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日本経済新聞朝刊に「ZAITEN」10月号の広告が掲載されています。

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本日9月2日の「日本経済新聞」朝刊5面に、現在発売中の本誌「ZAITEN」2020年10月号の告知が掲載されております。

是非とも全国書店や弊社に直接ご注文の上、ご購入くださいませ。

【ZAITEN最新号案内】
http://www.zaiten.co.jp/latest/

なお、弊社サイトでは、ZAITENを確実に入手できる「定期購読」(送料無料)も受け付けております。

【ZAITEN購入ページ】
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【電話】
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本日の日本経済新聞朝刊に新刊『慶應大学法学部卒女子プロが教える ゴルフ「脳内整理」メキメキ上達術』の告知が掲載されています

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本日4月4日の「日本経済新聞」朝刊7面に現在好調発売中の弊社最新刊『慶應大学法学部卒女子プロが教える ゴルフ「脳内整理」メキメキ上達術』の告知が掲載されています。

大学入学で初めてクラブを握り始め、卒業後に就職しながらもゴルフへの思いを断ち切れずに退社、一念発起してプロゴルファーになった著者、永野千秋さんだから伝授できる「ゴルフ上達のメソッド」が余すところなく盛り込まれた一冊に仕上がっています。

新型コロナ禍で外出できない今だからこそ、ご自宅で『ゴルフ「脳内整理」メキメキ上達術』を読んで、なかなか上達の糸口を見つけられなかった、今までのゴルフライフをチェンジしてみませんか?

ビジネスマンゴルファーのみならず、全国のゴルフ愛好家のみなさん、是非とも本書をご一読ください。全国書店、あるいは、弊社で直接ご注文の上、ご購入のほど、よろしくお願いいたします。
(書店流通の関係上、弊社から直接ご注文の方が迅速にご購読いただける状況になっております)

TBS系「サンデーモーニング」でもお馴染みの"屋根裏のプロゴルファー"タケ小山さんも推薦!

【詳細ご案内ページ】
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【クレジットカードでのご購入ページ】
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【記事無料公開】青木功・日本ゴルフツアー機構で「クーデター」勃発の背後

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昨日、一部夕刊紙が報じた日本ゴルフツアー機構(JGTO)の"内紛問題"。その詳細は「日刊ゲンダイ」(電子版)の記事《男子ゴルフツアーでクーデター 大量41人が青木体制に"NO"》をご覧頂きたいが、JGTOの問題を巡って本誌「ZAITEN」は、その会長に君臨するプロゴルファー、青木功氏の機構トップとしての資質をはじめ、ガバナンス問題を再三にわたって問題視してきた。そして、ここにきて青木JGTOが"破綻"の瀬戸際に立っているのは、本誌の指摘通りの展開と言える。

実際、青木執行部が青木氏の"お友だち内閣"に堕し、理事などの幹部たちがまさに我田引水のような機構運営に終始してきたのは本誌既報の通り。そこで今回、日刊ゲンダイ記事でもコメントを寄せているゴルフ評論家の宮崎紘一氏寄稿の本誌2020年3月号(2月1日発売)記事《JGTOが名門・岐阜関CCにもたらした 「2020ツアー日程」の災厄》を特別に無料公開したい。同記事で報じられる青木体制の姿は、まさにJGTOがゴルフ界の発展はもちろん、選手たちのために資することのない我利我欲の有り様に他ならない。

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「2020年のJGTO(日本ゴルフツアー機構)のスローガンは〝感動〟〝歓喜〟〝感謝〟です」

 昨年1224日、都内ホテルで開かれた今年のツアー日程の発表でJGTOの青木功会長がこう発した。その言葉からは、青木氏自身がトップに立っても一向に低迷脱出の糸口も掴めない現状を何とか打開したいという焦りが伝わってくる。

 だが、発表された20年の日程を見る限り、昨年とほぼ同様。それどころか、その裏には岐阜の名門コースを愚弄する由々しき問題が内包されていた。

 20年の男子ツアー日程は2試合増えて2試合減少(2増2減)で、昨年と同じ25試合が組まれている。

 新設された大会は、7月8日から12日までの「ゴルフパートナー・プロアマトーナメント」(茨城県・取手国際GC=賞金総額5千万円)と、1029日から11月1日までの「THE TOP(ザ・トップ)」(開催コース未定=賞金総額1億円)で、消滅した大会は、昨年米PGAツアーの日本初開催となった「ZOZOチャンピオンシップ」(賞金総額約11億円)と、「HEIWA・PGMチャンピオンシップ」の2試合。

 ただし、2増2減とは言っても、若手登竜門のチャレンジツアーである「AbemaTVツアー」は、昨年の15試合から12試合に減少しているため、全体的には後退しているのが実情だ。

顔に泥を塗られた岐阜の名門コース

 冒頭で指摘した由々しき問題は、新設されたザ・トップの開催を巡ってのことである。

 日程の中で、韓国PGAと共催の「Shinhan Donghae Open」(昨年は韓国で開催)を除いて、国内大会で唯一、開催コースが未定なのはザ・トップだけ。そこにJGTOの重大な〝失策〟が隠されている。

 ザ・トップは、愛知県名古屋市に本社を置くトップホールディングス(小田悟社長)が冠スポンサーとなる大会。同社は通信・OA機器の販売・工事・保守やエコ関連事業、旅行業、リサイクル事業など、6つのグループ会社で構成され、昨年の売上高は233億3千万円、中部・東海地区では知られた企業である。

 実は、同社が男子ツアーに関与したのは今年からではない。

 14年から昨年まで、歴史ある大会で知られる「東海クラシック」に特別協賛会社として名を連ね、その間、大会名も「トップ杯東海クラシック」とされていた。

 だが、同グループの小田社長は、「自分たちの目指していることを実現するには、自らが『主催者』になり、もっと新しいチャレンジをしていかなければならないと考え、このたび、20年での新規男子ゴルフトーナメントの主催大会を目指し、具体的な行動を起こすことにしました」と大会主催の主旨を語り、東海クラシックからの離脱に踏み切ったのだ。

 同大会は発足以来、東海テレビ放送と、東海ラジオ放送が主となって運営してきた。だが、どうせ大金を拠出するなら脇役ではなく、前面に出たい。小田社長がそう考えても不自然ではない。

 ただ、その実現に向けたJGTOとの動きが中部地区で大きな批判に晒されている。

 もともと、小田社長は本社のある中部地区エリアでの大会開催を望んでいた。そこで白羽の矢を立てたのが、岐阜県の名門コース「岐阜関カントリー倶楽部」(岐阜県関市)である。

 同CCは、名匠・上田治設計で1964年に開場、本オープンの66年には高松宮・同妃殿下が参列したという由緒あるコースで、これまで男女のメジャー大会をはじめ、多くのビッグゲームが開催されてきた。73年に開催された日本プロでは現役だった青木会長が見事に優勝を果たしている。

 トップの小田社長が名指しで開催を希望するのも頷ける名門コースであり、小田社長の要請を受けた同CCでは、「中部地区のゴルフの活性化」も考え合わせて、昨年1014日の理事会で検討、開催を承諾した。

 翌日の15日には、トップが小田社長による署名と印鑑捺印した「開催申込書」をJGTOに提出、受理されている。

 この開催申込書受理に至るまでは、トップの依頼を受けた大手広告代理店やJGTO担当者による綿密なミーティングが毎月のように行われ、小田社長との打ち合わせ、岐阜関CCへの数度の訪問も行われてきた。そして開催申込書受理後の1023日には、JGTOと広告代理店担当者と岐阜関CC側とで契約に関する最終確認まで行っている。さらに、1111日、JGTO会議室では、青木会長、上田昌孝専務理事、佐々木孝悦常務理事(事務局長)、村田一治理事、佐藤信人理事らに加え、代理店幹部や担当者が集まり、実施要項、岐阜関CC理事長訪問の調整、同CCとの契約案などについて、綿密なミーティングが行われた。

 およそ半年後の6月開催に向けてすべてが動き出していたのだ。

皇族参加イベントにごり押し依頼

 ところが、事態は一変する。

 1128日、トップから6月から11月への日程変更の通知書(提出済みの申込書の取消書を含む)がJGTOに提出された。

 JGTOはトップの要望に応えて、1週間後の12月6日、開催登録承諾書を返送している。だが、この間、岐阜関CCには何の相談も報告もなされていない。開催コースでありながら完全に蚊帳の外で話が進んでいた。

 本来なら、直ちに開催コースに相談すべき事案だが、青木会長はそんな常識すら持ち合わせていないようだ。開催コースの日程変更など「オレが電話を入れれば簡単にクリアできる」と思っていたに違いない。

 実際、日程変更了承後、青木会長は、岐阜関CCの関谷均常務理事(同コース所属の森口祐子プロの夫)に再三にわたって日程調整(変更の)依頼の連絡を入れている。

 連絡を受けた関谷常務理事はこの勝手な変更に、「6月の開催がすでに主催者(トップ)、JGTO、当該ゴルフ場において了解済み。そもそも、変更予定という期日はすでに別の予定が入っており、当倶楽部としては、ただただ困惑するばかり」とJGTOサイドに伝えた。

 トップが突然、日程変更を言い出したのには理由がある。開催申込ギリギリの11月になって、「HEIWA・PGMチャンピオンシップ」の大会中止の情報が飛び込んできたからだ。

 小田社長は、かねてより秋口開催を望んでおり、この空白になる期間の後釜に飛びついたのだ。

 小田社長にこの情報をもたらしたのは青木シンパの理事の1人。本来なら、主催者と開催コースの間に入って調整をしなければならない立場のJGTOの人間が、主催者の言い分のみを聞き入れ、自ら混乱を招くきっかけをつくったのだ。

 一方、岐阜関CCには、小田社長が望む11月の日程に応じられない重要な予定が入っていた。

 この期間、岐阜県が県を挙げて取り組む「ねんりんピック」(全国健康福祉祭)のイベントが開催されるのだ。

 ねんりんピックとは、高齢者を中心とするスポーツや文化、健康と福祉の総合的な祭典で、厚生省(現・厚生労働省)創立50周年を記念して88年にスタート。開会式には皇族も列席する、いわば「国民的行事」である。毎年各県で持ち回り、高齢者を中心とする国民の健康の保持・増進、社会参加、生きがいの高揚等を図り、ふれあいと活力のある長寿社会の形成に寄与することを目的としている。

 今年は岐阜県の開催で、県知事以下、県総出で準備を進めている。そのイベントの中にはゴルフ大会もあり、岐阜関CCが会場に選出されているのだ。

 皇族も並ぶ催しに、プロゴルフのトーナメントが割り込むことなど到底許されない。

 そこにJGTOが強引に大会を押し込もうとしたわけだ。岐阜関CCが困惑、怒るのも当然である。岐阜県は今年のNHK大河ドラマの舞台でもあり、国家的イベントのねんりんピックと併せ、新設トーナメントの開催で県のPRと振興をしていくと、ゴルフ場ばかりか、県全体が盛り上がっていた。そんな上げ潮ムードをトップとJGTOは無情に踏みにじったことになる。

