メガ万年3位」が定着するみずほフィナンシャルグループ。銀行はじめ、傘下各社でリストラが進む。
一方、3月2日月曜日発売の本誌「ZAITEN」2020年4月号では坂井辰史FG社長の出身、みずほ証券で発生した"ある不祥事"を取り上げている。そこで今回、特別に20年2月号(19年12月26日発売)で掲載した記事《みずほFG「バブル入社組リストラ」の凄惨》を特別に無料公開したい。
なお、本誌編集部ではみずほFGに関する情報を広く募集しております。些細な情報とお感じのことでも結構ですので、以下の公式サイト情報提供フォームおよび編集部メールアドレスなどで情報をお寄せください。情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼頂ければ幸甚です。
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年金減額、管理職の昇給廃止、希望退職募集......。みずほフィナンシャルグループ(FG)でバブル入社組を狙い撃ちにした〝首切り〟作戦が苛烈化している。2026年度末までに1万9千人の人員削減を行う計画を打ち出すみずほだが、直近の19年4~9月期の連結純利益が3メガバンクで唯一2ケタ減益に陥るなど、「目も当てられない状況」(元役員)。
株価下落などで保身を焦る社長の坂井辰史(1984年旧日本興業銀行入行)は「改革のスピードを上げろ」と、FG執行役専務の石井哲(86年旧興銀)や、グループ傘下のみずほ銀行頭取の藤原弘治(85年旧第一勧業銀行)、みずほ証券社長の飯田浩一(86年旧興銀)ら中枢幹部に大号令を掛けているという。だが、「改革」とは名ばかりで、実態は給与が高い中高年社員の首切り加速で業績不振を糊塗する魂胆が見え見えだ。
一方で、収益底上げ策はお寒い限り。FG社長就任から2年を迎える坂井が「成長戦略」の名のもとに打ち出した施策は、世の流行に迎合した社員への副業解禁や、他行を後追いしただけの銀行のノルマ営業廃止、一向に普及しないキャッシュレス決済サービスなどの「際物ばかり」(FG幹部)。
「若者層らアプリユーザー8千万人を取り込む」とぶち上げたLINEと合弁のスマートフォン銀行も先行きは不透明で、坂井が「次世代金融への転換」による収益回復を掲げた中期経営計画(19~23年度)は初年度からドン詰まりの状態に陥っている。中計の年限を従来の3年から5年に延ばした坂井は「あと4年はトップに居座るつもり」(FG幹部)。無能な経営がこれ以上続けば、「みずほの収益・人材基盤を完全に崩壊させる」(中堅幹部)だけだろう。
「企業年金減額」で追い込み
「改革のスピードが今のままでいいとは思わない」―。みずほFGが東京・日本橋の日銀記者クラブで11月14日に開いた19年度上期決算発表会見。坂井は神妙な面持ちでこう語り、構造改革を加速する方針を強調した。今や恒例となった3メガ決算でのみずほの「独り負け」。19年度上期の連結純利益も、三菱UFJFGが前年同期比約6%減の6099億円、三井住友FGが同9%減の4319億円と踏ん張ったのに対し、みずほFGは同約20%減の2876億円。業績不振が際立った。
深刻なのはみずほ銀の経営実態を示す総資金利ザヤがマイナス0・18%と「逆ザヤ」に陥ったことだ。総資金利ザヤは、資金運用利回り(貸出金や有価証券運用の利回り)から資金調達原価(預金利回りや経費など)を差し引いて算出する銀行経営の代表的な指標。逆ザヤということは、銀行業務を続けるほど、赤字が膨らみかねない危機的な状況を示す。
しかし、新たな収益源を見出してこなかった坂井に出来るのは、構造改革と称した大規模な人員削減にドライブを掛けることだけ。このため、バブル入行組の大量首切りを加速させようとしている。そこで打ち出したのが企業年金の減額だ。みずほ銀とみずほ信託銀行を中心とする約3万5千人の社員のうち、53歳以下が対象で、48~53歳の社員が20年度中に会社を辞めれば、年金を減額しない特例を設けたが、これがミソ。
「超低金利環境の長期化を踏まえた年金制度の安定化が目的」と嘯くが、実際は「バブル入社組を自己退職に追い込む姑息な仕掛け」(みずほ銀50代行員)に他ならない。さらに、坂井みずほは「能力主義の徹底」を口実に人事・給与制度も見直し、21年7月には管理職約5千人の自動昇給を廃止する。管理職は前身の旧3行統合で苦労させられた受難の世代。にもかかわらず、坂井はお荷物として切り捨てようというわけだ。
また、坂井がかつて社長を務めたみずほ証券は、「人生100年時代」を掛け声に20年1月から50歳以上の社員を対象に規模を定めない早期退職を募集。グループを挙げたバブル入社組追い出し作戦の一環なのは明らかだ。それでも、証券マンは早期退職に伴い割増退職金が支払われる分、年金減額という真綿で首を絞めるようなやり方で追い出される銀行マンよりはマシかも知れない。銀行の早期退職募集を避けたのは「坂井が世間体を気にしたから」(周辺筋)というから呆れ果てる。
思い付きの「ノルマ廃止」
他の2メガもリストラを進めるが、一方で海外業務の拡大やリース事業強化など前向きな戦略にも注力している。翻って、みずほは旧3行系列で乱立する上場リース会社の再編構想は頓挫し、海外進出も出遅れたままだ。経営失策こそが独り負けの元凶だが、坂井がこの2年弱で打ち出したのは「フィンテックなどの看板を掲げた浮ついた施策ばかり」(元役員)。背景には、長期政権を築いた前FG社長の佐藤康博(現会長、76年旧興銀)の〝傀儡〟イメージを払拭しようと世間受けに躍起な坂井の習癖も影響しているという。
例えば、鳴り物入りで19年3月から始めたQRコードによるキャッシュレス決済サービス「Jコインペイ」。「地銀とも連携しオールジャパンで決済革命を起こす」と嘯いたが、有力地銀や加盟店が思うように集められず、会員数は19年度内の目標(184万人)の1割にも満たない10数万人。
また、坂井が「働き方改革」を御旗に19年4月に導入したみずほ銀の「ノルマ営業廃止」も、19年度上半期の投資信託収益が前年同期比で3割も落ち込む悲惨な結果を招いた。関係筋によると、坂井がノルマ営業廃止を言い出したのは「改革者のイメージを守るため、ライバルの三井住友FGに後れを取りたくなかったから」。だが、もともと行員の営業力が強く、4年がかりで準備を進めた三井住友と異なり、みずほは坂井の思い付きに過ぎなかった。
坂井が期待するLINEと合弁の「LINE Bank」(20年度中に開業予定)も、同社がZホールディングス(HD、旧ヤフー)と経営統合することで先行きが怪しくなっている。ZHD傘下にネット銀行があるためで、重複事業を整理する過程で、みずほとの合弁もどうなるか分からない。
自らの無能経営を棚に上げ、業績不振のしわ寄せを現場に押し付ける坂井。佐藤とともに自身がトップの座から一日も早く退くのが改革の第一歩である。(敬称略、肩書等は掲載当時のまま)
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繰り返しになりますが、3月2日発売の本誌4月号の「みずほ証券不祥事」については近く告知しますので、是非ともご購読のほど、よろしくお願いいたします。