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【記事無料公開】さらば!安倍晋三&アッキー「最悪政権の大罪」(中編)

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p014.jpgあらためて安倍治世の「大罪」を振り返るべく、本誌「ZAITEN」2020年8月号で展開した特集《さらば!安倍晋三――アッキーともども早く消えてくれ》の巻頭レポート〈安倍「最悪」政権7年半の大罪〉(ルポライター・古川琢也氏寄稿)の〈中編〉を〈前編〉に引き続き無料公開します。

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勇ましいのはポーズばかり―「連戦連敗」の安倍外交

 自民党が昨年夏の参議院選挙に向けて発表した「政策パンフレット」の1頁目には、「世界の真ん中で力強い日本外交」というフレーズのもと、まるで安倍が世界のリーダーでもあるかのように振る舞う写真が並んでいる。安倍の取り巻きの自民党議員たちも、「外交の安倍」なるイメージを盛んに振りまいてきた。

 そもそも安倍は、2012年の自民党総裁選と参院選で、「日本を、取り戻す」というスローガンを掲げて首相の座に返り咲いた。素直に解釈すれば、取り戻すべき「日本」とは北方領土、そして北朝鮮による拉致被害者のことになるだろう。だが、元北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)事務局長である蓮池透氏は、安倍がこれまで行ってきた拉致問題への取り組みは「ポーズだけ」で、「一言で言えばやる気がない」と批判する。

「たとえば、14年5月の『ストックホルム合意』。この合意では日本が制裁を一部解除するのと引き換えに、北朝鮮が『特別調査委員会』を設置して、拉致被害者を含む日本人行方不明者の調査等を行うと約束しました。ただこの合意自体は08年の福田康夫政権の末期にまとまりかけていたことで、言ってみれば6年前に戻っただけ。しかも安倍さんは08年当時、私たちに向かって『再調査なんて意味がない』と批判さえしていた。それをストックホルム合意が決まった時は官邸でぶら下がり会見を開き、『大きな前進をした』と自画自賛したのです」

 もっともその〝前進〟は2年も持たなかった。16年2月に北朝鮮が核実験と弾道ミサイルの発射を実施したことで日本が対北制裁再開を決定。これに対して北朝鮮側も、調査の中止と特別調査委員会の解体で応じたからだ。18年以降は韓国の文在寅や米トランプが対北外交で一定の成果を上げるのをよそに日本は「蚊帳の外」に置かれ続けた。

北方領土返還交渉も後退

 6月5日には家族会の代表を長く務めた横田滋氏の逝去が報じられた。蓮池氏は、その日の夜に安倍が開いた会見の様子をテレビで見ていたという。

「『断腸の思い』と言っていましたが、あれも散々聞いた言葉です。今さら切る腸がまだあなたにあるんですか? と言いたくなりました」

 安倍は、北方領土の返還交渉も政権の最重要課題と掲げてきた。16年5月には欧米からの経済制裁に悩むロシアに対し、エネルギー開発や医療分野などで日本が官民挙げて協力する3000億円強の経済協力案を提示。同年12月にプーチンを長門市に招いて行われた日露首脳会談では、1956年の日ソ共同宣言を土台に平和条約交渉を加速させることでプーチンと合意した。平和条約の締結後に歯舞、色丹2島を引き渡すと定めた共同宣言を根拠にまず2島の返還を確実にし、しかるのちに択捉、国後での主権行使も前進させようという狙いだった。

 だが、その結果は無残だった。19年6月22日には、プーチンがロシア国営テレビに出演し、北方領土でロシア国旗を降ろす「計画はない」と断言。今年1月24日には、昨年9月まで国家安全保障局長を務めた元外務事務次官の谷内正太郎が、民放のBS番組で、ロシアとの北方領土返還交渉は全く進展がないと認める一幕もあった。

 3000億円もの税金を差し出しながら、むしろ交渉を後退させてしまったのはなぜか。民族派団体「一水会」代表の木村三浩氏が解説する。

「北方領土返還に関してプーチン大統領が16年から一貫して言っていることは、『日露両国の間にある認識のズレについて認識してくれ』ということです。日本の外務省は『ソ連は戦後のドサクサに紛れて4島を不法占拠した』という立場ですが、ロシアからすれば第2次世界大戦の結果を受けて合法的に取得したという立場。まずその経緯を日本側が認めないことには交渉のテーブルに着かない、という姿勢を、プーチン大統領は最初から変えていないのです」

 この問題に絡んで、北海道新聞が17年12月30日に興味深い記事を掲載している。これによると、ソ連兵が1945年8月28日から9月5日にかけて択捉、国後、色丹、歯舞に攻め込み占領した作戦に、米国が艦船10隻を貸与していたことが判明。さらに作戦実行3カ月前の45年5月には、米軍がソ連兵1万2000人をアラスカ州の基地に集め、ソ連兵が艦船やレーダーに習熟するための訓練に連合国軍事として全面協力していたというのだ。大スクープと言えるこの記事を、なぜか全国紙は後追いしなかった。

「アメリカが今もロシアが4島を不法占拠しているとは言わないのは、こうした歴史的経緯、つまりアメリカとソ連の2大国が戦後秩序の枠組みの中で、ソ連による4島占領を認め、協力さえした事実があるからです。そうした歴史的事実を認識することから出発しなければ、北方領土の話し合いなんてできませんし、経済協力だ、2島先行返還だといった小手先の議論も意味をなしません。だから、プーチン大統領に『2島を引き渡した場合、そこに日米安全保障条約は適用されるのか?』と皮肉を言われて揺さぶられる。安倍首相とプーチン大統領の個人的関係で解決できるようなレベルの問題ではないのです」(木村氏)

 そのプーチンとの個人的関係にしても怪しいところがある。19年9月5日にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで、安倍はプーチンをファーストネームで呼び親密感を演出した。オバマを「バラク」、トランプを「ドナルド」と呼んだのと同じように、「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている」「ゴールまで、ウラジーミル、駆けて駆けて駆け抜けようではありませんか」と呼びかけたのだ。

 これについて、元公安調査庁の職員でロシア語にも通じる西道弘氏が言う。

「ロシア社会では他人を公の場で、ファーストネームをそのまま呼ぶのは重大なマナー違反に当たります。敬意を込めて呼ぶなら、ファーストネームに彼の父称(父親の名前に由来する呼び名)をつけて、『ヴラジーミル・ヴラジーミロヴィッチ』と呼ぶのが普通。親近感を込めたいのであればウラジーミルではなく短縮形(愛称)の『ヴォロージャ』と呼ぶべきでしょう。ただこれも本当の親友同士でないならするべきではありません。外務省のロシアスクールがその程度のことを知らないはずはありませんが、にもかかわらずあんなスピーチをしてしまったのは、安倍首相が専門家の知見を軽視し、今井尚哉首相秘書官らお気に入りの官邸官僚の言うことばかり聞いててきたことの弊害でしょう。専門家たちも、どうせ耳を貸さないのに助言しても馬鹿らしいという気分なのでは」

 安倍の自己演出に、ひたすら振り回された7年だった。(敬称略、肩書等は掲載当時のまま)

【さらば!安倍晋三&アッキー「最悪政権の大罪」(前編)】はこちら↓↓↓

http://www.zaiten.co.jp/blog/2020/09/post-21.html

【記事無料公開】さらば!安倍晋三&アッキー「最悪政権の大罪」(前編)

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8月28日の突然の辞任会見から1週間あまり。持病の悪化を理由に辞任を表明した安倍晋三首相は、「国民の皆さまの負託に自信を持って応えられる状態ではなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではない」などと神妙に語ったが、戦後最長を記録した安倍治世が国民の負託に応えてきたかといえば、はっきり「NO」と断じざるを得ない。

あらためて安倍治世の「大罪」を振り返るべく、本誌「ZAITEN」2020年8月号で展開した特集《さらば!安倍晋三――アッキーともども早く消えてくれ》の巻頭レポート〈安倍「最悪」政権7年半の大罪〉(ルポライター・古川琢也氏寄稿)の前編を無料公開します。

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2019年5月のトランプ米大統領来日時の安倍首相Twitterより

 総額260億円をかけながら、配布される頃には存在意義を失っていた「アベノマスク」をはじめ、安倍政権が新型コロナへの対応で晒した数々の失態は、この政権がもともと持っていた無能さを一般国民にも知らしめた。

 コロナ禍で苦境にある自営業者を支えるはずの「持続化給付金」にしても、総額769億円に上る事業が経産省から「サービスデザイン推進協議会」(サ推協)なる社団法人に丸投げされ、さらに「97%」という再委託率で電通が孫請けした経緯が批判を浴びている。政権は例のごとく「委託はルールに則って行われた」と開き直るが、経産省OBの飯塚盛康氏は、この契約が異常である理由を次のように説明する。

「経産省には、委託事業で再委託率が50%を超える下請けを禁じる内規が少なくとも2017年頃までありましたが、仮に丸投げはOKとしてもこの契約はおかしい。なぜならこの事業で実際に給付を行うにあたっては、梶山弘志経産大臣も国会で答弁したように電通が750億円近い費用を立て替えているからです。

 それはそうでしょう。こうした事業を国が民間委託する場合、国が費用を前渡しすることはありません。ただ、国が一次契約を結んだ相手はあくまでサ推協です。つまり国は、入札資格Cランクの、従業員が21人しかいない組織に750億円もの費用を立て替えられると思っていたのか? という話になってしまう。

 サ推協は、16年5月に電通、パソナなどが共同で設立しています。16年といえば、電通が前年12月に発生した社員の過労死問題で大バッシングされ、労基法違反容疑で家宅捜索までされた年。サ推協は電通が、自社が政府の入札から事実上締め出されることを見越した上で、公共事業をトンネルさせるために作った可能性が高いと私は見ています」

 そもそも持続化給付金がこれほど大きな騒ぎになったのも、元はと言えば、給付金の支給が遅れに遅れたことが発端だった。生活困窮者の支援を行うNPO「ほっとプラス」の理事を務めている藤田孝典氏が言う。

「持続化給付金も、10万円の一律給付にしても6月に入ってようやく支給が始まったようなものですが、新型コロナの感染が広がってからすでに4カ月近くが経っており、すでに非正規雇用者を中心に多くの失業者が生まれ、自営業者たちも事業の閉鎖に追い込まれています。安倍政権は『スピード感』という言葉を好んで使いますが、今回のような緊急事態が起きて、あらためて内実の伴わない政権という印象を持っています」

 あまりの問題の多さから、野党は「新型コロナ対策を監視する必要がある」として国会の会期延長を求めた。だが与党は応じず、6月17日の会期末で予定通りに閉会した。

 東京電力株主代表訴訟の事務局長である木村結氏は、ここに安倍政権の不実な体質が露呈しているという。

「東日本大震災(3・11)は11年1月24日に招集された通常国会の会期中に発生しましたが、当時の民主党政権は当初の会期末だった6月22日から70日間も会期を延長、さらに10月20日には臨時国会を招集し12月9日まで開催し、野党との国会論戦に応じました。翌12年も1月24日に通常国会を招集して会期を79日延長、臨時国会も開いています。トータルすると、3・11から数えて野田佳彦首相(当時)が衆院を解散するまでの614日中、77%に当たる472日は国会を開いています。少なくとも大災害時に国民に向き合おうとする姿勢に関しては、民主党政権と安倍政権はずいぶん違います」

 それでも政権側は新型コロナ感染の抑え込みには「成功した」と胸を張るが本当なのか。皮膚科医で、感染症の問題にも詳しい帝京大学名誉教授の渡辺晋一氏が言う。

「日本も含むアジアの場合、欧米よりも感染率が低いのですが、日本の場合、PCR検査の実施数そのものが少ないので感染者の数が少なく出るのは当然。新型コロナによる死者が6月16日現在で927人という数字だって本当かどうかは分かりません。実際に新型コロナで死亡した力士は政府の統計には含まれていませんでした」

 安倍政権は、WHO(世界保健機関)が感染拡大防止のため幅広く実施するよう求めるPCR検査を忌避してきた。5月2日時点での各国のPCR検査数(人口1000人あたり)を比較すると、イタリア34・88件、スペイン28・9件、米国20・59件、韓国12・31件に対し、日本はわずか1・45件。先進国中最低クラスの検査しかしていなければ、感染者数がデータ上少ないのは当然である。

 その意味で注目すべきは、欧米各国では新型コロナの流行規模を把握するための真の指標と認知されつつある「超過死亡者数」だ。東京都が6月11日に発表したデータによると、都の4月の死者数は1万107人で、過去4年間の同月の平均死者数(9052人)を12%上回っていた。東京都の、4月の新型コロナ感染による死者数は公式には104人だが、実際はその10倍近い1000人近くが新型コロナで亡くなっていた可能性がある。