 おそらく岐阜関CCは、トーナメント開催の要請は二度と受け付けないだろうと関係者は見ている。

日程発表の場で筆者についた大ウソ

 日程発表の会場で、筆者はこの件について質問した。するとJGTOの浦山豊競技運営部部長から驚くべきコメントが発せられた。

「まず断っておきますが、第1回目の開催申込書はあくまで確認書に過ぎず、効力があるわけではありません。また岐阜関CCさんでは、変更期日が『ねんりんピック』と重なっているそうですが、ゴルフ大会が行われるのは11月2日の月曜日であり、日曜日は練習指定日。それを止めればトーナメント(ザ・トップ)を開催するのも可能と思われます」

 つまり、岐阜関CC側が融通を利かせろと言うわけだ。

 だが、開催申込書が確認書に過ぎないというのは明らかなウソである。主催者の正式な署名と印鑑まで押されているものであり、これまでのすべてのトーナメントは開催申込書が受理された時点で開催決定となってきたのだ。

 こんなとぼけた回答をしているにもかかわらず、そばにいる青木会長は一言も発言しなかった。

〝被害者〟は、岐阜関CCだけではない。半年以上もかけて、大会実現に奔走した大手広告代理店も契約を外され、JGTOの大会窓口で動いた担当者の努力も水泡に帰した。

 すべての責任は青木会長とシンパの理事の面々にある。

 この騒動は、中部地区のゴルフ場全体やゴルファーに伝わり、猛反発が起きているという。

 それでも、主催者のトップは、中部地区のゴルフ場での開催を希望している。だが、名門・岐阜関CCに対しての非情な行為があるだけに、新たに開催に手を上げるコースはなかなかないだろうという見方が強い。

 JGTOと青木会長は本当に男子ツアーの復興を考えているのだろうか。

 今年の日程を見ると、昨年、米PGAツアーが日本で初めて開催し大成功を収めた「ZOZOチャンピオンシップ」も日程から外された。そのため、今季の賞金総額は約11億円減となった。ZOZOで獲得した賞金の50%を賞金ランキングに加算するという約束も反故されたことになる。

 石川遼選手会長は、「選手に夢を与える機会をなぜ奪ったのか」と、この時、反論したそうだが、それに対する明確な返答もないという。

 このように、ツアー発展への明確な政策がない青木会長とJGTO執行部に選手の大半が愛想を尽かして、辞任に追い込む機運も充満しているという。

 青木会長が発した言葉は、「感動」を与えるのではなく、自身が男子プロたちから「勘当」されるということなのか。

本誌ではJGTOはじめ、ゴルフ界に関する情報提供を以下の公式サイトフォームおよびメールアドレスで募集しております。なお、情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼ください。

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【記事無料公開】大幸薬品「クレベリン」 の新型コロナウイルス"便乗商法"

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連日連夜、ネットやテレビで流される新型コロナウイルス関連ニュース。ドラッグストアに行ってもマスクが1枚も買えない状態が今もなお続いています。安倍政権の唐突なコロナ対応についても一言いいたいところですが、それよりもマスクが必要な状況下で空っぽのマスク売り場を見て、不安が急に募った人も多いのではないでしょうか。

ネット上には新型コロナウイルス対策グッズを紹介するページも乱立しており、中には"便乗商法"としか思えない内容のものもあり、商品特性をよく理解せず焦って購入してしまったという話もよく耳にするようになっていますので、みなさん注意しましょう。

そんな中、新型コロナウイルス関連商品の中で、かなりの頻度で紹介されている「クレベリン」という商品があるのですが、みなさんご存知ですか? あの「正露丸」で有名な大幸薬品の商品ですが、マスク売り場の空きスペースに陳列されているようです。しかし、「クレベリン」は医薬品ではなく、あくまでも「雑品」なのです。

ここでは、現在発売中の20204月号(32日発売)で掲載している記事《大幸薬品「クレベリン」新型コロナウイルスに便乗の"沈黙商法"》を特別に無料公開いたしますので読んでください!

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〈私は日頃から業務上、マスクは原則NGになっている接客業の職場で働いている者です。新型コロナウイルスが取り沙汰された当初、上司から予防したい人は、マスクの代わりに「クレベリン」スティックなどの除菌剤を各自で買いなさいと指導を受けたので、購入しました。ちなみに、現在はマスク着用が許されるようになりましたが......。

 私が買ったのは、ペンのような容器に入っており、首から下げる専用ケースがついているもので、1箱1000円以上しました。

 すでに数日間使用しましたが、コロナウイルス対策として効果があるのか疑問です。どのウイルスや菌を除去できるのかも、分からないし、何のために首から下げているのか、と首を傾げる日々でした〉(読者のメールより)

クレベリンは薬ではない!

 新型コロナウイルスが上陸した後、瞬く間にドラッグストアからマスクが消えた。連日連夜テレビで流されるダイヤモンド・プリンセス号での集団感染報道に煽られる中、街中では人々がマスクを手に入れることができない状態に陥っていた。

 多くのドラッグストアでは売り場に〈本日マスク入荷なし〉という内容の貼り紙がされ、マスク売り場の棚はどこも空っぽ状態。

 しかし、その空の棚に「クレベリン」を陳列している店があった。この売り場ではマスク目当てに来店した多くの消費者が「マスクの代わりになれば」とクレベリンを購入していた。

 クレベリンは、正露丸で有名な大幸薬品が出している商品だ。そのパッケージには「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」とある。スティック状のもののほか、スプレーや置き型の製品がある。

 ネット上には新型コロナウイルス対策グッズを紹介するページも乱立しているが、クレベリンはかなりの頻度で紹介され、注目度も高い。その一方で対策グッズの商品特性をよく理解せず購入するケースも増えているようだ。

 早速、編集部では大幸薬品広報部の高梨氏に取材を申し込んだ。 

 大幸薬品では2005年から業務用クレベリンを販売、今では連結売上高の6割をクレベリン関係が占め、正露丸をも上回る。

「クレベリンは二酸化塩素の作用に着目したウイルス除去・除菌・消臭のための雑品のブランドです。主成分である二酸化塩素ガスの酸化作用により、空間に浮遊したり壁面などに付着するウイルス・細菌・カビのたんぱく質や悪臭物質を働かせなくさせます」(高梨氏)

 とはいえ、ナントこの商品は〝薬品〟ではなく〝雑品〟なのであるでは、どのようなウイルスや菌を除去するのか。

 高梨氏は「クレベリンは雑品のため、特定のウイルス・菌に対する効能・効果を謳うことは薬機法に抵触するため、一般の方々に当該情報のご提供はできません」と回答。

 つまり、消費者に何を除菌、除去しているのかも明示できないような非常に曖昧な商品なのだ。

 しかも驚くことに、これらのクレベリン製品は14年3月、消費者庁より、製品紹介ページや新聞広告の表現について、景品表示法の優良誤認に該当すると措置命令を受けた過去があるのだ。パッケージの後ろに小さく記載されている「ご利用環境により、成分の広がりは異なります」という文言は消費者庁の指導で追加されたという。

 クレベリンにエビデンスはあるのだろうか。高梨氏に確認したところ、除菌の根拠としての二酸化塩素に関する実験データや成果があるとしたが、閉鎖空間での試験結果で、もちろん新型コロナウイルスに対する二酸化塩素の試験データはない。

 ネットには〝お守り代わり〟に下げるものだと書き込まれていたが、言い得て妙である。

新型コロナウイルスに便乗?

 ネットなどではクレベリンがあたかも新型コロナウイルス対策として使えるように書かれているし、店ではマスクの代用品のように陳列されているケースは今後も増えてくるだろう。

 そして、読者のように会社でコロナウイルス対策にクレベリンを使えと間違った指示を受けるケースも出始めている。

 大幸薬品はこうした状況を把握し、いち早く消費者に向け分かりやすい商品情報を発信するべきではないか。それとも〝コロナウイルス特需〟だとでも思っているのだろうか。現に、クレベリンの売り上げは大幅に増え、2月12日には株価がストップ高に。20年3月期連結純利益予想も30・3%上方修正し、過去最高を狙う。

 高梨氏は「新型コロナウイルスに関するネットを含めたメディアでの一般的な報道や政府発表の情報は適時収集し、販売従事者を対象に適時、製品に関する説明会や情報提供等を行っています」と言うが、大幸薬品の公式ホームページなどを見る限りでは、一般消費者の誤認を防ぐような努力は特に行っていない様子。

 こうした状態を放置するのは便乗商法ではないか。そうではないと言うのなら、今すぐ「クレベリンの新型コロナウイルスに対する効果は確認されていません」と広報すべきだ。

なお、本誌編集部では読者のみなさんの「これはちょっとおかしいのではないか?」「企業倫理はどうなっているの?」という素朴な声を企業へダイレクトに問いかけ、日々取材を行っています。些細な情報とお感じのことでも結構ですので、以下の公式サイト情報提供フォームおよび編集部メールアドレスなどで情報をお寄せください。情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼頂ければ幸いです。

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【記事無料公開】みずほFGで進む「バブル入社組リストラ」の実態

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メガバンクをはじめ、金融機関のビジネスモデルが崩壊する中、「メガ万年3位」が定着するみずほフィナンシャルグループ。銀行はじめ、傘下各社でリストラが進む。

一方、3月2日月曜日発売の本誌「ZAITEN」2020年4月号では坂井辰史FG社長の出身、みずほ証券で発生した"ある不祥事"を取り上げている。そこで今回、特別に20年2月号(19年12月26日発売)で掲載した記事《みずほFG「バブル入社組リストラ」の凄惨》を特別に無料公開したい。

なお、本誌編集部ではみずほFGに関する情報を広く募集しております。些細な情報とお感じのことでも結構ですので、以下の公式サイト情報提供フォームおよび編集部メールアドレスなどで情報をお寄せください。情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼頂ければ幸甚です。

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 年金減額、管理職の昇給廃止、希望退職募集......。みずほフィナンシャルグループ(FG)でバブル入社組を狙い撃ちにした〝首切り〟作戦が苛烈化している。2026年度末までに1万9千人の人員削減を行う計画を打ち出すみずほだが、直近の19年4~9月期の連結純利益が3メガバンクで唯一2ケタ減益に陥るなど、「目も当てられない状況」(元役員)。

 株価下落などで保身を焦る社長の坂井辰史(1984年旧日本興業銀行入行)は「改革のスピードを上げろ」と、FG執行役専務の石井哲(86年旧興銀)や、グループ傘下のみずほ銀行頭取の藤原弘治(85年旧第一勧業銀行)、みずほ証券社長の飯田浩一(86年旧興銀)ら中枢幹部に大号令を掛けているという。だが、「改革」とは名ばかりで、実態は給与が高い中高年社員の首切り加速で業績不振を糊塗する魂胆が見え見えだ。

 一方で、収益底上げ策はお寒い限り。FG社長就任から2年を迎える坂井が「成長戦略」の名のもとに打ち出した施策は、世の流行に迎合した社員への副業解禁や、他行を後追いしただけの銀行のノルマ営業廃止、一向に普及しないキャッシュレス決済サービスなどの「際物ばかり」(FG幹部)。