「感染症対策の手順は1に感染者の発見、2に隔離、3に治療。そんなことは世界の常識です。現政権がその常識に逆らい、患者数が少ない時期にしか意味のないクラスター対策に固執したのは本当に不可解。保健所が人手不足だから十分な検査ができなかったかのように言う人もいますが、保健所に頼らずともPCR検査を請け負える民間の検査会社はたくさんありますし、たとえ民間の検査会社がだめでも、PCR検査機器のない医学・薬学系の大学院など今どきありません。検査の手技だって、1カ月ほど訓練すれば大学院の学生にもできる程度のものです」(同)

 そうまで聞けば、安倍政権が検査数を絞り込んだのは、東京五輪を来年、確実に開催するために感染者数を低く見せたかったからだ、との説が真実味を帯びてくる。

「ほとんどの医師は、常識的に考えれば来年に五輪をやるのは無理だと思っていますよ。安倍首相はワクチンが開発されるので開催できるかのように言っていますが、治験が済めば使用できる治療薬と違い、ワクチンの場合は開発されても、有効性と安全性が確認できるまでには通常数年かかるからです。仮に1年後、国が『安全なワクチンができた』と発表しても、私は恐くて打てません」(同)

 もはや実現可能性はなくなった五輪。この開催に固執する安倍がトップに居続ける限り、日本のさらなる沈没は避けようもない。

アベノミクス「嘘八百」の深すぎる傷跡

 内閣支持率の支持の内訳を見れば、「他の内閣より良さそう」という消極的な支持理由が常にトップにある安倍政権。そうした巷の人々の思い込みの背後に、「アベノミクス」なる経済政策への漠然とした信頼があることは間違いないだろう。

 安倍肝いりの人事で2013年3月に日本銀行総裁に就任した黒田東彦は、同年4月より日銀が市場に直接供給する資金(マネタリーベース)を年間60兆~70兆円のペースで増加させる「異次元の金融緩和」を開始。20年5月末にはマネタリーベース残高は史上空前の543兆円に到達した。

 円が市中に大量に出回ったことで円安が進行し、異次元緩和前に1ドル=95円程度だった円ドル相場は15年には125円台になった。これにより、輸出に依存している国内企業の収益は大きく上向いたとされている。

 さらに第2次安倍政権発足前日の12年12月25日には1万80円だった日経平均株価が、18年10月には2万4270円の高値を記録したほか、名目GDP(国内総生産)は495・0兆円(12年)から553・7兆円(19年)へと増大。19年1月には、安倍政権下での景気拡大が「いざなみ景気」(02年2月~08年2月まで)の73カ月間を超え、戦後最長となったと発表されるに至った。

 こうしたアベノミクスの〝成果〟が華々しく宣伝されるたびに、多くの国民は「アベノミクスはうまく行っているらしい」と刷り込まれてきた。だが『アベノミクスによろしく』『国家の統計破壊』(ともに集英社インターナショナル)などの著者である弁護士の明石順平氏は、これらの指標が欺瞞に満ちていると批判する。

「安倍政権下での消費低迷は本当に悲惨です。特に日本の実質GDP(名目GDPから物価の変動による影響を差し引いた数値)の6割を占める『民間最終消費支出』(国内の民間支出の合計)の実質値は、これが伸びないと経済成長できない重要な指標であるにもかかわらず14年度にはリーマンショック時(08年度)を超える下落率を記録。15、16年度も下がり戦後初めて3年連続下落しました。19年度にようやく13年度の水準を僅かに上回りましたが、要はアベノミクスが始まった13年度からの5年もの間、消費が全く伸びていなかったということです。内閣府は16年12月にGDPの算出方法を変更していますが、この時、国際的なGDP算出基準に合わせるとともに、それと全く関係ない『その他』という項目でアベノミクス以降のGDPを嵩上げしています」

 明石氏によれば、消費が伸びないのは異次元緩和による円安インフレに消費増税の影響も加わり、国民の実質賃金(物価上昇率を加味した賃金)が下がり続けているからに他ならない。にもかかわらず、大手メディアは18年8月、厚生労働省が公表した同年6月の「毎月勤労統計」速報値をもとに名目賃金が前年比3・6%も伸びたと報じたが、これは後日発覚したように、同統計の18年1月以降の数値を不正に操作して出した嵩上げ値だった。

「実質賃金の大きな下落は、〝戦後最悪の消費停滞〟を引き起こしています。春闘のアンケートの対象でもない、大多数の国民に景気回復の実感がないのは当たり前です」(同)

「成長戦略」の真実

 消費がこれほど低迷しているにもかかわらず、日経平均が2万2000円台を維持しているのは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が年金基金を日本株の購入に大量投入しているほか、日銀が上場投資信託(ETF)を通じて日本株を年間約6兆円分も購入することで買い支えているからだ。

 アベノミクスでは「第1の矢」である異次元緩和でデフレマインドを払拭し、次ぐ「第2の矢」の財政政策で需要を喚起、最後に放たれる「第3の矢=民間投資を喚起する成長戦略」こそがアベノミクスの本丸であり、持続的な経済成長を実現すると謳ってきた。

 だが、経済産業省出身で政治経済評論家の古賀茂明氏は、アベノミクスの成長戦略はどれも失敗だったと切り捨てる。

「安倍政権が13年4月に発表した成長戦略の第1弾はそのあまりの内容の無さゆえに翌日の日経平均が暴落するほどでしたが、その失敗後に政権側が鳴り物入りで推し進めたのが原発と武器の輸出。もともと倫理的に問題があるこの2つが、どこの国からも相手にされていないのは不幸中の幸いです。今のところ唯一失敗せずに残っているのはカジノですが、基本的にカジノという産業はギャンブルで負けた人がいなければ成立しない。実現したとしても、国民を不幸にこそすれ、豊かにはしません」

 新しい産業がなかなか育たない反面、かつて日本経済を支えていた製造業が急速に没落し、他国にシェアを奪われていく光景も安倍政権下では何度も見られた。

「80年代には世界市場の過半を占めた日本の半導体は今や世界シェア6%まで落ちてしまいましたし、半導体の製造に欠かせない半導体露光機(ステッパー)の分野でも、かつて世界トップだったキヤノンやニコンが最新鋭機でオランダのASMLに敗れ開発を断念しました。日本で売られているテレビの画面は今や全て韓国製。シャープは台湾企業傘下に入り他社は液晶パネル事業から撤退した一方、液晶に代わる存在である有機ELは日本ではまだほとんど作られていません」

 だが安倍政権の何にも勝る失敗は、日本が生き残るための「将来の芽」までも摘んでしまったことだと古賀氏は言う。

「この7年の間に、日本の経済的な地位が急激に低下してしまったことを多くの指標が示しています。たとえば、世界銀行が毎年発表している『ビジネス環境ランキング』。このランキングは起業のしやすさに直結するとして安倍政権も20年までに『先進国(OECD加盟国)中3位以内を目指す』と謳い上げたものですが、毎年順位は下落し、最新20年版で日本は29位。香港(2位)韓国(5位)台湾(15位)にはるか及ばず、ロシア(28位)よりも下です。

 将来を担う優秀な学生もどんどん出にくくなっています。イギリス・タイムズの教育誌『THE』の『アジア大学ランキング』2020年版(6月3日発表)では、1,2位を中国(清華大学と北京大学)が占め、ベスト20に入った校数は中国7、韓国5、香港4。日本は2校(7位東大、12位京大)でシンガポールと同じですが、ランクインした東大、京大ともに同国の大学より下という悲しい状況です。日本の大学が世界的にあまり評価されていないのは昔からでしたが、もはやアジアの中でも高いとは言えないのです」

 安倍が日本経済に残した深すぎる傷跡は、安倍本人が退陣しても容易に埋められるものではない。(敬称略、肩書等は掲載当時のまま)

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【記事無料公開】百十四銀行「情報漏洩」元行員逮捕の衝撃

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記事掲載から4カ月――。ようやくの逮捕劇だった。本誌「ZAITEN」2020年12月号(19年11月1日発売)で報じた四国・香川県最大の地銀、百十四銀行の顧客情報漏洩"事件"のことである。

逮捕された"元"若手行員たちの所業もさることながら、さらに度し難いのが、百十四銀の対応だった。

本誌掲載号の発売直前の昨年10月末に、30代元行員(当時は現役)が9月中旬に警察の事情聴取を受けていたことを"不祥事"として発表。本誌取材後の10月下旬にその行員を懲戒解雇に......。しかし、本誌記事の掲載が確定的になった後の駆け込み的な処分だったばかりか、実際は「懲戒解雇」と言えども、情報漏洩した当該行員には退職金まで支払っていたといい、およそ石もて追い出したわけではなかったのだ。

そして、ここにきての逮捕だったわけだが、現時点(20年3月5日18時現在)で百十四銀は何らの発表を行っていない。そこで今回、事件の第一報となった20年12月号記事《"行内文書"が流出していた疑いが...... 百十四銀行「行員が任意同行」隠蔽疑惑》を特別に無料公開したい。

百十四銀について本誌はこれまでたびたび報じてきましたが、同行に関する情報提供を以下の公式サイトフォームおよびメールアドレスで募集しております。なお、情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼ください。

【情報提供フォーム】
http://www.zaiten.co.jp/formmail/indict.php

【情報提供アドレス】
indictment@zaiten.co.jp


小誌ブログでは百十四銀について、過去、以下のような記事もアップしています。

・19年11月10日公開
【記事無料公開】セクハラ百十四銀行「色情と暗黒の10年」(1)

・19年10月31日公開
百十四銀行「情報漏洩で行員が警察に事情聴取」会見の姑息

114_ayata.jpg"似非創業家"三代目の頭取、綾田裕次郎

 四国・香川県最大の地銀である百十四銀行。昨春、20代の女性行員に対するセクハラ事件が起き、当時の会長、渡辺智樹が関与していたことを小誌が報じたのは、ちょうど1年前だった。取引先の地元ゼネコン最大手、合田工務店との会食の席上、同社社長の森田紘一(現在も社長在任)によるセクハラ行為を「制止できなかった」として処理されたが、渡辺自身も破廉恥行為に手を染めていた疑いは晴れていない。

 創業140周年という記念すべき年に起きた代表権者のセクハラ不祥事。渡辺は、当該記事を掲載した小誌18年12月号発売前日の昨年10月末、会長を辞任。銀行トップのセクハラ辞任は、前代未聞のスキャンダルとなった。

 渡辺はそれでも相談役に居座ったものの、小誌(19年1月号)が百十四銀の病巣の内幕を続報しコンプライアンスの欠如やガバナンスの不全を徹底追及。すると、金融当局や世論の厳しい批判に耐えきれないと判断したのか、百十四銀は渡辺相談役を今年3月末で退任させるとともに、相談役制度の廃止を決めた。これにより、渡辺の前任の元頭取、竹崎克彦も相談役から去ることになった。

 その結果、会長・相談役不在のまま、「創業家」を僭称する綾田家出身の3代目(初代=整治、2代目=修作)の綾田裕次郎が頭取として名実ともにトップに君臨するワンマン体制が現出している。

任意同行された若手行員

 それから半年――。百十四銀関係者は行内の状況をこう明かす。

「慶大卒で1982年入行の裕次郎は、若くして頭取を約束されていたボンボンですが、修作から特に帝王学を受けたわけではない。17年4月の頭取就任時、慣例を破って〝使用人〟の渡辺会長に代表権を与えた時から、両者はズブズブの関係で、同じ穴の狢。今も上を忖度する行内風土は変わっていませんし、役員室との距離で決まる人事も相変わらずです」

 組織の腐敗は続き、人心の荒廃も進んでいるというわけだ。しかも、そんな行内風土を象徴するかのような〝事件〟が今秋になって起きていたというのである。

 舞台となったのは、大阪府東大阪市にある、県外中規模支店の東大阪支店。白昼堂々、警察の捜査員が支店を訪れ、勤務中の若手行員に任意同行を求めたのは、まだ暑さが残る9月のことだった。

「突然の出来事で、現場に居合わせた行員は何が起きたのか分からず、呆気にとられていたそうです。無論、事情説明などはありませんが、あらぬ噂をSNSなどで拡散しないようにという趣旨の通達が唐突に出されました。その若手行員は現在、人事部付で本店ビルに出勤しているようで、そのうち何らかの懲戒処分が下される予定です」(別の百十四銀関係者)

 任意とはいえ、金融機関の現職行員が警察に連行されるのは、極めて異例。一体何があったのか。

「今夏に起きた、ある詐欺事件に絡んだ捜査の一環と見られています。その関連で、香川県警は高松市内に住む男ら3人を逮捕している。直接の容疑は、3容疑者のうちの1人が親類からカネを詐取した疑いですが、捜査段階で〝ある文書〟が出てきたため、若手行員が事情を聞かれたようです。もっとも、警察発表では3容疑者は否認しているようですが」

 事情通はこう解説する。

 この事件は香川県内の地元紙でさえベタ記事扱い。記事を素直に読む限り、単なる仲間内の揉め事という印象が強いのも確かだ。

元支店長「逮捕」の過去も...

 しかし、ある地元関係者は、事件の背景についてこう解説する。

「逮捕された3人のうち、主犯格の1人は、地元の一部では知られた元暴力団員。この男は10年ほど前にも、香川県内の民家に拳銃を持った男が押し入った事件に絡んで、殺人未遂や銃刀法違反などの疑いで逮捕されています」

 何やらキナ臭い話だが、さらに取材を進めると、任意同行された百十四銀の若手行員と元暴力団員とを結びつける新たな事実が浮かび上がってきた。

「実は、この事件に極めて近い関係者の息子が百十四銀の元行員だったのです。現在は辞めていますが、任意同行された若手行員とは同期入行組で、2人とも東大阪支店の勤務経験があり、仲が良かった。〝ある文書〟がその関係者周辺から出てきたとすれば、警察が詐欺事件の捜査に絡んで百十四銀の現職行員に事情を聞いたのは、その息子との接点を疑ったからではないか」(別の関係者)

 即ち、「ある文書」とは百十四銀の顧客・取引先名簿である疑いが濃厚だというのだ。

「仮に、百十四銀の顧客名簿を現職行員が外部に持ち出し、その個人情報が漏洩しただけでも一大不祥事ですが、それで終わる話ではない。元暴力団員の手に渡り、裏社会に流出して、振り込め詐欺などの特殊詐欺に使われた可能性を考えると、ゾッとします」(同)

 反社会的勢力と言えば、百十四銀は09年に大阪・九条支店で起きた元組員への不正融資事件で、元支店長ら2人が逮捕され、有罪判決を受けた過去がある。この事件で業務改善命令を受け、再発防止を誓ったはずだった。今回と性格は異なるものの、10年経って再び反社会的勢力との関係を疑われるようでは、事件の教訓は何も活かされていなかったと言わざるを得ない。

 では、百十四銀はどう答えるのか。これまで小誌取材を頑なに拒否し続けてきた百十四銀広報。当の東大阪支店長を直撃すると、当初は10月に赴任してきたばかりとして、行員の任意同行は「把握していない」と答えていたものの、追及に一転、「お答えしかねる」と事実関係を否定しなかった。

 疑似創業家の威光を背に、今や「現役幹部はもちろん、初代・2代目に恩顧のあるOBたちも、渡辺頭取時代とは違い、裕次郎頭取には全く物申せない状況」(有力OB)。実際、綾田との距離を頼みに、パワハラをしてもお咎めなしで主要店舗の支店長などに出世する輩が跋扈し、まるで「3代目が支配する北朝鮮さながら」(同)の有り様という。一方で若手・中堅の退職は相次ぎ、金融当局も綾田家支配に苦り切っている。  もはや自浄作用は望むべくもない百十四銀。正常化には〝外圧〟しかないようである。(敬称略、肩書等は掲載当時のまま

これまでも報じてきた通り、もはや"不祥事"発覚が年中行事となった感のある百十四銀。しかし、トップや行員の素行のみならず、不祥事案を隠蔽、さらには上層部との"距離"によって処分の軽重を差配する、そのガバナンス危機にこそ、問題の所在があると言える。

なぜ逮捕された元行員に退職金を支払ったのか――。本来であれば、本誌のような東京所在の媒体ではなく、地域に密着した地元メディアこそ、追及の狼煙を上げるべきだが、どうやら香川ではそのような自浄作用は望めないようだ。腐敗する傲慢地銀に、切り込めないメディア......香川県民に自らが"蚊帳の外"であるという自覚はあるのだろうか。

【緊急・記事無料公開】レオパレス「オーナー」を襲う悪魔のシナリオ

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 2月7日、2020年3月期第3四半期決算で241億円の最終損失を発表したレオパレス21。この日、同社の宮尾文也社長は日本経済新聞のインタビューなどに応じ、村上世彰氏が事実上率いる大株主の投資会社、レノの株主提案などに対し「短期的な色彩が強い」などと、今さらながら、対決の姿勢を鮮明にした。

 しかし、村上ファンドなどの動きは置くとしても、現在の惨状を招いたのはレオパレスの現在を含む経営陣に他らない。今月2月27日に臨時株主総会が開催される運びだが、議決権行使を巡っては今週が山場となる。

 そこで本誌では、現在発売中の「ZAITEN」2020年3月号(2月1日発売)《レオパレス「オーナー」を襲う悪魔のシナリオ》記事を急遽、無料公開したい。なお、本レポートについては、校了期間から2月1日までの発売期間の間に情勢が変化している内容があるが、「本誌ガバナンス問題取材班」の原文を尊重し、そのままで掲載する。その点、予めご了承ください。ちなみに、副題は《前門に村上ファンド、後門には電通出身役員や共同ピーアールの"獅子身中の虫"》というものである。今もなお、彼ら"獅子身中の虫"は現役員としてのさばっている。

 また、本レポートの掲載を受けて、本誌編集部には関係各所からレオパレスの内情についての情報提供ももたらされています。些細な情報とお感じのことでも結構ですので、以下の公式サイト情報提供フォームおよび編集部メールアドレスなどで情報をお寄せください。情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼頂ければ幸甚です。

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深山英世前社長(右)と宮尾文也社長(2019年5月、社長交代発表会見にて)

 村上世彰とレオパレス21の対立がついに表面化した。レオパレスは昨年12月、同社株14%を保有する村上率いるレノ等から、取締役全員の解任と村上が推す役員選任を議題とする臨時株主総会の招集請求を受けていた。1月17日、レオパレスは臨総招集が「株主の権利濫用」として反対を表明、昨年4月頃から、村上側から「当社の解体や減資を示唆する発言があった」と明かした。一方、村上側は同日、レノのホームページで、賃貸事業などの主力事業を譲渡するといった独自の再建策を公表し、株主に賛同を求めた。

 レオパレス問題の発端は、2018年5月にテレビ東京『ガイアの夜明け』がアパートオーナーの協力を受け、一部物件に界壁がないことなどを報じたことだ。村上は、レオパレスがさらなる施工不備を公表し、19年3月期の予想を最大400億円の赤字に下方修正した昨年2月頃、暴落後の200円台で株式を買い集めていた。

 レノが明らかにしたレオパレスとの交渉経過によると、村上らは昨年4月から当時社長だった深山英世と面談。深山とはウマが合ったようだが、同年5月に後任社長に就任した宮尾文也とは決裂したようだ。いずれにせよ、レオパレスは今、空前の経営危機にある。

資本市場を騙した過去

 レオパレスの賃貸事業のアパート入居率は昨年10月から3カ月連続で80%を割り込み、賃料収入がオーナーに支払うサブリース料金を下回る状態が続く。レオパレスは改修が必要な物件の入居者を別の管理物件に斡旋しているが、転居がスムーズに進んでいるとは考えられず、この入居率も信頼の置ける数字とは言えないだろう。

 物件の改修も遅々として進んでいない。約3万9千棟ある全棟調査は昨年10月末時点でほぼ終了したが、12月時点で改修が終わったのはわずか924棟。なお、昨年5月末時点の改修物件は826棟だから、進捗はあまりに遅い。

 そして関係者の懸念が集中するのが、資金繰りだ。レオパレスのバランスシートには19年9月末で688億円の現金が計上されている。同年4~9月の営業キャッシュフローは250億円の赤字。10月にはホテルと賃貸物件を合計305億円で売却したが、運転資金はいつまで持つか。

 レオパレスの希望的観測を信じる金融関係者は少ない。

 例えば施工不備問題が報じられた18年5月、同社は1棟当たりの補修費用を60万円と見積もり、19年3月期の利益予想を115億円としていた。しかし18年10月、一転して70億円の赤字に予想を下方修正。そして前述の通り、翌19年2月には赤字幅を拡大した。20年3月期も最終利益を1億円としていたが、昨年11月に273億円の赤字と予想を修正。いかにレオパレス経営陣の見積もりや認識が甘いかが分かる。

 ところで、レオパレスは過去に資本市場を騙した〝前科〟がある。12年12月26日付で、社内部署の家賃改定事務局が「××氏訴訟案件現状及び今後の方向性に関するレポート」と題する文書を作成していた。これは兵庫県の物件オーナー××が、サブリース契約解除の無効を申し立てた訴訟で、界壁の不備を争点化させたことへの対応を報告したものだ。その中で、和解金として「建築修繕費見合い1050万円」を提示することを検討していたのである。

 この時点で、当時社長の深山以下レオパレス経営陣は、自社の物件に施工不備があり、補修費が1棟当たり1千万円するという認識を持っていたことの〝傍証〟と言える。しかし、その件は明らかにされず、13年11月、SMBC日興証券を主幹事とする公募増資で300億円超を調達したのだ。

今も巣食う〝問題人物〟たち

 深山は昨年の社長・取締役退任後も、顧問として事実上の院政を敷いていると見られる。昨年7月に『週刊文春』でパワーハラスメントを告発された広報部長も深山の子飼いだったように、幹部にも深山の息のかかった者が多い。

 そればかりではない。レオパレス役員にも〝問題人物〟が存在する。昨年6月に社外取締役に就任した古賀尚文はその一人だ。現在の肩書は共同ピーアール(PR)会長だが、社団法人共同通信社の営利子会社「株式会社共同通信社」の社長を務めた元新聞記者。社会部長などを歴任し、その経験から共同通信の渉外業務を担って社内外で睨みを利かせたものの、結局は社団のトップになれなかった。

 結果、共同通信時代のコネで求めた再就職先が共同PR(共同通信社とは無関係)だった。そして同社こそ、一連の不祥事発覚時にレオパレスの広報業務を受注していたPR会社で、失策の〝戦犯〟と言えるが、その会長を新たに役員に迎え入れているのである。

 ちなみに、現在は利益相反の問題から、レオパレスは共同PRとの契約を解除したようだが、同じく社外取締役を務める元国税庁次長の村上喜堂(72年旧大蔵省入省)も、古賀の〝引き〟という。

 さらに、本誌19年3月号で報じた電通の営業担当出身の広報担当執行役員、福島範仁も共同通信時代から古賀と昵懇の間柄。「福島兼馬」と改名してもなお同職に居座るところを見ると、レオパレスを〝終の棲家〟にしたようだ。

 村上側の全取締役解任要求も頷けるが、村上こそがレオパレスの救世主となるのか―。話はそう単純ではなさそうだ。村上の基本戦略は自己株式の取得や配当などの株主還元策の要求である。レオパレス経営陣によれば、村上は同社に対し「減資」を示唆したようだが、利益剰余金がマイナスであるから、これを減資して、配当や自社株買いができるようにしようという目論見の可能性が高い。

 村上系が経営権を握ったら真っ先に手を付けると思われるのが、「終了プロジェクト」だろう。レオパレスの賃貸事業は09年頃の不況により、10年および11年3月期が原価割れする逆ザヤ状態に陥ったが、同じ頃、サブリース契約解除をオーナーに談じ込む終了プロジェクトを断行し、12年3月期に再び原価率を黒字化させた。村上としては、収益性の悪い物件は同契約を解除し、良い物件は売却して配当原資を確保する考えと思われる。これで損をするのは、サブリースオーナーである。

 レオパレス問題の深層は、バブル崩壊で経営危機にあった頃、「30年間一括借り上げ」を餌に安い建材の杜撰な物件を地方の土地持ちに買わせたことだ。矛盾はここから始まり、2度目の危機でオーナーを終了プロジェクトで裏切ったことで、屋根裏界壁の不備というパンドラの箱が開いてしまった。ところが、株価の暴落に目を付けた村上に会社は解体され、オーナーも泣く悪魔的シナリオが現実味を帯びてきた。
(敬称略、肩書等は掲載当時のまま)

 誰が「割り」を喰うのか――。オーナーたちは自覚すべきである。

【記事無料公開】三菱UFJ「平野会長・三毛頭取」の東大粛清支配

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 本誌「ZAITEN」2020年1月号(19年12月1日発売)から3月号にわたって報じてきた三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のガバナンス危機問題。MUFGの平野信行会長と、その"子飼い"で三菱UFJ銀行(MUBK)頭取の三毛兼承MUFG社長(4月から副会長、頭取は続投)が結託、旧三菱銀行時代から保守本流を占めてきた「東京大卒・企画部門出身者」を次々と排除し、平野・三毛両氏ら"非主流派"による恐怖支配が強まっているMUFGの異様な内部状況をお伝えしてきた。

 そして、ここにきて年明け早々の20年1月17日、MUFGは亀沢宏規副社長の社長昇格を正式発表した(4月1日付就任)。各メディアは、亀沢氏の東大理学系修士課程修了(数学専攻)の経歴をして「メガバンク初の理系トップ」「デジタル化の切り札」などと持て囃しているものの、その抜擢人事はそんな戦略や美談に満ちたものではない――。その舞台裏については、現在発売中の3月号(2月1日発売)の《三菱UFJ「亀沢社長誕生」に平野-三毛の謀略》レポートで詳報しているが、亀沢新社長誕生の背景には、MUFG社内を壟断する平野-三毛コンビによる"権力死守"を目的とした悪だくみが巡らされている。