「若者層らアプリユーザー8千万人を取り込む」とぶち上げたLINEと合弁のスマートフォン銀行も先行きは不透明で、坂井が「次世代金融への転換」による収益回復を掲げた中期経営計画(19~23年度)は初年度からドン詰まりの状態に陥っている。中計の年限を従来の3年から5年に延ばした坂井は「あと4年はトップに居座るつもり」(FG幹部)。無能な経営がこれ以上続けば、「みずほの収益・人材基盤を完全に崩壊させる」(中堅幹部)だけだろう。

「企業年金減額」で追い込み

「改革のスピードが今のままでいいとは思わない」―。みずほFGが東京・日本橋の日銀記者クラブで11月14日に開いた19年度上期決算発表会見。坂井は神妙な面持ちでこう語り、構造改革を加速する方針を強調した。今や恒例となった3メガ決算でのみずほの「独り負け」。19年度上期の連結純利益も、三菱UFJFGが前年同期比約6%減の6099億円、三井住友FGが同9%減の4319億円と踏ん張ったのに対し、みずほFGは同約20%減の2876億円。業績不振が際立った。

 深刻なのはみずほ銀の経営実態を示す総資金利ザヤがマイナス0・18%と「逆ザヤ」に陥ったことだ。総資金利ザヤは、資金運用利回り(貸出金や有価証券運用の利回り)から資金調達原価(預金利回りや経費など)を差し引いて算出する銀行経営の代表的な指標。逆ザヤということは、銀行業務を続けるほど、赤字が膨らみかねない危機的な状況を示す。

 しかし、新たな収益源を見出してこなかった坂井に出来るのは、構造改革と称した大規模な人員削減にドライブを掛けることだけ。このため、バブル入行組の大量首切りを加速させようとしている。そこで打ち出したのが企業年金の減額だ。みずほ銀とみずほ信託銀行を中心とする約3万5千人の社員のうち、53歳以下が対象で、48~53歳の社員が20年度中に会社を辞めれば、年金を減額しない特例を設けたが、これがミソ。

「超低金利環境の長期化を踏まえた年金制度の安定化が目的」と嘯くが、実際は「バブル入社組を自己退職に追い込む姑息な仕掛け」(みずほ銀50代行員)に他ならない。さらに、坂井みずほは「能力主義の徹底」を口実に人事・給与制度も見直し、21年7月には管理職約5千人の自動昇給を廃止する。管理職は前身の旧3行統合で苦労させられた受難の世代。にもかかわらず、坂井はお荷物として切り捨てようというわけだ。

 また、坂井がかつて社長を務めたみずほ証券は、「人生100年時代」を掛け声に20年1月から50歳以上の社員を対象に規模を定めない早期退職を募集。グループを挙げたバブル入社組追い出し作戦の一環なのは明らかだ。それでも、証券マンは早期退職に伴い割増退職金が支払われる分、年金減額という真綿で首を絞めるようなやり方で追い出される銀行マンよりはマシかも知れない。銀行の早期退職募集を避けたのは「坂井が世間体を気にしたから」(周辺筋)というから呆れ果てる。

思い付きの「ノルマ廃止」

 他の2メガもリストラを進めるが、一方で海外業務の拡大やリース事業強化など前向きな戦略にも注力している。翻って、みずほは旧3行系列で乱立する上場リース会社の再編構想は頓挫し、海外進出も出遅れたままだ。経営失策こそが独り負けの元凶だが、坂井がこの2年弱で打ち出したのは「フィンテックなどの看板を掲げた浮ついた施策ばかり」(元役員)。背景には、長期政権を築いた前FG社長の佐藤康博(現会長、76年旧興銀)の〝傀儡〟イメージを払拭しようと世間受けに躍起な坂井の習癖も影響しているという。

 例えば、鳴り物入りで19年3月から始めたQRコードによるキャッシュレス決済サービス「Jコインペイ」。「地銀とも連携しオールジャパンで決済革命を起こす」と嘯いたが、有力地銀や加盟店が思うように集められず、会員数は19年度内の目標(184万人)の1割にも満たない10数万人。

 また、坂井が「働き方改革」を御旗に19年4月に導入したみずほ銀の「ノルマ営業廃止」も、19年度上半期の投資信託収益が前年同期比で3割も落ち込む悲惨な結果を招いた。関係筋によると、坂井がノルマ営業廃止を言い出したのは「改革者のイメージを守るため、ライバルの三井住友FGに後れを取りたくなかったから」。だが、もともと行員の営業力が強く、4年がかりで準備を進めた三井住友と異なり、みずほは坂井の思い付きに過ぎなかった。

 坂井が期待するLINEと合弁の「LINE Bank」(20年度中に開業予定)も、同社がZホールディングス(HD、旧ヤフー)と経営統合することで先行きが怪しくなっている。ZHD傘下にネット銀行があるためで、重複事業を整理する過程で、みずほとの合弁もどうなるか分からない。

 自らの無能経営を棚に上げ、業績不振のしわ寄せを現場に押し付ける坂井。佐藤とともに自身がトップの座から一日も早く退くのが改革の第一歩である。(敬称略、肩書等は掲載当時のまま)

繰り返しになりますが、3月2日発売の本誌4月号の「みずほ証券不祥事」については近く告知しますので、是非ともご購読のほど、よろしくお願いいたします。

【ZAITEN2020年3月号】ブリヂストンに関する情報提供を再度募集します!

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 本誌「ZAITEN」2020年2月号(19年12月26日発売)でも告知した通り、2019年12月13日、突如、CEO(最高経営責任者)退任を発表したタイヤ最大手、ブリヂストンの津谷正明会長(正式には3月末予定)。津谷氏らによる陰惨な"独裁支配"については、本誌でこれまで数回にわたって報じてきた。

 一方、津谷氏がCEOから退いて後も会長に居座ることが規定路線になっていることもさることながら、後任CEOに就く石橋秀一副会長についても、巨艦ブリヂストンの経営トップの任に能わずという、その資質を疑問視する声が各方面から本誌に寄せられている。

 そこで本誌では2月号に引き続き、3月号(20年2月1日発売)においても、ブリヂストンに関する情報提供を引き続き募集しております。つきましては、内外の関係者のみなさん、是非とも下記の告発フォーム他から同社に関する情報をお寄せ頂きたく、よろしくお願いいたします。なお、情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼くださいませ。

【情報提供フォーム】
http://www.zaiten.co.jp/formmail/indict.php

【情報提供アドレス】
indictment@zaiten.co.jp

【ZAITEN編集部電話】
03-3294-5658

 なお、本誌「ZAITEN」においては、過去、下記のような記事を展開しております。

・【ZAITEN2019年6月号】
ブリヂストン津谷会長「不祥事隠蔽」支配

・【ZAITEN2019年8月号】
ブリヂストンの"独裁者"津谷正明会長「創業家と縁切り」の独り相撲

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【ZAITEN2020年2月号】ブリヂストンに関する情報提供を募集します!

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 2019年12月13日、突如、CEO(最高経営責任者)の交代を発表したタイヤ首位、ブリヂストン――。約8年間、経営トップに君臨してきた津谷正明代表執行役CEO取締役会長(67)に替わって、石橋秀一代表執行役副会長(65)がCEOに昇格する人事で(正式就任は3月末)、津谷氏は一線を退くなどと解説されているが、笑止千万。小誌「ZAITEN」で再三指摘してきた通り、権謀術数で知られる津谷氏の"野望"が枯れたわけではない。

 というのも、津谷氏はCEO退任会見で、自身の処遇については言を左右にして明言することがなかったが、社内外では会長職に居座る意向との見方が支配的なのだ。今年1月には江藤彰洋氏(59)がCOO(最高執行責任者)兼社長に就いたが、CEOに上がることなく、石橋氏を副会長からCEOに引き上げる変則人事。結果、「津谷会長-石橋CEO-江藤COO(最高執行責任者)」のトロイカ体制を仕立て上げた格好で、石橋・江藤両氏を相争わせる津谷流人事の真骨頂にも見える。

 さらに、津谷氏が会長に居座る目的は、ずばり20年の東京五輪の"晴れ舞台"のためというから呆れ果てる。ブリヂストンは世界で6社しかない「ワールドワイドパートナー」の1社なのだが、社内官僚として栄達を果たし然したる実績のない津谷氏は、五輪パートナー活動に血道を上げてきたことで知られる。その総仕上げが、経営トップとして五輪の舞台で破顔一笑することというのである。

 目下、ブリヂストンに往時の勢いはなく、19年12月期は4期連続の営業減益が予想され、利益規模は4年前と比べて6割程度に縮小する惨状。本来なら、津谷氏の経営責任は免れないはずで、ブリヂストン社内は得も言われぬ閉塞と倦怠に覆われているという。

 そこで小誌では、ブリヂストンおよび津谷氏に関する情報を広く募集します。現在発売中の「ZAITEN」2月号(12月26日発売)でも告知していますが、ここにサイト上でも情報提供を呼びかけますので、社内外の関係者のみなさん、是非とも下記の告発フォーム他からお寄せ頂きたく、よろしくお願いいたします。なお、情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼くださいませ。

【ZAITEN公式サイト】
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【ZAITEN編集部電話】
03-3294-5658
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【情報提供アドレス】
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「ZAITEN」2020年2月号は本日12月26日発売です。

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小誌「ZAITEN」2020年2月号は本日12月26日発売です。
ラインナップは下記URLの通りですが、今月は「怒り100倍・新春特別号」です。

しかも、表紙は澤井健さんが描いた、どこぞのバカ殿様
そして特集も、バカ殿ならぬ安倍晋三の財界指南役で"政権の黒幕"というべきJR東海の葛西敬之名誉会長です。
一鉄道会社のトップながら、共産中国は分裂すると予言する傍ら、米国と核兵器シェアすべきなどとゴリゴリの親米・反中保守思想を撒き散らす御仁で、まさにバカ殿様にとっての御家老(クワマンこと桑野信義の役柄)といったところでしょうか?