 権力欲に憑かれたトップが招来した、わが国トップバンクの知られざるガバナンス危機――。即ち、そんな無道の経営は金融界のモラルハザード(倫理崩壊)を強めこそすれ、弱めることがないのは確かである。そこで本誌では、MUFGにおける異常事態を解析する一助として頂くべく、急遽、20年1月号の特集記事《三菱UFJ「東大出身」粛清支配》を以下に無料公開する。

 なお、現在、MUFG内部ではモラルハザードは言うに及ばず、不条理な降格人事などが横行しているとの情報が本誌に多く寄せられています。つきましては、MUFGについて、些細な情報とお感じのことでも結構ですので、以下の公式サイト情報提供フォームおよび編集部メールアドレスなどで情報をお寄せください。情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼頂ければ幸甚です。

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 権力が長く続けば続くほど組織は倦む。権力者の周りに強固な取り巻きがつくられ、自分の地位を脅かしたり、異論を呈したりする者を徹底的に排除する"負の自己増殖"が止まらなくなるからだ。永田町では首相在職日数が歴代最長となった安倍晋三政権でそんな弊害が顕著だが、丸の内に本拠を置くメガバンクグループ首位の三菱東京フィナンシャル・グループ(MUFG)でも院政を敷く会長の平野信行(1974年旧三菱銀行入行、京都大学法学部卒)と、その傀儡でMUFG社長兼三菱UFJ銀行(MUBK)頭取の三毛兼承(79年同、慶応義塾大学経済学部卒)による歪な「一強支配」の矛盾が噴出している。

 平野は「非東京大学卒」「国際畑」という旧三菱銀の伝統からすれば"傍流"ながら、2012年4月にMUBK頭取に就任。グループ総帥のMUFG社長を経て、19年4月には形式上、三毛にその座を引き継ぎ会長に退いたが、依然、グループに対する専制支配を続けている。平野も首相の安倍と同じく「『オレがトップでなかったら、今頃、MUFGは大変なことになっていた』と考えている」(中堅幹部)という唯我独尊の人物だ。国際畑の手下で、自分より格下の私大卒の"二線級トップ"である三毛を走狗にして、旧三菱銀の主流を占めて来た「東大卒」の実力役員を中核のMUBKからグループ会社に追い出し、巧みに権力基盤を盤石なものにしてきた。

「東大嫌い」で共鳴する平野―三毛コンビは、最近では次期MUBK頭取ポストについても、MUFG副社長兼MUBK副頭取の亀沢宏規(86年同、東大大学院理学系修士課程修了)を充てる既定路線を覆す人事を画策しているとされる。「『トップの椅子を旧三菱銀主流の東大卒に戻せば、自分たちの経営への影響力が失われてしまう』と懸念しているため」(有力OB)というが、権力欲と猜疑心に憑かれた平野や三毛の「アンチ東大支配」に内部は憔悴。小誌編集部に遠く海外からも内部告発の封書が寄せられるなど、陰惨たる状況が現出している。

全銀協会長就任に歓喜
三毛は"自己宣伝"に邁進

「景気見通しが不透明で、下振れリスクに留意が必要」「19年度末にかけて厳しい経営環境が続く」

 11月13日に発表されたMUFGの19年7~9月期決算は連結純利益が前年同期比35%減となり、記者会見した社長の三毛はこう先行きの業績リスクを強調した。

 だが、グループ内では「三毛は本気で経営への危機感を持っているのか」との疑心暗鬼の声が渦巻く。人口減少や日銀のマイナス金利政策の長期化を背景に、市場では地銀の経営危機がクローズアップされているが、国内銀行業務の惨状は3メガバンクも同様だ。MUBKも預貸金利ザヤが縮小の一途で、収益悪化に歯止めが掛からない。さらに近年は、これまで稼ぎ頭となって来た海外部門の収益にも急ブレーキが掛かっている。

 米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ政策への転換などの影響で、MUFGの米銀行子会社では今後、主力の住宅ローンの収益が悪化するのが確実な状況だ。さらに、国内銀行業務の落ち込みをカバーしようと、資金運用部隊がハイリターンを求めて兆円単位で積み上げた欧米のローン担保証券(CLO)は、海外景気が悪化すれば、巨額損失を生み出すリスクを抱える。CLOの裏付け資産である低格付け向けローンが焦げ付くためで、「時限爆弾を抱えているようなもの」(市場関係者)。

 加えて、足元では政府の消費増税対策の後押しを受けたスマートフォンによるキャッシュレス決済が急速に普及。ヤフーやLINE、楽天といった大手IT勢に基幹の決済業務を侵食される中、MUBKも支店・人員の余剰感が一層高まり、今後、一段のリストラ強化が迫られかねない情勢だ。

 MUBK頭取を兼務する三毛はさぞ頭を悩ませているものと思いきや、周辺筋によると、本人は20年4月からの全国銀行協会(全銀協)会長就任に向けた準備に大忙し。本来の使命である国内銀行業務のテコ入れや、海外戦略の修正などは「そっちのけ」(周辺筋)で、マスコミのインタビューやシンポジウムへの参加など、自己PRに余念がない様子だという。

 もともと頭取候補の下馬評にすら挙がっていなかった三毛は、平野に引き上げられて17年6月に頭取の座を手にしたが、常に"二線級トップ"のイメージがついて回って来た。就任後も行内での自らの存在感が薄いことをしきりに気にかける三毛は、社内報にポーズ写真付きで頻繁に登場したり、支店に自らの名前を大書したポスターを掲出させたり、現場視察風景を大げさにアピールする「頭取フォトダイアリー」を社内ネットにアップしたりと、あの手この手で自己宣伝に勤しんで来た。

 それだけに「銀行界の顔」とされる全銀協会長への初登板には大張り切りといい、自らの情宣活動に拍車が掛かっているようだ。MUFGの業績不振が鮮明化しているにもかかわらず、三毛は周囲に「銀行界を代表して政府のマクロ経済政策にも積極的に注文していきたい」と語るなど、ご満悦の体という。ただ、市場やデジタル分野での経験に乏しい三毛の全銀協会長就任を巡って、周辺は「想定問答の作成などに相当な負荷が掛かるのは必至」とこぼす。

「フィンテックの急速な台頭で銀行界は生き残りを賭けた激変期に突入した」(金融庁幹部)というのに、三毛がお気楽でいられるのはアンチ東大卒支配を共有するMUFG会長の平野の威令がグループの隅々にまで行き渡っているからだろう。「平野の操り人形」と後ろ指を差されようと、三毛はこの枠組みが続く限り"御身安泰"と高を括っているに違いない。

平野を苛み続けた「田中正明」への敵愾心

 実際、京大卒で通算11年も海外に駐在した「非主流派」の平野は12年に永易克典(70年旧三菱銀入行、東大法学部卒)の後を襲ってMUBK頭取の座に就いて以降、東大出身の主流派の実力役員・幹部の掃討作戦を執拗に展開し、現在の一強支配体制を築き上げて来た。最初に手を付けたのが、MUFGトップの座を最後まで争った最大のライバル、田中正明(元MUFG副社長、77年同、東大法学部卒)に連なる東大卒一派の壊滅だ。象徴的だったのが、開成高校―東大法学部卒で旧三菱銀では企画部門など中枢を歩んでいた田中派の中核、石塚勝彦(84年同)の"憤死事件"だろう。

 当時、頭取だった平野は前任の永易に倣って国内銀行業務運営の主導権を園潔(現MUBK会長、76年旧三和銀行入行)ら旧UFJ勢に委ねて味方に取り込んでいた。一方で常務執行役員企画部長だった石塚には、歴史的な超低金利を背景に収益が悪化する国内銀行業務の再建を厳命。国内業務を「最後の牙城」とする園ら旧三和銀勢が石塚に猛反発したのは当然で、改革はあえなく頓挫した。

 その責任を独り問われた石塚は決済システムなどを担当する傍流役員に飛ばされ、失意に打ちひしがれたという。残酷なのは、「企画部長時代の最終盤は夢遊病者のように本店の廊下を彷徨していた」というほど石塚が精神的に疲弊していたにもかかわらず、頭取の平野は「旧三和銀勢の抵抗を抑えるなど、自分は一切の汗をかくことなく『収益が上がるようにしろ』と命じるだけで、石塚を見殺しにした」(田中派の元MUFG幹部)ことだろう。

 石塚への酷い仕打ちはそれだけにとどまらなかった。平野がMUFG社長専任となり、後継頭取に"旧三菱銀のプリンス"小山田隆(79年入行、東大経済学部卒)が就いた16年春の人事では、傍目にも生気を失っていた石塚を「過去の功績に見合わないポスト」(有力OB)の三菱マテリアル監査役に追放。先行きに絶望した石塚は16年12月、自ら命を絶った。

 平野はこの16年の人事で、MUFG副社長を退き上級顧問に就いた田中本人も辞任に追いやり、田中派一掃を完成させている。関係筋によると、平野は歴代頭取ら有力OBの一部の間で当時囁かれていた「平野が期待外れなら、田中をFG社長の後釜にワンポイントで据えて、その後を小山田が襲えばいい」とするクーデター構想が万が一にも実現することを恐れていたという。調査・企画畑ながら英語と独語が堪能で、提携先の米モルガン・スタンレー社外取締役も務めるなど、国際派の顔も持つ田中の存在は平野にとって最後まで脅威だったようだ。

半年前から後継人事を画策
"プリンス小山田"の自壊

 そして17年5月には、小山田が就任わずか1年で「健康問題」を理由に頭取を突如辞任した。この背景にも、東大卒の主流派潰しを図った平野の影響が指摘される。MUFG社長だった平野は、ガバナンス改革と称して「相談役・顧問制度廃止」や、当時は「三菱東京UFJ銀行」としていた行名変更を大々的にぶち上げた。

 MUFGでは長年、旧三菱銀出身の歴代頭取らが経営に対して隠然たる影響力を持ち、トップも含む現役役員が定期的に経営状況を報告するのが習わしだった。岸暁(53年入行、東大経済学部卒、19年11月死去)、三木繁光(58年同、同法学部卒)、畔柳信雄(65年同、同経済学部卒)、永易と東大出身の歴代頭取OBが経営に容喙することに「非東大のアウトサイダー」である平野は我慢ならなかったようだ。このため、各行にガバナンス強化を迫っていた金融庁の尻馬に乗り、一気に相談役・顧問制度の廃止に動いた。

 行名変更でも平野は当初、「三菱」という文字を消して「MUFG銀行」にする腹積もりだったとされる。「スリーダイヤ」の名を捨ててまで東大出身者が幅を利かせて来た伝統を消し去り、平野MUFGをアピールしようとしたのか。結局、三菱の名は外せなかったが、平野の「東大憎し」の執念は恐るべしと言える。

 もちろん平野改革は、畔柳ら長老たちから猛反発を食らった。だが、ここでも狡猾な平野は重鎮たちを説得する役目を小山田にもっぱら押し付けた。生真面目な小山田は取引先との商談、全銀協会長(当時)としての業界活動、記者会見なども完璧にこなそうとし、「睡眠時間が3時間という日もザラだった」(周辺筋)という。小山田にとって最も酷だったのは、若手時代から三菱銀のプリンスとして可愛がってもらった歴代頭取に対して、相談役・顧問を辞めるように引導を渡すことだった。

 FG社長の後継指名というニンジンをぶら下げられて、改革の実行を厳しく迫る平野と、「恩知らず」などと叱責する歴代頭取たちとの間で板挟みとなった小山田はとうとう心身症を来たし、頭取辞任に追い込まれた。小山田の突然の辞任にMUFG内に動揺が広がった中、独り平野だけが淡々とした様子は傍目からも不思議な光景だった。平野は頭取交代を発表した17年5月の記者会見で「2月に(小山田から)体調が万全でなく頭取の職責を果たせないとの相談を受け、その時から交代を考えていた」と事も無げに言い放ったからだが、これとて真実ではない。「自壊していく小山田を横目に、辞任半年以上も前から後継頭取の人選を進め、極秘面談も重ねていた」(周辺筋)というのである。

 MUFGには当時、ポスト小山田の最有力候補として、主流派のホープで銀行専務執行役を務めた柳井隆博(82年同、東大法学部卒)がいた。しかし、東大嫌いの平野は、一旦は三菱UFJモルガン・スタンレー(MUモルスタ)証券副社長に内定していた子飼いの三毛を急遽呼び戻し、後継頭取に就ける奇手を繰り出し「傀儡政権」をまんまとでっち上げた。

 そればかりか、執念深い平野は東大出身者掃討作戦を続行して、柳井を三菱UFJリース社長に放逐。さらに18年春の人事では、田中に連なる主流派の一角、銀行頭取の荒木三郎(81年同、東大法学部卒)をMUモルスタ証券社長に追い出した。銀行の企画や人事部門しか知らない荒木は証券ビジネスの門外漢。このため、MUモルスタ証券のディール獲得はもっぱら提携相手のモルスタチームに依存する歪な状況となっている。

 証券分野は長年、MUFGのアキレス腱とされ、主流派の間では一時、実力者の田中をMUモルスタ証券トップに据えて抜本的なテコ入れを図るアイデアも構想されたほど。しかし平野が自らの一強支配を損ねかねない、そんな案を認めるはずもなく、逆に田中派に連なる荒木を追いやる器に証券を使ったわけだ。「証券を逆に弱体化するようなもの」(有力OB)だったが、反目分子の一掃が最優先事項の平野からすれば、それでもよかったのだろう。これら一連の人事で東大卒の主流派で経営中枢に残るのは、MUBK副頭取執行役員の籔田健二(83年同)くらい。MUFG内では「籔田も20年春の人事ではグループ会社に飛ばされる」との観測がしきりだ。

「理事」から東大卒を排除
三毛は"慶応閥"を培養

「傀儡トップ」でありながら三毛もそんな平野の顰に倣ったのか、最近は幹部人事で露骨な東大卒外しを進める一方、同窓の慶応大出身者を重用する派閥培養に血道を上げているという。結果、18・19年人事では、行員の最上級資格で役員登用の登竜門となる「理事」職の新任者合計約50名のうち「東大卒がゼロ」という、前代未聞の異常事態が起きている。理事就任が年収でも大きな格差を生み出すこともあって、平野―三毛コンビによる理不尽な粛清・情実人事の嵐に人心の荒廃が止まらない有り様だ。

 実際、三毛は「三毛三田会」とでも言うべき慶大卒の取り巻き集団を形成、MUBK専務執行役員の谷口宗哉(85年同)はじめ、常務執行役員の亀田浩樹(88年同)、18年に日本人女性2人目となる執行役員に就いた元広報部長の南里彩子(92年同)などが名を連ねるという。さらに、その後輩連も軒並み第一選抜で理事に引き上げられ要路に配置。中には非公然組織である三毛三田会の威光を吹聴する者、パワハラ紛いの言動を繰り返す者なども出現し、「我が世の春」を謳歌する増長ぶりだ。

 MUFGでは旧三菱銀時代から長らく「人事畑」「調査・企画畑」「営業畑」が経営の主導権を握って、この3派からでないと理事に昇格できない人事が続き、その上で「東大法学部・経済学部」出身者が頭取を占めるヒエラルキーが形成されて来た。平野は調査・企画系ながら、その"亜流"とされる「海外企画畑」に属していたことから「10年以上も海外駐在を強いられた」という怨念を膨らませて来たことに加え、「京大出身者特有の"アンチ東大"感情に凝り固まっている」(有力OB)。

 結果、グループ内部は「非東大卒」による下剋上の様相さえ呈しているが、そんな状況では、収益反転に不可欠な組織の一体感など醸成されるはずもない。MUFG内では「みずほは母体3行役員の不毛な権力闘争で脱落したが、うちはトップの"東大コンプレックス"が大凋落のきっかけになるかも知れない」(中堅幹部)と危ぶむ声が漏れている。

 最も深刻なのは、平野の後釜を襲って"絶対支配者"になることを夢想する三毛が、次期頭取に自らの息が掛かった慶応閥の人物を据えようと画策していることだろう。次期頭取を巡っては、メガバンクでは異例の理系大学院卒の経歴を持つMUFG副社長兼MUBK副頭取の亀沢宏規(86年旧三菱銀入行)の昇格が有力視されて来た。亀沢は仮想通貨の基幹であるブロックチェーン(分散台帳技術)など、フィンテックに精通している上、MUFG米州副担当やMUBKニューヨーク支店長など海外駐在経験もこなし、「平野の覚えが目出度い」というのが定評だった。MUFGが19年春に副社長ポストを3年ぶりに復活させ、亀沢を就けたこともあり、金融界では「理系初のメガバンク頭取誕生が間近」とも取り沙汰されている。

"東大理系"の頭取候補に「慶大卒差し替え」の画策

 しかし、平野によるアンチ東大支配の下で増長する三毛は、「部下からの進講で舟を漕ぐこともしばしば」(周辺筋)というほどフィンテックに疎いことも相俟ってか、「亀沢が後継頭取になれば、自らのプレゼンスが失われかねない」と憂慮。次期頭取候補の"差し替え"に動いているという。意中の人物は、三毛三田会の中核メンバーでもあるMUBK常務執行役員の林尚見(87年同、慶大経済学部卒)。三毛の引きで18年春から経営戦略を統括するCSO(チーフ・ストラテジック・オフィサー)の要職に就いている。慶応のアメフト出身で三毛の行内宣伝活動も管掌する林は最近、「ポスト三毛」を意識してか、メディアにも積極的に登場。「フィンテック時代の銀行の生き残り策」などについてのご高説も開陳している。

 CSOの林が「銀行の生き残り」を謳うなら、他の2メガバンクに比べてコストが格段に高い営業部門改革などに取り組むのが先決のはずだ。しかし林は、今や旧三和銀勢の既得権益と化した営業部門に切り込む気配すらまったく見せない。「寝た子を起こす」ようなことをすれば、自分も三毛も損するだけと考えているためだろうが、同じ国内銀行業務の問題で東大卒の石塚を憤死に追い込んだ平野も「林のサボタージュを黙認している」(中堅幹部)という。

 それどころか、平野は最近では寵愛してきた亀沢を切って「三毛が推す林を次期頭取にする構想を受け入れる姿勢に傾いている」(有力OB)との説もある。理系とは言え、亀沢が東大出身であることが癪に障るのか。それとも、亀沢がOBも含め内外で期待を一身に集めていることに猜疑心が刺激されるのか。真相は藪の中だが、三毛を頭取に引き上げた時と同様、平野人事の最大の重点基準が「自分にとって御しやすいかどうか」にあることを考えれば、納得の行く"変心"なのかも知れない。

 MUFG内では「銀行界でもフィンテックを本当に理解する稀有な人材の亀沢を次期トップにしなければ、うちは金融のデジタル革命に乗り遅れ、将来に大きな禍根を残す」と懸念する声が出始めている。しかし、アンチ東大支配を固定化して、自らの権勢強化を図ることにしか目がない平野や三毛には、こんな悲鳴は届かないようだ。権力に憑かれた平野―三毛コンビによる倒錯した専制支配は、まさに「魚は頭から腐る」という格言を体現している。

(敬称略、肩書等は掲載当時のまま)

 なお、亀沢氏のMUFG社長昇格で、本誌1月号レポートの内容は否定されているように見えますが、然に非ず。繰り返しになりますが、現在発売中の「ZAITEN」3月号(2月1日発売)で亀沢社長誕生の恐るべき"舞台裏"を詳報していますので、最新号を是非ともご購読のほど、よろしくお願いいたします。

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【販売部電話】
03-3294-5651

テレビ朝日「報道ステーション」スタッフ一斉追放の深層

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 小誌「ZAITEN」で再三にわたり指摘してきたテレビ朝日のガバナンス不全と、看板番組「報道ステーション」におけるモラルハザードの実態......。今年2019年は、番組の最高責任者たるチーフプロデューサー(CP)が鬼畜の如き"セクハラ事件"まで引き起こし、視聴者はもちろん、スポンサー筋からの不信も頂点に達した。そんな中、報ステを巡って、また新たな動きがあったという。

 一部週刊誌等で報じられている通り、報ステスタッフの「全面リニューアル」問題である。

 そこで小誌では急遽、同問題についてのウェブ限定記事を公開する。寄稿は、これまでのテレ朝追及記事を手掛けてきたジャーナリスト・濱田博和氏である。

 なお、下記URLの通り、小誌ブログではテレ朝関連記事を無料公開しています。こちらもぜひともご覧ください。

・【9月4日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(1)

・【9月5日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)

・【9月7日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(3)

・【9月10日公開】
テレビ朝日「報ステ」セクハラに沈黙する早河会長

・【9月12日公開】
テレビ朝日・政治記者の知られざる実像

・【9月30日公開】
テレビ朝日・報道ステーション「参院選報道お蔵入り」の深層

・【11月1日公開】
テレビ朝日「やらせ会見」と「報ステ"セクハラCP"処分」経営責任の平仄

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 権力のチェックに努める看板報道番組『ニュースステーション』『報道ステーション』を抱えて、巷間は「物申す民放局」と目されてきたテレビ朝日。だが2012年末の安倍晋三自民党政権の発足以降、同政権との軋轢を極度に忌避する会長兼CEO(最高経営責任者)、早河洋(75)の意向に受けて、その報道姿勢はここ数年で「安倍ベッタリ」に様変わりした。

 その早河から報ステのチーフプロデューサー(CP)に抜擢された桐永洋が、番組の女性スタッフらに度重なるセクハラ行為を働き、着任からわずか1年あまりの19年8月末に更迭された経緯は、小誌11月号で詳細に伝えた。だが、その桐永に対する処分はわずか3日の謹慎とBS朝日への異動に過ぎず、セクハラに対する早河ら経営陣の問題意識の甘さを浮き彫りにした。大手報道機関の中でも、これほど無定見でお粗末極まりない組織は他に類を見ないだろう。

 そのテレ朝報道局がまたもや、報道機関にあるまじき醜態を晒した。12月10日放送の報ステは、政治問題化した安倍主催の「桜を見る会」に関するニュースを取り上げる際、この日行われた自民党参院幹事長の世耕弘成の定例記者会見での発言をVTR中で使用。ところがそのVTRに対して、世耕自身から「印象操作とはこのこと」「切り取りは酷い」などとツイッターで繰り返し非難され、狼狽したテレ朝報道局は翌11日夕方、報道局長が世耕を訪ねて「誤解を招く表現」があったと直接謝罪した。さらに同日夜の報ステでも、アナウンサーの富川悠太が世耕と視聴者にお詫びする事態となった。

 世耕の批判には明らかに"言いがかり"としか思えない部分があり、テレ朝側には反論の余地が十分ある。だが「事なかれ主義」を旨とする報道担当常務の篠塚浩(57)が率いるテレ朝報道局は謝罪に終始し、世耕の"かまし"にいとも容易く屈服した。政権側のブラフに反論もせずに屈して、恭順の意を示すなど、報道機関にとって自殺行為以外の何物でもない。

 さらにテレ朝報道局はこのあと、報ステの人心一新を理由に意味不明の"暴挙"に出る。日々のニュース報道に携わる「ニュース班」所属の派遣契約ディレクター約40人のうち、在籍10年以上のベテラン約10人に対して、来年3月末での契約打ち切りを一方的に通告。社員に関しても来年1月1日付で、桐永の後任として9月から報ステCPを務める鈴木大介を降板させ、政治ニュースのデスクの梶川幸司も経済部に異動させるなど、現場の実態を無視したデタラメな人事異動を敢えて行うというのだ。

世耕の批判は単なる屁理屈

 それではまず、世耕から「印象操作」「切り取りは酷い」と批判されたVTRを検証してみよう。関連部分は画面右肩に「幕引き?与党内から早くも...『桜を見る会』で2つの閣議決定」とのテロップが出され、映像は以下の順で進んでいく。

(1)定例会見でコメントする官房長官の菅義偉
「国民の皆さんに説明しきれない問題点が指摘されているわけですから、そこを中心に理解を頂けるような対応を取っていきたい」
→コメント終わりで「ただ、政権幹部とは対照的に...』とのナレーション

(2)定例会見で世耕を中央に着席中の自民党参院幹部議員3人雑観
「続いて与党内には早くも年越しムードが」とのナレーション。
 画面右下に「年越し」と大きめサイズの文字テロップ

(3)コメントする世耕の顔アップ
「(総理は)説明できる範囲はしっかり説明をしたと」

(4)定例会見で世耕を中央に着席中の自民党参院幹部議員3人
 記者「(年内の定例会見は)いつまでやるんですか?」
 世耕(机に置かれたドリンク缶を取り上げ、タブを開ける動作をしながら)「えっ? もう『よいお年を』というか...」
 周囲から笑い声が上がり、世耕も破顔一笑

 映像はこのあとスタジオに戻り、キャスターの徳永有美が「これだけ納得できないという声があがっているのに、『よいお年を』迎えられませんよ、という気持ちになってしまうんですけど」と発言すると、コメンテーターの後藤謙次が「そうですね(以下略)」と答える展開となる。

 これを見た世耕は放送後の10日夜以降、次のようにツイートした。

「今夜の報道ステーションの切り取りは酷い。私は定例記者会見が終わった後、今日の会見が今年最後になるかもしれないという意味で『良いお年を』と言っただけなのに、それを桜を見る会をと絡めて、問題を年越しさせようとしているかのように編集している。印象操作とはこのことだ」

「今日の世耕の会見の『総理は十分説明した』というコメントと、会見終了後に今年最後の会見の可能性があるので『良いお年を』と言ったことは時間的にも、文脈的にも繋がっていない。なのに#報道ステーションは『総理が説明したから、良いお年を』という風に繋げて編集している。印象操作」