この他のラインナップには、三毛兼承頭取ら慶応閥が跋扈する三菱UFJ銀行のガバナンス危機など、盛りだくさんです。

一味違ったZAITEN新春号を2020年のお供に、ご購読のほど、是非ともよろしくお願いいたします。

【ZAITEN購入ページ】http://www.zaiten.co.jp/shop/html/

【電話】03-3294-5651

ちなみに、2月号の全ラインナップは下記URLをご覧くださいませ。
【最新号案内】http://www.zaiten.co.jp/latest/

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日本経済新聞朝刊に「ZAITEN」1月号の告知が掲載されています

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本日12月3日の「日本経済新聞」朝刊4面に、発売中の小誌「ZAITEN」2020年1月号の告知が掲載されております。
是非とも全国書店や弊社に直接ご注文の上、ご購入くださいませ。

今号の特集は......
三菱UFJ「東大出身」粛清支配
――"京大出身"平野信行会長の独裁の陰で"慶応出身"三毛兼承頭取は「慶応閥」を培養"

MUFGはじめ、金融関係者の方は是非とも、わが国トップバンクの陰惨な内幕をご一読ください。

なお、弊社サイトでは、発売日より少し早めにZAITENを入手できる「定期購読」も受け付けております。

【ZAITEN購入ページ】http://www.zaiten.co.jp/shop/html/

【電話】03-3294-5651

ちなみに、1月号の全ラインナップは下記URLをご覧くださいませ。
【最新号案内】http://www.zaiten.co.jp/latest/

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「ZAITEN」2020年1月号は本日発売です。

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小誌「ZAITEN」2020年1月号は本日12月2日に発売しました。
ラインナップは目次の通りです。
ご購読のほど、是非ともよろしくお願いいたします。

【ZAITEN購入ページ】http://www.zaiten.co.jp/shop/html/

【電話】03-3294-5651

ちなみに、1月号の全ラインナップは下記URLをご覧くださいませ。
【最新号案内】http://www.zaiten.co.jp/latest/

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テレビ朝日「やらせ会見」と「報ステ"セクハラCP"処分」経営責任の平仄

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 この放送局のコンプライアンス意識はどうなっているのか。

 10月16日、突如、夕方の報道番組「スーパーJチャンネル」(SJ)で仕込み、有り体に言えば"やらせ"演出があったことを白状したテレビ朝日。自ら会見を開いたことで、これまで再三再四メディアで叩かれてきた、その不祥事体質と隠蔽癖への反省からとも思われたが、然に非ず。情報提供者からテレ朝に課された"デッドライン"に慄いた末の公表という、何とも後ろ向きの判断だった。

 とはいえ、SJでのやらせ問題では、曲がりなりにも、早河洋会長以下の処分が決定された。そこで翻って思い起こされるのが、8月末に発覚した看板報道番組「報道ステーション」チーフプロデューサー(CP)による番組スタッフを襲った鬼畜の如き"セクハラ事件"。しかし、この事件では当事者のCP以外には処分が下されておらず、経営幹部の責任は依然果たされていない。こうした処分の軽重にも、テレ朝局内の倒錯した力学が反映されていると言える。

 そこで小誌「ZAITEN」では急遽、同問題についてのウェブ限定記事を公開する。寄稿は、これまでのテレ朝追及記事を手掛けてきたジャーナリスト・濱田博和氏である。

 なお、下記URLの通り、小誌ブログではテレ朝関連記事を無料公開しています。こちらもぜひともご覧ください。

・【9月4日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(1)

・【9月5日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)

・【9月7日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(3)

・【9月9日公開】
テレビ朝日「報ステ」セクハラに沈黙する早河会長

・【9月12日公開】
テレビ朝日・政治記者の知られざる実像

・【9月30日公開】
テレビ朝日・報道ステーション「参院選報道お蔵入り」の深層

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 看板報道番組『報道ステーション』チーフプロデューサー(CP、当時)の桐永洋による10数人の女性スタッフらへのセクハラや、平日昼間の情報番組『大下容子 ワイド!スクランブル』CP(同)の小林雄高によるパワハラなど、幹部社員の問題行動が続発するテレビ朝日で10月16日、今度は平日夕方の報道番組『スーパーJチャンネル』(SJ)の曜日企画コーナーで不適切な「仕込み」演出が発覚した。

 同日会見した報道局担当常務の篠塚浩と広報局長の長田明は「仕込み、やらせと言われても否定できない。当社の番組に対する信用を著しく毀損する重大な問題」と謝罪。会長兼CEO(最高経営責任者)の早河洋と、放送当時社長だった取締役の角南源五が報酬の10%、篠塚が同20%を1カ月返上するほか、報道局長の宮川晶が10日間の懲戒停職となる処分も公表した。

 だが、テレ朝社内では「確かにSJは報道番組だが、問題のコーナーは、業務請負契約に基づいて子会社の『テレビ朝日映像』(ViVia、村尾尚子社長)などに丸投げされた一種の"ワイドショー"枠。真実を伝えるべきニュース枠で起きた問題とはまるで重大性が異なる。それをあれほどの大事にして早河会長らの処分を発表しているのに、桐永の悪質なセクハラなど、相次ぐ社員の不祥事に経営陣が誰一人責任を取ろうとしないのでは辻褄が合わない」との不満が噴出している。

担当ディレクターは現役映画監督

 SJの17時台の曜日企画コーナー(17時36~53分、一部地域を除く)で不適切な演出が行われたのは、3月15日(金)放送の「業務用スーパーの意外な利用法」。この枠はViViaが親会社のテレ朝から請け負い、2017年2月から不定期で放送されているという。この日はディレクターが「業務スーパー東新宿店」を定点観測し、珍しい買い物をしている個人客の意外な理由を紹介するというものだった。

 この企画を18年3月から担当していたのが、Oという49歳の社外ディレクターだ。テレビ局などのメディア関連会社に人材を派遣する「クリーク・アンド・リバー」(東京都港区)からViViaに派遣され、今回を含めて13本を手掛けていた。問題の企画は2月27日から3月5日にかけて、Oが一人で取材していた。

 会見で「映画監督の経験があり、俳優養成学校の講師を兼任していた」と説明されたOの名前を検索エンジンに入力すると、ウィキペディアに掲載されている肩書は「日本の映画監督・映画プロデューサー・脚本家・漫画原作者。都内の映画専門学校(注:ウィキペディア上は実名)や女子大(同)の非常勤講師も務める。日本映画監督協会会員」。CMなどの監督を経て00年6月に映画監督デビューし、これまでに6作品を監督している。「自分のやりたいものを撮る」ことにこだわる「異端な若手映画監督」と紹介されているものの、「ドキュメンタリー作家」との表記はない。要するに面白い映像作品をつくろうとこだわる、生粋の「映画監督」なのだ。

 さて、問題の業務用スーパー企画に登場するのは(1)大量の焼きそば麺を購入する47歳の主婦、(2)8歳と5歳の子どもに"はじめてのおつかい"をさせる36歳のシングルマザー、(3)1キログラム入りのポテトマカロニサラダ2袋を購入した47歳のアルバイト男性、(4)歌手になる夢を持ち、冷凍と生のブロッコリーを大量購入してダイエットに励む28歳の女性――という4人のケース。(3)の男性と絡む女性を合わせると登場人物は5人に上るが、うち4人が俳優養成学校でのOの生徒で、1人はOの知人。つまり全員がOの知り合いという、典型的な仕込み演出だった。

 今回の仕込み演出に関して、テレ朝は10月4日に匿名で情報が提供されたことを明らかにした。だが同社関係者によると、情報提供者から「10月15日までに何らかの措置を取らなければ、しかるべき対応を取る」とデッドラインを設定されたため、大わらわでO本人の事情聴取を含む内部調査が行われ、デッドラインから1日遅れの16日に何とか緊急会見に漕ぎ着けるドタバタぶりだった。

どう見てもシナリオ通りの演技

 テレ朝の聴取に応じたOは「知人でありながら初対面を装った」ことを認める一方、「撮影日は教えたが、ロケ内容の打ち合わせも、現場での指示もしていない」などと弁明したという。本当にそうなのだろうか。

 例えば(3)の男性の場合、以前このサラダを食べた直後に恋人ができる幸運に恵まれたため、購入したサラダを験担ぎで食べたあと、上野駅で職場の同僚女性に交際を申し込んで断られる。カメラはそのシーンを隠し撮りで収めており、その後、男性は「コスパのいい、おいしいもの(注:サラダのこと)を食べられたので、それでいいです」などと、商品を不自然に賛美しているのだ。会見後にこの映像を改めて確認したというテレ朝関係者が笑いながら話す。

「実際の取材現場で、ここまで"よくできた話"に遭遇する機会など、およそあり得ない。Oの知人の男女2人がシナリオに従って演技し、それをOが偶然を装って撮影したと考えた方がはるかに現実的です。Oは本職の映画監督で、登場した5人のうち4人は俳優養成学校の生徒。ストーリーのつくり込みには何の抵抗もないはずです」

 また、(2)の女性も業務用スーパーを選んだ理由について「自分は常連客で子どもが店に慣れており、買い間違いが起きても低価格なので腹が立たない」と説明しており、どことなく宣伝臭が漂う。前出のテレ朝関係者は、このケースについても呆れ顔で話す。

「撮影は母親が店外で子どもに指示を与えるところから始まり、カメラが店内に入る子どもの後を付いて行きます。本当の取材だったら、店内で買い物をしている子ども2人に気づいたOが子どもに声を掛け、それから店外で待つ母親に取材を依頼する流れになるはず。これもOのシナリオに基づく演技以外の何物でもないでしょう」

 Oは事情聴取に「登場した5人と業務用スーパーに謝礼は支払っていない」と答えたとされるが、果たして本当なのだろうか。

桐永・報ステ前CP処分時とは雲泥の差

 放送前にこの企画を3度プレビューしたというViViaチーフディレクター、同プロデューサー、SJのテレ朝デスク、同プロデューサーはいずれも演出を不適切と認識しなかった。過剰演出や仕込みなどをしていないか自己申告するチェックシートや、番組が義務付けている取材対象者の顔写真・名前・連絡先も提出されていたことから、Oの企画は何の疑念も持たれないまま放送された。テレ朝報道局幹部が真相を語る。

「実は3月の放送終了後間もなく、報道局内で『あのVTR、おかしくなかったか?』と疑う声が上がり、Oの事情聴取も行われましたが、本人が否定したため、沙汰止みになりました。確かにSJ自体は報道番組ですが、あの企画枠はViViaに丸投げの上、ごく限られた関係スタッフがニューススタッフの作業スペースに顔を出す機会もないので、局内では報道の企画とは見做されておらず、オンエアを真剣に見ている報道局員もほとんどいません。会見でも『この企画は報道枠ではないのでは』と的を射た質問が繰り返されましたが、篠塚常務らはなぜか報道枠であるとの主張を崩しませんでした」

 Oは事情聴取に対して「思うように取材ができず、自信がなくなっていた。(生徒らに)明確な指示を出していなければ良いのでは、と都合よく解釈した」と釈明したが、テレ朝社内では「会見の内容だけで終わらないのでは」との見方が強い。大手広告代理店からも「スポンサーに対する説明が必要だが、会見で話した以上の内容が後から出ると、スポンサーの信用を失いかねない」と懸念の声が上がったという。テレ朝幹部が表情を曇らせて話す。

「生粋の映画監督であるOが制作した企画を、報道番組のSJで放送すること自体、チェック体制の甘さを指摘されても仕方がない。あの枠は所詮、報道局内では報道枠とは認識されておらず、番組幹部によるチェックもおざなりになっていたのではないか。あの枠は視聴率獲得が至上命題で、Oに対するプレッシャーは厳しかったはず。ストレスに耐えかねて、映画の感覚で撮影したのでしょう。SJ金曜17時台の企画枠は打ち切られ、今後はOが担当した別の企画に問題がなかったのか検証されるようですが、歌舞伎町潜入ものなども担当しているので、仕込みが常態化していたのではないかと心配です」