「脈絡の異なる話を無理に繋げて編集し、しかも後段は会見終了後の映像を使用している。酷い編集だ」

 12日夕方までに投稿された世耕の10ツイートについて、テレ朝とは異なる民放局の政治部記者が呆れ顔で話す。

「世耕議員の主張は『VTRの最後の部分は会見を終えた後の内々の懇談であり、そこを使うのはルール違反』という、彼自身が勝手に考えついた屁理屈に過ぎません。記者会見は『会見者が会場に入ってから出ていくまで』というのがイロハのイ。例えば短気で有名な麻生太郎財務大臣は、会見で不本意な質問をされたあと、苦虫を噛み潰したような表情で退出することがよくあります。テレビカメラはその表情まで収めており、その様子はニュース番組でもよく使われます。世耕議員もそんなことは常識として百も承知のはず。しかも与党の有力政治家である世耕議員の、公の場での発言。メディアが取り上げることに何一つ問題はありません」

 全国紙の政治部デスクもテレ朝報道局の対応に疑問を呈する。

「桜を見る会についての『(総理は)説明できる範囲はしっかり説明をした』との発言と、最後の『もう、よいお年をというか』との発言は、その間に別の案件に関する質疑応答があったとはいえ、あくまで同じ記者会見での発言。メディア側がどう繋げたところで、印象操作などと非難される筋合いのものではありません」

 この幹部の解説は続く。

「会見終了で気が緩んだ世耕議員は、『よいお年を』などとつい本音を出してしまった。ヘラヘラ笑っている自分の映像が使われたのを見て、事実上、自民党内に安倍首相だけしか後ろ盾のない同議員は、失点を何とか糊塗する目的でもっともらしい屁理屈を捻り出し、ネトウヨという味方が多数存在するネット上で難癖を付けることで、自己正当化を図ったのでしょう」

 あるテレ朝元幹部は「それにしてもあのレベルのイチャモンを何ひとつまともに検証せず、即座に全面降伏してしまうとは......。ロクな記者経験を持たない篠塚率いる今のテレ朝報道局が、政治家の言動や思惑に対処する能力を全く身に付けていない素人集団であることが如実に示された。報道機関という自らの立場を弁えない、露骨なまでの事なかれ主義は、OBとして情けない限り」と天を仰ぐ。

熟練スタッフ約10人を一斉解雇へ

 こうしたテレ朝報道局の"千鳥足"状態に危機感を強めたのが、報ステ枠を受け持つ大手広告代理店「電通」だ。関係者によると、前述した桐永のセクハラ問題が発生して以降、報ステの放送時間内のスポットCMに出稿を希望する企業数が減少し、CM単価が値下がり。加えて現在のスポンサー企業の一部からは、来年4月以降の降板を示唆されるところが現れた。そこで電通はテレ朝報道局長の宮川晶が世耕に謝罪するより前の時点で、問題続発の報ステに何らかの抜本的な対策をとるよう、テレ朝側に強く求めていた。

 これを受けてテレ朝報道局が12月20日の報ステ放送終了後の反省会で公表した措置は、過剰反応としか言いようのないハチャメチャなものだった。CP着任後わずか4カ月の鈴木の解任だけでなく(鈴木は来年3月末まで危機管理担当として報ステに残留)、制作会社から報ステに派遣されている、在籍10年以上の熟練ディレクター約10人との契約を、来年3月末で一方的に打ち切るというのだ。

 関係者によると、解雇対象となったディレクターが所属する制作会社には12月16日、報ステ担当部長の中村直樹から「報ステの人心一新を図るため、派遣契約ディレクターの3人に1人と来年3月末で契約を打ち切る」と通告があった。

 報ステの派遣契約ディレクターの担務はニュース、スポーツ、天気、スタジオ演出などと細分化されているが、解雇通告を受けたのは約40人のニュース班のディレクターのみ。その約4人に1人が看板報道番組から一斉に放逐され、しかもそれは"熟練工"ばかりなのだ。報ステスタッフによると、ベテラン派遣契約ディレクター約10人が来年3月末で解雇されたあと、補充されるのはその半数程度にとどまる。別の報ステスタッフが嘆く。

「今回の人事の悪影響は単なるマンパワー不足にとどまりません。VTR制作に習熟したベテランが去ることでVTRの質が下がり、桐永前CPの就任以降、ただでさえ失われつつある報ステの信用力は、いよいよ崩壊の危機に直面することになるでしょう」

 年度末までわずか3カ月というタイミングでの一方的な解雇通告に、該当するディレクターらは呆然自失の状態にある。前述の反省会では、解雇通告を受けた契約ディレクターの1人から「桐永前CPのセクハラ問題を何も説明しないうちに、こういう形で10人以上が大量解雇されるというのは明らかにおかしい。これまでも番組で派遣切りとか雇い止めとか散々問題視しておいて、これはどういうことなのか」と怒りの声が上がり、反省会は静まり返った。

 これに対して報道番組センター長の佐々木毅は「他番組を用意することもできる」と回答するにとどめ、局としての継続雇用に関する明言を避けた。ところがテレ朝は幹部社員宛てのメール上や、他メディアからの問い合わせには「その方々のほとんどについて、来年4月以降も別の報道情報番組などの制作に携わっていただけないか、派遣元の会社に提案している」などと釈明しているもようだ。

 また、今回の報ステ所属の社員の人事異動では、CPの鈴木や政治担当デスクの梶川のほか、4人のディレクターが対象となった(鈴木の後任CPは報ステ統轄デスクの柳井隆史)。そのうちの1人は、桐永の外部スタッフに対するセクハラの被害実態を集約し、コンプライアンス統括室に通報した女性ディレクターだという。ある中堅社員が驚きを隠さない。

セクハラ通報した女性社員も異動

「彼女は各番組に1人ずついるコンプラ担当の社員で、桐永前CPのセクハラの際には、果たすべき役割を忠実に果たしたに過ぎない。その彼女が桐永前CPのセクハラ発覚後の最初の人事で異動になった。これを見た女性の社員やスタッフの間で今後、『幹部社員のセクハラ通報はNG』といった空気が広がらないか不安です」

 要するに今回の暴挙は、テレ朝の経営陣と報道局上層部が電通からの圧力を背景に、不満分子と疑われる報ステのディレクターを一掃しようと図ったものとみて間違いはなさそうだ。その結果が吉と出るか凶と出るか、4月以降の報ステの視聴率が自ずと証明してくれるだろう。(敬称略)

 もはや報道の内容以前に、番組制作の舞台裏しか話題にならなくなった感のある報ステ。そればかりか、もはやこのテレビ局自体を巡る言説も、その類のものが目立つ。テレ朝の"メルトダウン"は、いよいよ次のフェーズに入ったようだ。

【「ZAITEN」2020年1月号】Tポイントカード「退会後も個人情報漏洩疑惑」記事無料公開

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 11月26日付のブログ記事《【「ZAITEN」1月号】Tポイントカード「退会しても個人情報流出」疑惑》でお知らせした通り、退会届を出した後も個人情報が提携先と共有されている疑いが浮上したTポイントカード。本日12月2日発売の小誌「ZAITEN」2020年1月号の連載企画「新クレーマーズレポート」で詳報しています。

 そんな中、Tカードを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)はブログ掲載直後の11月26日午後に、同問題に関するお詫びのリリース《「届出書」のご郵送によるTカード退会手続きにおける弊社不備に関するお詫び》を発表。同リリースでCCCは〈一部の方につきTカード退会手続きの一部が完了されていない事象が確認され〉たとしていますが、当初は545名が該当すると発表しておきながら、29日には628名に増加したと訂正を出し、実態を把握できているのか依然不透明なままです。

 ところが、CCCが「退会手続きの不備」としている、この問題。当初、CCC側は退会手続きを行った利用者の問い合わせに対して合理的な説明をしなかった上、小誌編集部の取材に対しても、広報担当者が不在など、およそ膨大な個人情報を扱う企業とは思えないような対応に終始しました。そして、11月の回答期限を超えてもなお、CCCは当方が納得できる回答を出さぬまま、小誌記事掲載に至ったというのが取材の経緯です。

 その後、小誌1月号の編集作業が終わり、発刊を待つだけになった11月26日に突如、上記のお詫びリリースを出してきました。その際、広報担当者からリリース公表前の約10分前に小誌編集部にリリースを発表する旨のメールが送信されてきたのですが、そのメールに添えられたのは〈なお、本件に関しましては、この内容以上の公表の予定はございません〉の一文。

 小誌編集部の取材に対してまともに応じることもなく、"後出し"的にリリースの発表で済ませる姿勢は、膨大な個人情報を扱う企業としてどうなのでしょうか? 果たして、みなさま、Tカード会員の個人情報はきちんと扱われているのか――。大いに疑問の残るところです。

 そこで、本ブログで本日発売の小誌1月号「新クレーマーズレポート」掲載の〈Tポイントカード「退会しても個人情報はダダ洩れ?」にまともに回答できないCCC〉を以下に特別に無料公開します。是非ともご一読の上、今一度、Tカードについてお考え頂きたい次第です。

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 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が展開する「Tポイントカード」(Tカード)は会員数6千万人超を誇るポイントサービスだ。CCCのTSUTAYAだけでなく、コンビニエンスストアやドラッグストアの店頭でも、「持ってて当たり前でしょ」といった感じで使用を促される。

 このカードは購入金額100円につき1P(1円)のポイントが付く。たまったポイントは決済時にその場で申し入れるだけで利用でき、「便利でお得」な点ばかりがこれまで強調されてきた。

 しかし実際は、わずか1%程度のポイントの代償として、提携企業に個人情報が共有されているのは周知の通り。氏名、電話番号、住所のほか、提携店舗での購入履歴、TSUTAYAでのレンタル履歴はもちろん、Tカードを導入する図書館の貸出履歴まで......。公開されたくないセンシティブな内容についても、「規約同意」を前提に捕捉、共有されている。

 そればかりでなく、2019年1月には、会員情報が裁判所の令状なしで捜査当局に無断提供されてきたことも発覚、CCC側の対応も含めて広く批判に晒された。

 そもそもTカード加入時に、個人情報の利用について、まともな説明を受けた記憶がない人がほとんどではないだろうか。後から個人情報の共有範囲のあまりの広さを知り、不気味に思って退会しようとしても、その手続きは困難を極める。ヤフーからのネット退会以外は、退会届の郵送や書類のコピーなど、面倒な手続きが要求されることになるからだ。

退会後も情報がダダ洩れ?

〈私はTカードが捜査当局に無断で情報提供しているというニュースを見て、退会手続きを行った一人です。当然ながら、手続き後はTカードとは一切関係がなくなったと思っていました。

 しかし、しばらくしてから〝おかしなこと〟に気づきました。きっかけはヤフーショッピングで買い物をした時、利用可能なTポイントが表示されていることに気づいたのです。アレッと思い、ヤフーの会員情報を見たところ、「Tカード規約同意済み」というグレーの文字が表示されていました。

 そこでTカードに問い合わせてみました。しかし、その時は、私が行った退会手続きで「解除になっている」と説明を受けました。
 それでも納得できず、今度はヤフーに電話。すると、「ヤフーIDに登録されていたTカードの連携は解除されていたが、Tカード規約には同意したままの状況だったので、今もCCCとの連携は行われている」と、Tカードとは違う回答だったのです。

 これに驚いた私は、再度Tカードへ問い合わせました。

 最初に聞いた話とは打って変わり、「退会処理そのものは完了しているが、T会員規約には継続されている状態になっている」と言うではないですか。しかも、退会以降に取得していた情報は、顧客情報ポイントの変動数や残高のみで、顧客情報は見ることは出来なくなっていたとか、ワケが分からない説明に不信感は募るばかり。

 一般の感覚なら、退会手続きをしたと同時に、規約も撤回されていると思うはずですが、退会時に規約撤回の説明自体はありませんでした〉(読者のメールより=赤字部分)

利用者への説明責任は?

 Tカードの退会手続きと、同意の撤回手続きは連動していないのか―。国民的に普及するTカードが、このような杜撰な個人情報管理を行っていたとは驚きだ。

 小誌が早速確認したところ、ヤフー側のサイトにはT会員規約の同意撤回に関する説明があり、手続きを取るためのTカード側へのリンクが貼られていた。しかし、CCCのTカードの公式ページでは、この同意撤回に関する説明を見つけることが出来なかった。

 読者の話の通りなら、Tカード会員が退会手続きを取っても、規約の同意撤回がなされていなければ、規約同意の状態が続き、以降も提携先などに個人情報(匿名化された情報を含む)が流出・蓄積され続けていることになる。あるいは、CCC側が退会者に対し意図的に同意撤回手続きの案内をせず、個人情報を〝搾取〟し続けていた可能性も考えられる。右のような公式ページの仕様からして、これは邪推とは言えないはずだ。

 そこで、小誌はCCCに急遽取材を申し込むことに。対応したのは広報・元永氏である。しかし、ここから事態は混迷を深める。

 詳細は次頁の「新あきれた広報実話」に譲るが、元永氏は当初、サービス運営を行う子会社「Tポイント・ジャパン」に回答させると約束。にもかかわらず、「体調が悪くて休んでいるので」回答期限が守れないと言い出し、その後「必ず私から答えます」と電話をしてきたのだが、〝遅延戦術〟というべき対応が続いたのだ。

 さらに小誌が、規約撤回手続きが告知されているサイトのURLを教えるよう求めても、元永氏が送って来たものには「規約同意の撤回」という言葉はどこにも書かれていなかった。遅延戦術の末の回答がこれでは、CCCは退会者に対し、意図的に同意撤回を行わせないようにしているとしか断じようがない。やはり、何か〝不都合な真実〟があるのだろう。

 Tカード退会者のみなさん、これがCCCの〝回答〟である。

(内容は11月校了分、「ZAITEN」2020年1月号ママ)

なお、CCCは11月26日のリリース発表後、小誌ブログの記述について以下のような指摘を行って来ました。

(1)〈氏名、電話番号、住所のほか、提携店舗での購入履歴、TSUTAYAでのDVDなどのレンタル履歴はもちろん、Tカードを導入する公立図書館の貸出履歴まで......。他人に見られたくないセンシティブな内容についても、「規約同意」を前提に共有されているのです〉

【CCC】ここに書かれている情報は、提携先に共有されておりません。

(2)〈実は、退会届を出して解約した後も、個人情報が共有されている疑惑があるのです――。〉

【CCC】お客様入会中も(1)のデータは提携先に共有されておりませんし、退会後も提携先に個人情報を共有することはございません。誤った認識とご理解のようですので、訂正もしくは取り下げいただきたく存じます。

 CCC側が言うのだから、この点については事実と異なるのでしょうが、本来であれば、小誌編集部の取材に正確に対応していれば、事実誤認はなかったはず。広報対応の拙劣さが招いたものと言えるでしょう。

 今後も小誌はCCCおよびTカードの問題点を取材していく所存です。

 つきましては、みなさまからのTカードに関する情報提供を求めています。何かお気づきの点、あるいは疑問があれば、以下の公式サイトフォームおよびメールアドレスで情報をお寄せください。情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼いただければ幸甚です。

【情報提供フォーム】
http://www.zaiten.co.jp/formmail/indict.php
【情報提供アドレス】
indictment@zaiten.co.jp

【ZAITEN1月号】Tポイントカード「退会しても個人情報流出」疑惑

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カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が展開する「Tポイントカード」(Tカード)は会員数6千万人超を誇るポイントサービス。みなさんも一度は入会、使われたことがあると思います。このTカード、購入金額100円につき1P(1円)のポイントが付き、貯まったポイントは決済時にその場で申し入れるだけで利用できるなど、「便利でお得」な点ばかりが強調されていますよね。最近では、牛丼の吉野家でも使えるようになったとか。

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でも実際は、わずか1%程度のポイントの代償として、Tカード提携企業に個人情報が共有されているのはご存知でしょうか。氏名、電話番号、住所のほか、提携店舗での購入履歴、TSUTAYAでのDVDなどのレンタル履歴はもちろん、Tカードを導入する公立図書館の貸出履歴まで......。他人に見られたくないセンシティブな内容についても、「規約同意」を前提に共有されているのです。

しかも、そればかりではありません。2019年1月には、会員情報が裁判所の令状なしで捜査当局に無断提供されてきたことも発覚し、CCC側の対応も含めて広く批判に晒されたのは記憶に新しいかと思います。

そんな一連の報道を見て、"怖いカード"と解約・退会に踏み切った人も多いかと思いますが、実は、退会届を出して解約した後も、個人情報が共有されている疑惑があるのです――。

「まさか、そんな!?」とお思いの方、詳しくは12月2日月曜日発売の小誌「ZAITEN」1月号をご覧ください。運営会社のCCCの"異常な対応"も含め、詳報しています。

 なお、小誌編集部では引き続きTカードの実態について、今後も取材を続けて参りますので、みなさまからのTカードに関する情報提供を求めています。何かお気づきの点、あるいは疑問があれば、以下の公式サイトフォームおよびメールアドレスで情報をお寄せください。情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼いただければ幸甚です。

【情報提供フォーム】
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【情報提供アドレス】
indictment@zaiten.co.jp

【記事無料公開】セクハラ百十四銀行「色情と暗黒の10年」(1)

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 10月31日、若手行員による顧客情報漏洩の事実を発表した香川のトップバンク、百十四銀行。この"事件"を詳報した小誌「ZAITEN」2019年12月号の発売(11月1日)を次の日に控えた突然の"自白"劇だった。

 行員による情報漏洩は法人3件、個人14件の合計17件に及んだ上、そのうちの1件では、すでにカネを騙し取られる被害が発生していたという驚くべき内容。しかし、やはりというべきか、記者会見は百十四銀の企業体質を反映したものだった。

 これほどの不祥事案にもかかわらず、会見に臨んだのは、代表取締役たる綾田裕次郎頭取ではなく、香川亮平専務執行役員。しかも、情報漏洩による被害が発生していたのは今年7月で、百十四銀側がどの時点で漏洩と被害発生を確認したかは不明ながら、発表までに3カ月以上を要しているのだ。また、情報を漏洩した行員については10月28日に「懲戒解雇」で処分したとしているが、香川県警の事情聴取を受けたのは9月中旬。処分まで1カ月以上が経過しており、迅速な対応からは程遠い。

 そもそも小誌12月号の記事が出ていなかったら、時期も含めて、どのような形での発表になったの、大いに疑問である。そればかりではない。会見で最も問題なのは、この期に及んでも、百十四銀側が"隠蔽"ともいうべき、問題の矮小化を図ろうとしている点だ。

 百十四銀の10月31日会見では、若手行員が情報を漏洩していた先は「友人で、頻繁に食事する仲だった」との発表だったというが、小誌はもちろん、その後の各種報道でも明らかな通り、友人とは同期入行の元同僚、すなわち百十四銀の元行員だったのである。百十四銀は刑事告訴を検討しているとしているものの、果たして、一不良行員の個人的な"事件"だったのか――。

 そんな疑念を掻き立てる理由は、昨年11月1日に小誌18年12月号が報じた渡辺智樹会長(当時)の"セクハラ事件"に見られたような、百十四銀の度し難い隠蔽体質に他ならない。セクハラ当事者の渡辺氏は紆余曲折の末に百十四銀を追われたが、その結果、行内では「オーナー家」を僭称する似非創業家の綾田三代目の裕次郎頭取の専制支配が現出。ガバナンスは正常化するどころか、綾田家および裕次郎頭取との距離感で人事などが決まる一方、ハラスメント事案がいまなお相次いでいるという。

 そんな中、百十四銀は明日11月11日月曜日に情報漏洩事件発覚後初の頭取による決算発表会見を控えている。地元記者の追及がどこまで伸びるか、予断を許さないが、その一助となることを期して、昨年12月1日発売の19年1月号に掲載した特集記事《セクハラ百十四銀行「色情と暗黒の10年」》を以下に無料公開する。

114_ayata_cut.jpg"似非創業家"三代目の頭取、綾田裕次郎




 小誌先月号(2018年12月号)の「今すぐ出処進退について重大な決断をすべきだ」との指摘通り、香川の地方銀行、百十四銀行は10月29日、会長の渡辺智樹の辞任を発表した(会長辞任は31日付)。奇しくもこの日は、渡辺が絡んだセクハラ事件を報じた12月号が刷り上がった当日だった。

 それから1カ月。セクハラ会長が去った百十四は、再生を誓っているかと思いきや、高松の本店は再び弛緩した空気に覆われているという。それもそのはず。セクハラの汚辱に塗れた渡辺は相談役として残留。11月9日に開かれた綾田裕次郎による頭取記者会見も、地元記者の然したる追及を受けることなく遣り過ごせたのだから、渡辺とともに事件の隠蔽を図った百十四の現経営陣が安堵するのも無理からぬことと言える。

 しかし、その一方で、小誌編集部には、そんな百十四の前途を危ぶむ関係者からの情報提供が数多く寄せられている。加えて香川の取引先や預金者からは、同行の地元での傍若無人ぶりを糾弾する声が、これまた数多く届けられた。

 金融担当相を兼ねる財務相の麻生太郎にまで質問が及んだ、前代未聞の百十四銀行セクハラ事件。まずは、11月9日の会見で明らかにされた内容を基に、その概要を振り返ってみたい。

会長セクハラ事件の"真相"


 問題の会合があったのは、18年2月。出席者は、百十四側は会長の渡辺と執行役員、そして女性行員。女性行員の人数は明らかにしていない。また、行為に及んだ取引先の企業名や出席者の氏名などの一切も公表していない。ただ、女性行員は最初から参加していたものの、取引先とは無関係だった。なお、場所は百十四側が用意。当初は百十四側が費用を負担するつもりだったが、取引先が先に会計を済ませていた。

 5月の法令順守の行内アンケートで問題が発覚。6月の処分は、頭取の綾田を含めて7人の取締役の合議で、内容は渡辺と執行役員に対して報酬と賞与の減額処分。しかし、その後、問題を指摘する「投書等」があり、百十四側が社外取締役に連絡したのが10月19日。そこから1週間余りで会長辞任という結論が出たことになる。綾田を含む取締役7人は10月28日付で報酬を減額処分とした――以上が百十四側の公式発表だ。

 ちなみに、小誌が百十四に質問状を送ったのは10月4日。いずれにせよ、2月の会合から8カ月、6月の行内処分から4カ月の間、女性行員の人権に関わる重大な事案は放置されたままだった。

 一方、会見で百十四は「取引に関わる」「個人の特定に繋がる」などとして、最後まで情報開示を拒み続けた。弁護士が再調査するまでの経緯、そもそも女性行員を会合に呼んだのは取引先の要望なのか、渡辺の意向なのか。事件の核心は何も説明されていない。

 また、驚くべきことに、百十四はこの期に及んでも、セクハラ行為があったこと自体を認めず、あくまでも「不適切行為」で、渡辺は口頭で取引先を制止したと言い張っている。さらに、担当者でもない女性行員を会合に出席させた理由について、「場を和ませるため」と説明。女性行員をコンパニオンのようにしか見ていない極めて異常な行内風土が明らかになった。調査に当たった弁護士からも「現代社会で許されない行為」との厳しい批判が出たという。

 しかし、渡辺辞任後も取材を続けた小誌は新事実を含め、セクハラ事件の詳細を改めて把握した。今度は小誌取材で得られた事実を基に事件を見てみることにする。

 件の会合があったのは18年2月15日。場所は高松市内でも有名な高級日本料理店。出席者は、百十四側が渡辺と執行役員で本店営業部長の石川徳尚、20代の女子行員2人。取引先は合田工務店社長の森田紘一と、その甥っ子で同社課長の合計6人。

 百十四をメインバンクにする合田工務店は、高松に本社を置く未上場の地場ゼネコンで、売上規模は同業で四国最大手。東京周辺でもマンションの施工を手掛け、近年は好決算が続く。そして、セクハラ当事者の森田は1944年生まれ。慶応大商学部卒業後、岩谷産業を経て72年入社。86年、社長に就任。高松商工会議所副会頭や香川県建設業協会会長なども務め、14年には旭日中綬章を受章している地元の名士である。

 会食は百十四側が主催。会合の直接的な性格は、森田が同行の金融商品を購入したことに対する謝意の場だった。ただ、森田とともに課長が出席した理由は、独身である甥っ子の「婚活」の意味合いもあったという。つまり、複数の女性行員を呼ぶことは、初めから既定路線だったのだ。

 会食があった当日に「セクハラの範疇を超えた行為」があったのは、小誌前号で報じた通り。ここでも詳細は伏せるが、渡辺らもセクハラ行為に及んでいたのかという事実確認に対し、百十四は「回答を差し控える」として否定しなかったことだけは明記しておく。

 その後、5月に行内でセクハラ事件が判明、株主総会を控えた6月に事態は一気に動き出す。

 6月中旬、渡辺と石川が女子行員2人に対し直接謝罪するとともに、頭取の綾田に始末書を提出。そして、夏季賞与の減額処分で幕引きが図られた。ただ、この時点で執行役員の石川には賞与が支払われていたため、冬季賞与で減額が実施されることになった。

 これらの処分は頭取の綾田に一任されたが、その時、捻り出されたのが、「取引先による不適切行為を止められなかった」という屁理屈に他ならない。というのも、セクハラ行為自体の懲戒は内規にあるものの、第三者の行為を止めなかったことについては「記載がない」からだ。結果、綾田が決裁することになったという。

 詭弁以外の何物でもないが、百十四側の釈明はこのシナリオに依拠しているというわけだ。敢えて下品な表現をすれば、「一線は越えていない」――。事ここに及んでも、渡辺の抵抗はかくも凄まじいものだったと言える。