 この問題を受けて、テレ朝では前述した早河らの処分のほか、ViVia社長の村尾が報酬返上、同社常務の青木吾朗が報酬返上の上、制作局担当を離れ、両社の関係者にも処分が下されるという。

 報ステCP(当時)という幹部社員の桐永が8月末、同番組に出演している局アナの森葉子や、同番組の女性スタッフら合わせて10数人にセクハラ行為を働きながら(桐永自身は3日間の謹慎とBS朝日への出向)、早河や篠塚、それに宮川には何のお咎めもなかった事態に比べると、文字通り「雲泥の差」である。

「今回の対応はどう見ても、情報提供者の"恫喝"に恐れをなした経営幹部の過剰反応。しかもOディレクターは人材派遣会社から子会社のViViaに派遣された外部の人間に過ぎない。それに比べて幹部社員の桐永のセクハラ行為は、強制猥褻罪に問われかねない悪質なレベル。桐永に対する軽すぎる処分や、桐永を報ステCPに任命した責任のある早河会長に対する不満は、今も報ステ内で燻っていると言われます」(テレ朝元幹部)

 いずれにしても相変わらず問題山積のテレ朝報道局。局長の宮川が同局員宛てメールで強調した「テレビ朝日報道の信頼回復」の道程は容易なことではなさそうだ。(敬称略)

 桐永CPのセクハラ事件を受け、早河会長の肝いりで「ハラスメント問題対策会議」が立ち上げられたというが、それ以前に求められるのが、経営陣の処分と事実の追究であることは言うまでもない。その一助たるべく、小誌は2019年11月号掲載の《報ステセクハラCP「情実処分」の舞台裏》記事を近日、本ブログで公開する予定である。

テレビ朝日・報道ステーション「参院選報道お蔵入り」の深層

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「残念。極めて重く受け止めている」――。テレビ朝日の早河洋会長兼CEO(最高経営責任者)は9月24日の定例会見で、同局の看板報道番組「報道ステーション」のチーフプロデューサー(CP)、桐永洋氏(現在、CPは更迭。BS朝日に出向)が引き起こした"セクハラ事件"について初めて言及した。加えて、再発防止策として社内に「ハラスメント対策会議」を設置、早河会長直々に議長に就任したという。

とはいえ、これまで週刊誌の取材に対し、自宅でゴルフの素振り中のところを直撃されても無視(週刊新潮9月12日号)、自宅にベタ付けした社用車に乗り込むところを記者に直撃されても黙殺(写真週刊誌「フラッシュ」9月17日号)で、臨んできた早河会長。週刊誌等の各メディアが取材に動き始めて早1カ月が経とうかという時期になってようやく、最高実力者の肉声が発せられたということ自体に、テレ朝におけるハラスメント対策の本気度が窺い知れる。

加えて、明日10月1日発売の小誌「ZAITEN」11月号でも報じている通り、報ステスタッフをはじめ、テレ朝内部でもセクハラ事件の詳細な事情説明は行われていない。早河ハラスメント対策議長がどのような施策を持ち合わせているのかは知る由もないが、少なくとも社内において"事件"に関する認識を共有することが、ハラスメント撲滅の第一歩のはずだ。

"共通認識"で言うと、今回の桐永CPによる鬼畜の如きセクハラ行為の告発を巡っては、報ステ番組内部の"権力抗争"に原因を求める背景説明が週刊文春をはじめ、一部メディアによって流布されている。曰く、「(桐永CPが進めた報ステのワイドショー化が)硬派なディレクターらと桐永氏の軋轢を深めた」(週刊文春9月12日号)。それ故、"反桐永"の女性スタッフが中心となって桐永CPのハラスメント行為を殊更に騒ぎ立て、追放を画策。そして、7月17日の報ステにおける参院選報道の"ドタキャン"騒動が、その直接的な引き金になった――という構図である。

このドタキャン騒動とは、参院選静岡選挙区において、国民民主党候補の榛葉(しんば)賀津也氏と立憲民主党の徳川家広氏の野党両党の候補者が2位での当選を巡って激戦を繰り広げる中、菅義偉官房長官が国民・榛葉氏への協力を要請していたという安倍官邸の関与を窺わせる疑惑について、7月17日の報ステは新聞のテレビ欄において〈"大物が続々応援"激しい駆け引き......静岡選挙区〉と銘打ち、報道を予告にしていたにもかかわらず、突如、桐永CPの指示でニュースがお蔵入りになってしまったことを指す。つまり、静岡選挙区の報道を取り止めた桐永CPに硬派とされるスタッフが造反した結果、セクハラ事件が炎上したと臭わせているのである。事実、週刊文春の同レポートでは......

・桐永氏は選挙特別番組「選挙ステーション」にかかりきりで、同日の報ステの内容は、後任CPとなった鈴木大介プロデューサーに任せきりだった。

・「公平な選挙報道が求められる中、全国放送の報ステが投開票直前にあえて静岡を取り上げ、しかも、官邸の関与に焦点をあてれば偏って見える」などということで、報道をお蔵入りにした。

・放送終了後の反省会で、桐永CPは「(選挙報道の基本を記した)ハンドブックを読み、選挙報道の勉強会にも出てれば、こんな原稿を書けるわけない。こんな放送をしていたら間違いなく訴えらえる。BPO(放送倫理・番組向上機構)案件になったら番組が終わるんだよ。僕はこの番組の責任者として、中小企業の社長のオヤジとして、みんなを路頭に迷わせるわけにはいかない」などと発言した。

文春記事は、7月頭のセクハラ告発と同月17日のドタキャン騒動は〈時系列が矛盾する〉と指摘するものの、これら桐永CPを擁護するかのようなテレ朝幹部の発言やエピソードについては、まさに笑止千万なフェイクニュース。他方、小誌は文春に先立つ9月1日発売の10月号において同騒動の詳細を取り上げている。まずは、当該レポート《テレビ朝日・報ステCP「官邸忖度」の咆哮》(ジャーナリスト・濱田博和氏寄稿)を無料公開したので、お読み頂きたい。これがドタキャン騒動の真実である。

なお、下記URLの通り、小誌ブログではテレ朝関連記事を無料公開しています。こちらもぜひともご覧ください。

・【9月4日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(1)

・【9月5日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)

・【9月7日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(3)

・【9月9日公開】
テレビ朝日「報ステ」セクハラに沈黙する早河会長

・【9月12日公開】
テレビ朝日・政治記者の知られざる実像

20190717hstation_kirinaga.jpg7月17日の「報ステ」のテレビ欄と桐永洋氏(写真はマイナビニュースサイトより)
(19年10月号掲載写真より)


 この民放局を報道機関と見做すのは、もはや悪い冗談なのかも知れない。ほんの数年前まで「権力に物申すテレビ局」と期待されていたテレビ朝日のことだ。小誌は今年6月号で、安倍晋三・自民党政権の走狗と化した同社報道局政治部の実情を伝えたが、今回は看板報道番組『報道ステーション』で7月17日に起きた、安倍官邸に対する〝忖度劇〟など、報道機関にあるまじきその実態を報告する。

 報ステの忖度劇の主役は、テレ朝の〝ドン〟と称される会長兼CEO(最高経営責任者)の早河洋(75)から直々に抜擢された同番組チーフプロデューサー(CP)の桐永洋(49)。硬派だった報ステのワイドショー化を恥ずかしげもなく進めてきたA級戦犯だ。

 事の発端は、時事通信が参院選投票日10日前の7月11日午後に配信した「立憲が国民に『刺客』=官邸参戦で対立激化−静岡」と題する、参院選静岡選挙区の情勢分析記事だった。

静岡選挙区に安倍官邸が介入

 改選数2の「2人区」の中で唯一、立憲民主党と国民民主党が競合する形となった同選挙区は、立憲候補の徳川家広が国民現職で同党参院幹事長の榛葉賀津也の追い落としを図る格好に。榛葉はかねてから自民党参院幹部と親交が深く、「ほぼ自民」と目されていたが、時事通信によると、今回の選挙では何と、安倍官邸が苦戦する榛葉のテコ入れに動いていた。

 その裏付けとして時事通信は、(1)安倍が6月、自民党静岡県連関係者に「立憲民主が当選したら困るよね」と問い掛けた事実、(2)榛葉と親しい官房長官の菅義偉が、企業や公明党の支持母体・創価学会に榛葉支持を働き掛けたとする複数の証言、(3)菅の動きを察知した徳川陣営関係者が「公明が怪しい動きをしている」と警戒を強めている事実――などの取材結果を挙げた上で、こう結論付けた。

「(憲法改正に拘る)安倍は、参院選後も自公や日本維新の会などの改憲勢力で発議に必要な3分の2を維持することが難しいと認めている。このため新たな改憲勢力を求めており、榛葉は格好のターゲットと映っているとみられる」

 するとその2日後の13日、地元の静岡新聞が朝刊1面トップで「野党激突に『不思議』な動き、官邸介入か」と報じる。自民党を支援してきた自動車大手、スズキ会長の鈴木修が疎遠のはずの榛葉支援を表明したことや、他の県内企業や団体の一部も榛葉の支援に回ったことを報道。「首相官邸からの依頼だ」との自民党関係者の証言を引いて、「榛葉に恩を売って改憲への協力を得る狙い」と言明した。

 さらにその2日後の15日、今度はテレ朝系列の静岡朝日テレビ(SATV)が夕方の報道番組『とびっきり!しずおか』で、「〝官邸参戦?〟静岡に異変」と銘打った約9分間のVTRを放送。榛葉支援を表明する鈴木の映像や、菅が関係者に電話で「榛葉氏を落とすわけにいかない。助けてやって欲しい」と直接要請してきたことなど、官邸介入の事実を強く窺わせた。ただ、榛葉本人が支援要請自体を否定する映像や、国民の前原誠司が「自民党が(榛葉に)手を差し伸べることはありえない」と話す映像も差し込み、バランスに配慮した完成度の高い構成になっていた。

 静岡選挙区を巡るこうした一連の報道、中でもSATVのVTRに飛びついたのが、キー局の報ステのデスクで政治部出身の梶川幸司だ。21日の投開票日夜の『選挙ステーション2019』のプロデューサーを兼任し系列局の選挙報道を閲覧できる立場の梶川は、このVTRを「このまま報ステで使える」と判断。映像素材と構成原稿をSATVから取り寄せることにし、CPの桐永の了解を得た。

 さらに梶川らは一連の報道について、政治部の官邸担当記者が翌16日午前の定例会見で菅に真偽を直接尋ねるよう、政治部デスクに要請した。官邸からのクレームに備えての発想だ。会見で「静岡選挙区で、選挙後の協力を見据えて、官邸が国民の榛葉候補への支援を行うよう、各所に要請しているという地元報道があるが」と尋ねられた菅は、「そうした事実関係はありません」と素っ気なく答え、次の質問に移ったという。

 SATVの取材が行き届いていたこともあり、菅のコメントを確認した梶川らは、翌17日の特集枠でこのネタを放送できると判断、番組に関する決定権を握る桐永の了承を得た。特集枠の担当ディレクターも16日中に決定。同日夜には17日付朝刊のラジオ・テレビ番組欄に載せる、この特集の見出しが決まった。「〝大物が続々応援〟激しい駆け引き...静岡選挙区」。これも桐永の了承済みであることは言を俟たない。

こんなの放送できるわけない!

 さて、放送当日の17日。担当ディレクターは、SATVから伝送された映像素材や前日の菅の会見映像、それにSATVの構成原稿をベースに、報ステで放送するVTRの構成原稿を執筆した。VTRの尺(長さ)は約6分だった。

 報ステでは毎日午後3時と5時、その日の放送内容に関するミーティングが行われる。前者では桐永と梶川ら番組デスク、後者ではこれに各ニュースの担当ディレクターとMCの徳永有美、富川悠太が加わり、各ニュースの取り上げ方や演出方法などについて打ち合わせる。複数の報ステ関係者は「この席で、参院選静岡選挙区の特集の内容修正を求めるような意見は特に出なかった」と口を揃える。

 ところが午後7時ごろ、状況が一変する。約3時間後の放送を前に、30人前後のスタッフが忙しく準備を進めている本社4階のニュースルーム。そこに血相を変えて駆け込んで来た桐永が、特集を担当したディレクターを名指しして「こんなの、放送できるわけがないだろ!」と怒鳴り散らしたのだ。報ステ関係者が内幕を語る。

「報ステをはじめ番組のディレクターが執筆したニュース原稿は、政治部や社会部など出稿部の担当記者が内容をチェックする決まりです。静岡選挙区の構成原稿は首相官邸が絡む話なので、政治部の官邸記者クラブの吉野(真太郎)キャップが確認しますが、何しろ安倍官邸ベッタリで有名ですから、あの時間帯なら、原稿内容について否定的な意見を付けてきても不思議はありません」

 その1時間後の午後8時すぎ、ニュースルームに「選挙のVを飛ばします」とのアナウンスが流れ、特集VTRは幻となった。別の報ステ関係者が明かす。

「コメンテーターの後藤謙次氏が、8時からのデスクとの打ち合わせの際に『この件では官邸が大変ナーバスになっている』と話したというのです。『放送はやめるべきだ』との意図はなかったと思いますが、元共同通信社編集局長で敏腕政治記者である後藤氏の情報なので、官邸の機嫌を損ねる報道は差し控えることが最重要課題の桐永CPはビビッて、お得意の忖度を働かせた。報ステからの依頼で送った、完成度の高いVTRを反故にされたSATVの担当ディレクターは、放送取り止めに激怒したそうです」

 約6分の特集VTRを飛ばした穴は結局、用意していた別のVTRの放送や、スタジオ演出の時間を少しずつ伸ばすことで対応。ラテ欄に掲載した予告内容を番組側の都合で変更したため、番組の最後に「番組の内容を一部変更しました」とのテロップが流された。

私は正しいことをしている!

 番組終了後のスタッフルームで開かれた恒例の反省会で、桐永は「何でこんなネタを持ってくるんだ! こんなの放送していたらBPO(放送倫理・番組向上機構)案件だ! 担当ディレクターは猛省してもらいたい」などと一人荒れ狂った。その言い草に呆れ果てたというスタッフの一人が話す。

「梶川デスクの提案を承認したのも、ラテ欄の文章を決めたのも、放送当日の2度にわたる打ち合わせで何ら疑義を挟まなかったのも、すべて桐永CP自身。そもそも担当ディレクターはネタを振られただけで、この特集の発案者でもない。それにこのネタがなぜBPO案件になるのか? 菅長官のコメントはあるし、SATVの取材も周到に尽くされている。猛省すべきなのは、土壇場で保身に転じた桐永CP自身のはずです」

 ちなみに反省会で桐永は、このニュースを放送するよう提案した梶川を咎めることはなく、一方、桐永に晒し物にされた担当ディレクターを梶川が庇うこともなかった。担当は制作会社から派遣された中堅の有能な女性で、桐永らの態度はテレビ局に典型的な「下請けいじめ」以外の何物でもない。

 また同じ7月17日の報ステでは、NHKが放送直前に報じた「ジャニーズ事務所が元SMAPメンバーの3人を出演させないよう民放局に圧力をかけていた疑いがあるとして、公正取引委員会が同事務所に注意した」との特ダネを、意図的に後追いしなかった。

「視聴率万年4位の時代が長かったテレ朝には、ジャニーズのタレントに出演してもらえなかった苦い過去があり、そのネガティブ情報を伝えることに関しては、他の民放局よりもはるかに臆病です。この日もNHKが報じたあと、報道局の記者が迅速に裏を取り、原稿を書き終えていたにもかかわらず、総合編成局から『後追いの必要なし』との指示が出され、桐永CPは何ら抵抗することなくこれに従いました」(テレ朝関係者)

 これらの〝事件〟から5日後の22日、報道フロアの幹部席で報道番組センター長の佐々木毅と言い争う桐永の姿があった。桐永は「私は正しいことをしているだけだ!」と声を荒げていたが、テレ朝の報道姿勢を貶めた張本人はいったい何を主張していたのか。

 こうした報ステの報道姿勢について、テレ朝広報部は「特に(小誌の取材に対し)お答えすることはない」と回答した。報ステCP就任から1年が過ぎ、桐永の「忖度病」はいよいよ病膏肓に入ったようだ。(敬称略。年齢等の表記は発売当時のまま)

なお、小誌の取材では、桐永氏が「選挙ステーション」にかかりきりになっていた事実がなかったことはおろか、参院選報道の取り止めについて「中小企業の社長のオヤジとして、みんなを路頭に迷わせるわけにはいかない」など、桐永氏が"浪花節"の発言をしたなどという美談調のエピソードも一切なかったことが確認できた。

少し調べれば簡単にバレてしまう嘘を臆面もなく口にできるという、桐永氏の早稲田大学雄弁会仕込みのセルフプロデュース能力については、小誌がこれまで言及してきた通りである。ハラスメント撲滅を掲げるテレ朝にまずもって求められるのは、正しい情報と認識の共有である。"笛吹き男"に騙されてはならない。

テレビ朝日・政治記者の知られざる実像

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《聞き取りで浮上 報道ステーション「セクハラ横行」の疑い》――。本日発売の「週刊文春」(9月19日号)で再び報じられたテレビ朝日の報道番組「報道ステーション」の男性番組スタッフによる複数のハラスメント疑惑。「魚は頭から腐る」というが、番組の最高責任者である桐永洋チーフプロデューサー(CP。現在更迭)からして、出演する女性アナウンサーに対する"キス・セクハラ"に手を染めていたのだから、麾下にあるデスク他、番組の男性スタッフの度し難いモラルハザードは推して知るべしと言える。

ただ、セクハラがバラエティなどの娯楽番組で罷り通ってもよいとは言わないが、こと、清廉性が求められる報道番組において、そのような野獣の所業が横行していたとなると、事情は大いに違ってくる。果たして、今後、報ステはセクハラ問題を真正面から報じることが出来るのか。それどころか、局面次第では時の政権との対決も余儀なくされるはずの報道番組が、そのような破廉恥行為で足元を掬われることの社会的損失はあまりに大きい。

しかし、テレ朝の報道部門はその清廉性を自ら放棄しようとしているようなのである。これまでの報ステ関連記事に加え、今回は小誌「ZAITEN」2019年6月号(同5月1日発売)で報じた《安倍官邸に踊る「テレ朝」政治記者の倫理観》(ジャーナリスト・濱田博和氏寄稿)を無料公開したい。安倍政権中枢の菅義偉官房長官、今井尚哉首相秘書官(当時、9月11日の内閣改造で首相補佐官を兼務)に接近、"走狗"ぶりを見せるテレ朝政治部記者の振る舞いを描いた同レポートは、永田町界隈で大いに注目を集めたが、果たして、公共の電波を預かるテレ朝の報道姿勢は大丈夫なのか......。

なお、下記URLの通り、小誌ブログではテレ朝関連記事を無料公開しています。こちらもぜひともご覧ください。

・【9月4日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(1)

・【9月5日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)

・【9月7日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(3)

・【9月9日公開】
テレビ朝日「報ステ」セクハラに沈黙する早河会長

1906tvasahi_imai_suga.jpg今井尚哉首相秘書官と菅義偉官房長官
(「ZAITEN」19年6月号掲載写真)

 令和おじさん――。新元号「令和」を発表した安倍晋三・自民党政権の官房長官、菅義偉は今、若い世代からこんな愛称で呼ばれているのだそうだ。だがその素顔は、学校法人の森友学園と加計学園を巡る一連の問題、さらには閣僚の不適切発言などに対するメディアの追及を巧妙にかわし、定例会見で厳しい質問を連発する東京新聞社会部記者の望月衣塑子を「あなたに答える必要はない」と突っ撥ねる、厚顔無恥な第2次安倍政権の〝防波堤〟である。全国紙の政治部記者が解説する。

「政権のスポークスマンを務める菅長官は、テレビの影響力の大きさを熟知しています。朝食会では、5時半起きで新聞とテレビをチェックした秘書官から報告を受け、テレビに出ているコメンテーターらと連日会食する。その際は『先生のおっしゃる通りです』などと下手に出てプライドをくすぐるので、コメンテーターらも悪い気はしない。メディア支配の手法が実に巧妙なんです」

 この菅とともにメディア支配の役割を担うのが、第1次政権時代からの「安倍の懐刀」政務担当の首相秘書官、今井尚哉。NHK解説委員の岩田明子ら、お気に入りの記者を露骨に贔屓する一方、意に染まない番記者を恫喝や無視。優等生揃いの番記者は怖気づき、今井の掌の上で踊る。菅とは一味違う「恐怖による支配」である。

「育ちの良い安倍首相と、キャリア官僚の今井秘書官は、学歴が高く礼儀正しい記者がお気に入り。逆に地方議員からの叩き上げで苦労人の菅長官は、エリート臭の強い記者や女性記者がNG。『特定の女性記者に甘い』と指弾されないよう用心しているのです。さすがに官邸クラブから不満が上がり、最近は各社の女性記者が菅長官を囲む会合が持たれるようになりました」(前出の政治部記者)

安倍シンパのテレ朝記者

 こうした第2次安倍政権が支配を目論んだメディアのひとつが、1985年10月の『ニュースステーション』(Nステ)放送開始以来、一貫して歴代自民党政権に批判的な論調を展開してきたテレビ朝日と、Nステの後継番組『報道ステーション』(報ステ)だ。Nステや報ステのシニカルな報道姿勢や、報道局長(当時)の椿貞良の「『何でもよいから反自民の連立政権を成立させること』を狙って局内をまとめていた」との発言が波紋を広げた椿事件(93年)などが原因で、自民党政権とテレ朝との関係は長年冷え切っていた。

 安倍政権はそうした状況を打開し、仇敵の報ステを骨抜きにしようと目論む。それにはテレ朝政治部内にシンパを作るのが何より手っ取り早い。その対象になったが、第1次政権下(2006年9月~07年8月)で内閣記者会(官邸記者クラブ)に配属されていた吉野真太郎だった。