【続きはこちら】セクハラ百十四銀行「色情と暗黒の10年」(2)へ

百十四銀行「情報漏洩で行員が警察に事情聴取」会見の姑息

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 小誌「ZAITEN」が、香川の地銀、百十四銀行で発生した渡辺智樹会長(当時)の若手女性行員への"セクハラ事件"を報じたのは、ちょうど1年前、2018年11月1日発売の同12月号のことだった。あれから1年。小誌は明日11月1日発売の19年12月号で、改めて百十四銀の不祥事について報じている。題して《行内文書が流出していた疑いが...百十四銀行「行員が警察に任意同行」隠蔽疑惑》である。

 ところが――。12月号発売を前日に控えた本日10月31日、百十四銀は香川・高松で突如記者会見を開催。香川亮平取締役専務執行役員が「30代の元男性行員が、知人に顧客情報を漏らしていた」とした上で、「顧客の一部は詐欺事件の被害に遭っている」と発表した。

【参照】
産経新聞《百十四銀行員が情報漏えい 17件、一部詐欺被害に 「情報渡った可能性」》記事(10月31日13:16配信)

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 まさに小誌報道と符合する内容の発表だが、小誌12月号は10月29日に刷り上がっており、何らかの形で記事の内容を事前に察知、あるいは入手した百十四銀側が掲載誌発売前に会見を開くという"危機対応"を発動させたものと思われる。想像するに、小誌記事の内容をまだ知らない地元記者の追及をかわせるとでも考えたのだろう。まさに昨年10月、渡辺会長が小誌発売直前に辞任した構図の焼き直しだが、そんな姑息な手段で情報漏洩不祥事、ひいては百十四銀が今なおガバナンス不全に陥っている状況を覆い隠すことは出来ない。

 詳細は明日発売の小誌12月号をご覧頂きたいが、香川専務が会見で発表した内容だけを見ても、依然として、百十四銀の度し難い隠蔽体質が浮かび上がる。元より、高松での会見に参加していない小誌はその全容を知らないが、現時点で報道されているマスコミ各社の記事内容に照らしても、触れられていない(であろう)事実はおろか、事実とは相違する点すら見受けられるのだ。なお、それについては、追ってお伝えしていく。

 一方、当の百十四銀の近況と言うと......地元ゼネコン最大手の合田工務店・森田紘一社長(現在も社長在任)とともに鬼畜の如きセクハラという汚辱に塗れた末、会長辞任を余儀なくされた渡辺相談役が今年3月末に事実上放逐されて以降、"疑似創業家"出身の威光で「一強支配」を確立しているという綾田裕次郎頭取。今回の情報漏洩事件については"一不良行員の不祥事"として幕引きを図ろうという意図は見え見えだが、綾田一強支配によって百十四銀内部ではますます疲弊と腐敗が進んでいるとされる。魚は頭から腐る――。そうである以上、腐敗を止めるには、やはり頭から断ち落とすしかない。

 いずれにせよ、小誌編集部は12月号の記事内容にとどまらず、本ブログ他でも綾田百十四銀のガバナンス崩壊をお伝えしていく所存である。

 つきましては、明日11月1日発売の「ZAITEN」12月号をぜひともご覧ください。
 なお、百十四銀の病巣の内幕を報じた長編レポート《セクハラ百十四銀行「色情と暗黒」の10年》を掲載している19年1月号(18年12月1日発売)についても、在庫がございますので、ぜひともご購読のほど、よろしくお願いいたします。

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 小誌ブログでは百十四銀について、過去、以下のような記事もアップしています。

・18年10月31日公開
【ZAITEN12月号】百十四銀行・渡辺会長「セクハラ辞任」について

・18年11月16日公開
百十四銀行「セクハラ事件」の見解および続報について

【ZAITEN8月号】フジテレビ「慶応出身社員」名簿を入手!

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視聴率が低迷し本業の苦戦が続くフジテレビ。

2019年3月期は映画やイベント等が寄与して増収増益を果たし、業績面では一服感が出ているようだが、今期(20年3月期)は、前期のようにな本業外収入も期待できず、視聴率低迷が経営を直撃するともみられている。そんな中、フジテレビは宮内正喜社長が会長に、そして、作家・遠藤周作の長男として知られる遠藤龍之介専務が社長に就くトップ人事を発表。6月26日開催の株主総会を経て正式に就任する。

そんな宮内・遠藤両氏を巡って、ある疑惑が浮上している。社員情報の私的流用疑惑だ。

事の発端は、昨秋の学校法人「慶応義塾」の評議員選挙。慶応の最高議決機関である評議員会のメンバーを決める4年に1度の卒業生による選挙で、企業経営者はじめ、有力OBが是が非でも務めたいという名誉職である。

そんな評議員選に、慶応大学出身の宮内社長(当時、1967年・法学部卒)も出馬。フジ社内のみならず関連企業の慶応OBまでを動員して選挙に臨み、10月末に見事当選した。その際、選挙運動で活躍したのが、同じ慶応出身の遠藤専務(当時、1981年・文学部卒)だった。

本ブログ掲載の画像は、評議員選に際して、フジ社内で作成された「慶応出身者」名簿である。

画像のように、総勢280人余の社員および関連会社社員が抽出され、その社員番号、卒業学部等も記載されていることから、内部関係者、特に高度な人事情報にアクセスできる者でないと作成できないのは明らか。そもそも、社員の人事情報の中から「出身大学」をもとに名簿を作成できるのは、「人事部門の責任者だけ。あるいは、経営陣の指示がないとできない」(フジ関係者)という。慶応出身者だけを抽出していることからしても、目的は、その当時に宮内氏周辺が血道を上げていた評議員選としか考えられない。なお、名簿には慶応出身の有名社員も含まれているなど、小誌もその内容について「真正」であるとの確証を得ている。

要は、宮内社長周辺の指示がないと、作成する目的もなければ、作成すること自体、難しい代物なのだ。しかも、社員名簿の私的流用は重大なコンプライアンス違反、それを社長、専務の両トップが主導して行っていた疑惑が持たれているのだ。

この疑惑にフジテレビ広報は何と答えるのか......その回答と現在のフジの内情については、7月1日月曜日発売の小誌『ZAITEN』8月号レポートをご覧ください。

【ZAITEN購入ページ】http://www.zaiten.co.jp/shop/html/

【電話】03-3294-5651fujitv_keio-1.jpgfujitv_keio-2.jpgfujitv_keio-3.jpgfujitv_keio-4.jpg

【ZAITEN12月号】百十四銀行・渡辺会長「セクハラ辞任」について

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10月29日、香川県のトップ地銀、百十四銀行が渡辺智樹会長の辞任(10月31日付)を発表した。

百十四側の公式発表では「一身上の都合」というものだが、辞任理由は各紙が報じる通り、今年2月の取引先との会食の席上、同席した女性行員に対して取引先が「不適切行為」を働き、その場にいた渡辺会長らが制止できなかったことだという。

5月の社内調査で取引先の不適切行為が発覚、渡辺会長自身は6月、報酬・賞与の減額処分を受けていたものの、その後、社外取締役の指摘で再調査を実施。「不適切行為を制止できなかった」ことが改めて問題視され、それを受けて渡辺会長の引責辞任につながったとされる。

上記のように各紙報道では「不適切行為」と表現されているが、それが「セクシャルハラスメント」を指すことは周知の通り。

ところで、小誌「ZAITEN」は明日11月1日発売の12月号で「百十四銀行・渡辺会長『女子行員セクハラ事件」と題した記事を掲載している。

【ZAITEN公式サイト】http://www.zaiten.co.jp/

詳細はZAITEN12月号をご覧頂きたいが、小誌は複数への取材を実施した上で10月初旬、百十四側に渡辺会長らが関与したセクハラ行為について質問状を送付、広報CSRグループに回答を求めた。その際、担当者は「コメントすることない」と事実関係の認否を含めて回答を拒否。質問を続ける記者を相手に、しどろもどろになりながらも、最後までノーコメントを貫き通した。

そして10月29日月曜日。そのような取材プロセスを経て、渡辺会長セクハラ事件の記事が掲載された12月号が印刷・製本の上、編集部に「配本」されたその当日、百十四側は突如、渡辺会長の辞任を発表。小誌ZAITENの取材から約3週間の間で事態が一気に動いたというわけだが、果たして小誌の取材がなかったら、渡辺会長は辞任していたのか、大いに疑問が残る。

加えて、今年2月の取引先との会合には執行役員の本店営業部長(当時)も参加しており、その処分も不明のまま。同執行役員は10月からは今治支店長に転じているが、重要拠点の支店長就任であり、これが「処分」に該当するものとは到底思われない。また、小誌が確認している事実と、百十四の公式発表および各種報道の間には複数の齟齬も認められる。

さらに、渡辺会長自身は11月から相談役に就任するという。相談役廃止のご時世もさることながら、この期に及んでも渡辺会長が百十四にしがみつく姿は、同行のガバナンスが正常に機能していないことの証左と言える。果たして、報道にあるような、社外取締役による自発的な問題提起があったのか否か、これまた疑問が残るところだ。

そのような点を踏まえ、小誌ZAITENとしては、香川県のトップ地銀である百十四銀行において、コンプライアンスはもちろんのこと、ガバナンスが崩壊の危機に瀕しているものと考えざるを得ない。目下、香川・高松の百十四銀行本店内では関係者が対応を協議しているようだが、同行を巡って小誌は種々の情報を入手しており、銀行経営上も看過できない問題点が複数あると認識している。

小誌ZAITENは、百十四銀行の動向について、今後も注視していくつもりだ。

つきましては、明日11月1日発売のZAITEN12月号をぜひともご覧ください。

【ZAITEN公式サイト】http://www.zaiten.co.jp/

【電話】03-3294-5651

また、百十四銀行に関する情報提供を以下の公式サイトフォームおよびアドレスで募集しております。

【情報提供フォーム】http://www.zaiten.co.jp/formmail/indict.php

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【ちょい見せ】前田信吾のゴルフ場あれこれ 第1回

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ZAITEN11月号から記事を"ちょい見せ"します!

今回は連載「前田信吾のゴルフ場あれこれ」から第1回 ごきげんサウナ編です。

【前田信吾のゴルフ場あれこれ 第 1 回 ごきげんサウナ編】

 先月号までの連載『ゴルフ飯』では大変お世話になりました。今月号からさらにパワーアップ、装いも新たに『マエシンのゴルフ場あれこれ』というコーナーを担当させていただきます。2日に1回はフェアウエーにいる〝マエシン〞こと前田信吾が、毎回、皆様にゴルフが楽しくなるとびっきりの情報をお伝えしていきます。

 第1回目に取り上げるのは「サウナ風呂」です。ゴルフ場はゴルフをするところなれど、ゴルフだけを楽しむのはもったいない、プレー後も至福の時を過ごしたいと思うマエシンが辿り着いた先は〈サウナタイム〉でした。マエシンはゴルフと同じくらいにサウナも大好きなのです。時間が許せば平気で1〜2時間汗を流し続けます。
 そんなマエシンは、関東の主なコースの「サウナ設置状況」を調べたことがあります。
 東京都では小金井CCだけでしたが、神奈川県や埼玉県、千葉県、茨城県にはサウナ完備のコースが意外に多いのです。ただ、サウナはあっても水風呂はないというコースもあります。マエシンは水風呂とのセットで初めてサウナだと考えていますので、サウナだけのコースは非常に悲しくなります。
 さて、そのサウナ、大きさもまちまちですが、一番広いのはおそらく京CC(千葉県)で、20人は入れますね。そしてそれよりは少し狭いですが、清川CC(神奈川県)と取手国際GC(茨城県)もかなり大きめ。水風呂ではやはり京CCが一番大きく、まるで小さなプール。マエシンも実際に泳いでみたことがあります。さらに、この京CCのサウナには32インチ型のテレビが設置されています。マエシンは訪れるたびにここでトーナメント中継を観ますが、裸同士で観戦すると、知らない方とでもなぜか盛り上がります。
 ジュンクラシックCCの姉妹コース、ロペC(栃木県)のサウナにも小さいながらテレビがありますが、マエシンが知る限り、テレビ付きサウナはこの2コースだけだと思います。
 また、東松山CC(埼玉県)のサウナにも特色がありました。通常ゴルフコースのサウナでは、板敷きに敷かれているサウナマットが1日中敷きっぱなしですが、東松山CCでは専属スタッフが日に何度も交換しているのです。このホスピタリティにはマエシンもびっくりです。
 サウナ風呂のついでに、露天風呂にも目を向けますと、京CCには岩で囲んだ露天風呂もあり、開放感溢れる入浴タイムも楽しめます。そうそう、清川CCでも露天風呂を楽しめます。
 どうか、たまにはサウナでたっぷり汗を流してみてください。ミスショットの悪夢からも解放されますぞ。

ZAITEN12月号も発売中です!

お得な定期購入も受け付けております!

是非ご購入ください!

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