 79年生まれの吉野は久留米大学附設高校(福岡県)、東大経済学部を卒業して03年4月にテレ朝に入社した学歴エリート。入社当初は報道情報局社会部で警視庁記者クラブに所属したが、わずか1年で政治部に。10年7月に報ステに異動するまでの6年間を官邸クラブで過ごした。吉野を知る他の民放キー局の政治部記者が語る。

「吉野は政治部記者としてではなく、一個人として安倍さんの熱狂的なファンなのです。07年9月に安倍さんが参院選の敗北や体調悪化を受けて政権を投げ出したあと、吉野は高尾山の登山に同行するなどして、親交を欠かしませんでした。報ステ異動後の吉野が11年に結婚した際、安倍さんは『吉野君は私が最も信頼するテレ朝の記者』というビデオメッセージを送った。吉野がそれを披露宴で自慢げに流したことで、政治部記者の間で話題となり、顰蹙を買っていました」

 12年12月の第2次安倍政権誕生に伴い、吉野は翌13年7月にめでたく政治部に復帰、再び官邸クラブに所属して現在に至る。大手メディアは、特定の相手との癒着関係を防ぐため、長くても3年で担当替えするのが不文律だ。ところが吉野の官邸クラブ在籍期間は前後11年9カ月に及び、昨年7月からはキャップとして5人の部下を統轄する。そのうちの一人で内閣府特命担当大臣の片山さつきらを担当していたのが、同僚の夫がありながら、週刊誌にNHK記者との〝禁断愛〟を報じられた元局アナの村上祐子。全国紙の政治部デスクは驚きを隠さない。

「自民党担当の平河クラブや野党クラブを一度も担当せず、中央官庁で政策取材の経験もない政治部記者が、官邸クラブのキャップになるなど、通常はあり得ない。吉野と安倍政権との親密さは永田町界隈では周知の事実だが、それを放置しているテレ朝政治部の堕落ぶりは醜悪と呼ぶ他ありません」

報道局内のアンタッチャブル

 今井の方から吉野に「総理の報ステ出演はどうだ?」などと持ち掛け、意を汲んだ吉野が報ステと交渉することもあるという。その姿は〝官邸の走狗〟そのものだ。さらに、報ステスタッフ作成の政権関連原稿は吉野がチェックすることになっているのだが、官邸クラブ関係者によると、なぜか、その内容が官邸側に漏れているとの疑念まで燻っているという。

 とはいえ、今井が吉野に特ダネを提供するわけではない。前出の政治部デスクが解説する。

「メディアとしての〝格〟を重視する今井秘書官は、テレ朝に特ダネを与えるような真似はしないが、吉野が他社の特ダネを後追いする際は、優先的に裏取りさせています。自民党政権から相手にされない時代が長かったテレ朝政治部にとっては、自力でスムーズに後追いできること自体、画期的。今井秘書官に利用されているのが見え見えとはいえ、吉野を替えようにも替えられないようです」

 こうした吉野の傍若無人ぶりを如実に示す出来事が、17年4月に報じられている。『週刊ポスト』によると、今井番だった吉野は同年1月、今井の不興を買っている朝日新聞記者を大手紙記者とともに呼び出し、「君が(夜回り取材に)来ると今井さんが対応してくれないから、もう来ないでくれる? その代わり(今井氏とのやり取りを記した)メモは回すからさ」などと要請したという。

 そしてその後、件の朝日の記者は今井番を外れた。記事中では「テレビ局の番記者」と名前が伏せられたが、事態を把握したテレ朝のコンプライアンス関連部署は吉野を注意。それでも政治部が吉野を官邸クラブから外すことはなく、逆にキャップに昇格させた。

 また昨年10月半ば、内閣府特命担当大臣の片山の国税庁への口利き疑惑を『週刊文春』が報じた際、報道番組から片山の直撃取材を依頼された吉野は「片山番は担当になったばかりで、朝から追い掛け回すと信頼関係を築けない」として当初はこれを拒否。テレ朝1社だけ直撃映像が存在しない「特落ち」になりかけたが、安倍政権に対する吉野の忖度を叱責する声は上がらなかった。ちなみに、この片山番は前述した元局アナの村上。吉野は彼女に対しても、何かしら忖度する理由があったのか。

 さらに読売新聞が昨年10月14日、「安倍首相が19年10月の消費税率引き上げを予定通り実施する方針を固め、15日の臨時閣議で表明して増税の影響を和らげる対策の検討を指示する」と報じた際も、吉野は「引き上げは既定路線」と後追いを拒否した。他社は揃って後追いしたが、テレ朝関係者によると、この時も吉野が叱責されることはなかったという。

 17年5月24日に行われた安倍とテレ朝会長兼CEO(最高経営責任者)の早河洋との会食にも、吉野は取締役報道局長(当時)の篠塚浩や政治部長の伊井忠義とともに陪席した。前出のテレ朝関係者は「政治部だけでなく報道局全体のアンタッチャブル的な存在となった吉野は、政治部デスクを『紙屑さん』と公言して憚らない。増長の極み」と嘆息する。

菅ファミリーの記者も存在

 そしてテレ朝政治部にはもう一人、安倍政権の〝走狗〟が存在する。吉野と同期の03年入社で、昨年7月から平河クラブキャップを務める小西弘哲。13年7月に官邸クラブの菅番を終えたあと、ワイドショー『モーニングバード』(現・羽鳥慎一モーニングショー)のスタッフ時代に娶った姉さん女房は何と、菅の横浜市議時代(87~96年)から付き従ってきた最側近の私設秘書だった。番記者の小西が菅事務所に出入りしているうちに関係を深めたという。

 自民党所属の元大阪府議を父に持つ小西は、兵庫県の灘校を卒業して同志社大経済学部に進学。お笑い番組の制作を志してテレ朝に入社すると、バラエティ番組担当の編成制作局制作1部に配属されたが、07年7月に報道局社会部に異動、司法記者クラブや横浜支局に所属した。11年7月から2年間は政治部で野党クラブや官邸クラブを担当、4年間のワイドショーのスタッフのあと、17年7月に政治部に復帰した。小西を知る他の民放キー局の政治部記者が語る。

「お調子者で大の競馬好きですが、菅長官は優等生タイプの記者を好まず、何より安倍政権が取り込みを目論むテレ朝政治部の記者。長年付き従ってくれた女性秘書が結婚を望めば、止める理由はありません。『小西の前で安倍政権批判はタブー。たちどころに菅長官に伝わる』というのが、昨今の政治部記者の常識です」

 安倍と今井の後ろ盾を持つ吉野と、ポスト安倍の有力候補に躍り出た菅と家族同然の付き合いをする小西。部長の伊井さえ、もはや2人には何も言えない。舵取りを失ったテレ朝政治部は、小西の部下へのパワハラも相俟って危機的状況にあるという。安倍政権のテレ朝対策は、当初の期待を上回る成果を挙げたようだ。

 なおテレ朝は、報道番組の内容の官邸への漏出などは事実無根で、不適切な取材はしていない旨回答した。(敬称略。年齢等の表記は発売当時のまま)

190912tvasahi_shincho_suga.JPG令和おじさんの脇で仁王立ちの小西記者
(「週刊新潮」19年4月25日号記事より)

菅、今井の両氏が共に影響力を盤石にした安倍政権の内閣改造に、最も安堵しているのは、彼ら政治部記者たちなのだろう。永田町劇場の舞台裏をどれだけの国民が知っているのだろうか。

なお、テレ朝側は上記レポート掲載の「ZAITEN」19年6月号発売後に、従業員に対する名誉棄損および侮辱行為とした上で、官邸側に情報が漏れていることはない、特定の個人・団体の意向によって報道が左右されている事実は一切ないなどといった内容の「警告書」を小誌編集部に寄せている。
加えて蛇足ながら、テレビ朝日は報ステ番組サイト内で「週刊誌報道等について」と題した声明を出している。しかし、一般には気づき難いと思われるので、以下にサイトURLを告知させて頂く。

https://www.tv-asahi.co.jp/hst/contents/info/0007/index.html

テレビ朝日「報ステ」セクハラに沈黙する早河会長

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《自宅を訪ねると、ゴルフのドライバーを手に素振り中。しかし、こちらの問いかけには一切応じることがなかったのである》――。テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」の桐永洋チーフプロデューサー(CP、現在更迭)による女性アナウンサーへの"キス・セクハラ"問題を報じた「週刊新潮」(9月12日号)。同誌の直撃取材に"完全無視"を決め込んだのは、齢75、テレ朝の早河洋会長兼CEO(最高経営責任者)である。

本日9月10日発売の写真週刊誌「フラッシュ」でも、記者に一瞥をくれることもなく、無言のままハイヤーに乗り込む早河会長の写真が掲載されたが、そのタイトルは《恐怖の独裁》である。早河会長のテレ朝支配が"恐怖"であるかどうかは置くとして、今回の桐永CPのキス・セクハラのみならず、局の不祥事に際して、この最高実力者の肉声が伝わってくることはほとんどない。早河氏にとっては先輩格に当たる"お台場の首領"ことフジテレビの日枝久相談役が、曲がりなりにも雑誌取材に応じるのとは対照的だ。

ところが、今年2月、そんな早河氏が相好を崩すような一幕があった。テレ朝開局60周年記念式典である――。小誌「ZAITEN」は2019年5月号(同4月1日発売)で《テレ朝・早河会長「ワンマンショー」誌上中継》(ジャーナリスト・濱田博和氏寄稿)と題し、式典の一部始終を詳報。今回は同レポートを公開したい。

なお、下記URLの通り、小誌ブログではテレ朝関連記事を無料公開しています。こちらもぜひともご覧ください。

・【9月4日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(1)

・【9月5日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)

・【9月7日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(3)

・【9月12日公開】
テレビ朝日・政治記者の知られざる実像

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式典に先立ち「テレビ朝日稲荷」を拝礼する早河会長
(テレ朝社報「tv asahi press」19年5月号より)

 さる2月4日。暦の上の春を迎えたこの日、東京・六本木ヒルズのテレビ朝日本社から程近い、同社直営のライブハウス「EXシアター六本木」に、部長級以上の社員やグループ会社幹部、さらには系列局の代表や広告代理店幹部らが集まった。業務を外れても支障のないテレ朝の一般社員までが参列を求められ、着席で最大920人を収容できる場内は熱気に包まれていた。

 2013年11月開場の同シアターは、スイッチを押すだけで座席を巻き取るロールバックチェア方式を採用し、立ち見なら1746人を収容可能。09年6月に同社初の生え抜き社長(14年6月からは会長兼CEO=最高経営責任者)に就任以来、10年の長きにわたってテレ朝グループに君臨する〝ドン〟早河洋(75)ご自慢のハイテク施設だ。早河が六本木ヒルズの本社周辺に構築を目指す「メディアシティ」の一翼を担っている。

 そのEXシアターでこの日午前11時から催されたのが、1959年2月1日に本放送を開始したテレ朝(当時は日本教育テレビ)の「開局60周年記念式典」だ。参列した若手や中堅の社員を「テレ朝はここまで個人崇拝の会社だったのか」と驚かせた「早河万歳=マンセー」式典の一部始終をダイジェストでお送りしよう。

 その前に開局60周年を迎えたテレ朝の現状をおさらいしておく。

女子アナはまるで「喜び組」

〝万年民放4位〟と揶揄された同社の視聴率は昨18年、全日帯の年間平均で7・7%の2位(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。トップの日本テレビにわずか0・2ポイント差にまで肉薄し、3位のTBSとは1・4ポイント、4位のフジテレビとは2・0ポイントもの大差をつけている。また、同年10月クール(10~12月)の全日帯は7・8%と、5年半ぶりに日テレから1位を奪取した。

 この好調ぶりを支えるのが、プライム帯(19~23時)放送のドラマ群だ。10月期の連ドラで全局1位の『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(10月クール平均15・8%)、2位の『相棒season17』(同15・5%)が大きく貢献、長寿ミステリー『科捜研の女』(同12・5%)も健闘している。

 だが肝心の業績は低迷が続く。減収減益を記録した19年3月期第3四半期(18年4~12月)は売上高、営業利益とも4位のまま。トップの日テレとは売上高で約902億円、営業利益で約234億円の大差をつけられ、視聴率の絶好調ぶりが業績に反映されない体質は一向に改善が進まない。

 とは言え、やはり視聴率ですべてが決まるのがテレビ局というものだ。あるテレ朝幹部は「万年4位の指定席を脱して、トップに肉薄する2位にまで押し上げた早河会長は昨今、卓越した経営者を自任するようになり、角南源五社長(62)ら側近のすり寄りぶりも一段と露骨になっている。開局60周年記念式典で早河会長を〝神格化〟する演出は、それを端的に物語っている」と話す。

 では、EXシアターの式典会場に戻ろう。シアター内の広いステージ上には客席から向かって上手前方に演台が据えられ、その壇上を丈の低いカラフルな花が覆う。演台後方にもピンク中心の豪華な花。ステージ後方の壁には巨大な横長のスクリーンが投影され、その両脇のブルー地に「60」の文字が浮かび上がる。

 司会進行役は視聴率好調の早朝の情報番組『グッド!モーニング』でMCを務める坪井直樹と松尾由美子。ともに早河お気入りのベテラン局アナウンサーだ。

 式典のメインイベントとなる早河の「開局60周年記念講演」に先立ち、ポップな衣装で統一した同局の若手女子アナたちが登場。テレ朝の社歌など複数の楽曲を歌いながら、軽快なダンスを披露した。これを見た参列者の一部からは「何だか北朝鮮の『喜び組』みたいだ」と失笑が漏れた。

 続いてステージ後方の巨大スクリーンに映し出されたのは、テレ朝60年の歴史を回顧するVTRだ。その中では『相棒』の水谷豊、『リーガルV』の米倉涼子、『科捜研の女』の沢口靖子、『TVタックル』のビートたけしなど、テレ朝の主要番組の主役を務める芸能人が次々と登場して祝辞を述べていく。

「早河会長、60周年おめでとうございます。今日の私があるのも、早河会長のお陰です」――。つまり、彼らが一様に賛美したのはテレ朝という会社ではなく、今も番組の主要出演者に関する最終決定権を握り続ける早河個人だったのだ。これを見てドン引きしたという若手社員が嘆く。

「いくら会長とはいえ、一個人をそこまで神格化して見せるのは、普通の会社でも異常。『これほど個人崇拝の会社だったとは......。この会社にいても大丈夫なのか』と、先行きが不安になりました」

北朝鮮の最高人民会議か

 さて、いよいよ式典のメインイベント、早河の講話が始まる。仕立ての良いスーツに白いシャツ、薄いグリーンのネクタイ姿。英国の作曲家エルガーの有名曲『威風堂々』が流れる中、スポットライトを浴びながら赤絨毯の上を颯爽と歩いて登場した早河は、テレ朝が出資する「新日本プロレスリング」のスター選手と見紛うばかりの迫力である。

 花に覆われた演台にセットされた椅子に着席し、進行役から「社員の総意として、会長の話を承ります」などと持ち上げられた早河は、A4の紙27枚に大きめの文字サイズで印刷された約1万1千字の講話を読み上げていった。テレ朝の開局式典にもかかわらず、ステージ上にいるのは早河ただ一人。完全なるワンマンショーだ。

 講話の内容は、文字やグラフとなって巨大スクリーン上に逐一投影されていく。スクリーンにはそれだけでなく、読み上げる早河の表情のアップや、長年低迷を続けた視聴率を2位にまで引き上げた「我らがヒーロー」のお話を有難く拝聴している参列者の姿まで、折に触れて映し出された。巨大なアリーナで行われるコンサートさながらの映像演出は、さすが本職のテレビ局のスタッフである。

 参列したある中堅幹部は「早河会長は北朝鮮の最高人民会議の金正恩(朝鮮労働党委員長)、もしくは中国の全国人民代表大会(全人代)の習近平(国家主席)にしか見えなかった。演出の担当者は、会長を新興宗教の教祖とでも見せかけようと考えたのかも知れません」と苦笑する。

 そして講話冒頭で早河が語った若き日の回想はいみじくも、85年10月の『ニュースステーション』(Nステ)の放送開始以来、「権力に物申すテレビ局」と認識されてきたテレ朝の現状と未来を示唆するものだった。関連個所をほぼ原文のまま引用しよう。

「私自身がテレビを志したのは大学時代に放送研究会に所属し、ドラマの脚本を勉強したのが大きなきっかけです。2年の時、初めて書いた脚本が20大学のドラマコンクールで、今で言えば橋田寿賀子さんのような大御所審査員に〝脚本はこれが一番〟と褒められ、学業成績が悪かったこともありまして、テレビを選択したわけです」「入社前にアルバイトをしていた日本テレビで、当時人気絶頂のエンターテインメント番組『シャボン玉ホリデー』を覗いたり、入社後は日本初のワイドショー『木島則夫モーニングショー』で働いたりと、若かりし頃のこの3種類の体験が後の私のテレビ人生に大きな影響を与え、番組をいろいろな角度から見られるようになり、テレビという世界の広がりや奥深さを学ぶことができた」

報道番組はワイドショーか?

 ここに早河というテレビ人の原点が凝縮されている。もともと脚本家志望だった早河はここで、自らが根っからのエンタメ志向であることを、巧まずして告白しているのである。Nステの初代局プロデューサーを務めたはずの早河が重視する報道番組の要素とは「ニュースとしての新鮮さ」や「ニュースの核心にどれだけ切り込めるか」などではなく、「表面的にいかに面白いか」に尽きている。

 換言すれば、早河にとっての報道番組とはニュースの本質をどう伝えるのかではなく、ワケ知り顔の評論家や芸能人らがニュースを材料に「ああでもない、こうでもない」と面白おかしく語り合うワイドショー路線のことなのだ。

「こんなエンタメ志向の早河会長が君臨し続けるテレ朝に、報道機関としての責任を期待したところで土台無理な話。だから昨今のテレ朝が批判を浴びている、安倍晋三・自民党政権に対するすり寄り姿勢にしても、早河会長にとって大した問題にはならないのです」(テレ朝報道局元幹部)

 早河の講話はこのあと(1)過去の悔恨を含むテレ朝の歴史、(2)自身が分析したテレビ離れの要因、(3)盟友のサイバーエージェント社長・藤田晋と協業する「AbemaTV」との緊密な連携の必要性―などとありきたりの内容に終始し、最後にこう結ばれた。
「60周年、還暦の本卦還りであり(中略)みんなで力を合わせ、新しい時代のテレビ朝日として生まれ変わりたい」

 この〝本卦還り〟が、エンタメ路線のさらなる追求を意味することは言を俟たないだろう。式典に続いて午後零時半からEXシアター2階の屋上庭園で開催された懇親パーティーでは、テレ朝社外取締役で東映グループ会長の岡田裕介の音頭で乾杯が行われたあと、ニュースでリポートする若き日の早河や角南らのVTRが流され、結婚式の披露宴さながらの盛り上がりを見せた。早河は一連の〝マンセー演出〟にすっかりご満悦だったという。(敬称略。年齢等の表記は発売当時のまま)

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記念式典で講演する早河会長の面持ち
(テレ朝社報「tv asahi press」19年5月号より)

開局60年の"本卦還り"のテレ朝を見舞ったのは、野獣の如きCPのセクハラ事件だった。そういえば、還暦は厄年でもある。

なお、テレ朝側は上記レポート掲載の「ZAITEN」19年5月号発売後に、早河会長と職員に対する人身攻撃ないしいわれなき誹謗中傷、式典での発言が事実と異なる、番組出演者のビデオメッセージは会社に向けられたもので、早河会長を賛美したものではないなどといった内容の「抗議文」を小誌編集部に寄せている。ちなみに、本編上にある早河会長の講演時の描写は、テレ朝社内で公開された映像に基づいている。

テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(3)

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番組の最高責任者が、番組出演の女性アナウンサーに"キスセクハラ"の狼藉を働く――。こんな前代未聞の汚辱に塗れたテレビ朝日の看板報道番組「報道ステーション」。下手人の最高責任者、桐永洋氏はすでにチーフプロデューサー(CP)の職を解かれ、BS朝日に追われることになったというが、本来なら「懲戒解雇」レベルの不祥事との指摘も聞かれる。

そんな桐永氏の報ステCPとしての不適格性を小誌「ZAITEN」は再三にわたって指摘してきたが、その核心のひとつは前身の「ニュースステーション」以来続く老舗報道番組のワイドショー化を推し進めてきたことに他ならない。そして、その軽薄路線を桐永CPのもとで彩ってきたのが、昨年10月のリニューアルから事実上のメインキャスターを務める元テレ朝局アナの徳永有美である。

ご承知の通り、お笑いタレント内村光良との"不倫結婚"の過去を持つ徳永アナ。報道番組MCの適格性には当初より疑問符が付されてきた。"不倫アナ"をMCに据え、果てはCP本人の"凶悪セクハラ"......桐永報ステの末路は、早い段階で運命づけられていたようだ。

そこで今回は、前回ブログ上で公開した「ZAITEN」19年3月号(同2月1日発売)掲載の《テレ朝「報ステ」破滅へのバンザイ三唱》の前段レポートとなる19年1月号(18年12月1日発売)の《テレ朝「報ステ」徳永アナに視聴者の罵声 》(ジャーナリスト・濱田博和氏寄稿)を以下に無料公開したい。

なお、下記URLの通り、小誌ブログではテレ朝関連記事を無料公開しています。こちらもぜひともご覧ください。

・【9月4日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(1)

・【9月5日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)

1901tvasahi.jpg(写真は19年1月号掲載記事より。左上が早河洋会長、下中央円内が桐永CP、右上が徳永アナ)

 10月19日朝、前日の視聴率一覧表を見ていたテレビ朝日幹部の表情が険しくなった。米倉涼子主演ドラマの新シリーズ『リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜』第2回の視聴率が18・1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区=以下同)と、前回を3・1ポイント上回る好調を示したのに対し、これを受けて始まった看板報道番組『報道ステーション』は9・6%。何と1ケタ台に急落していたのだ。

 報ステの前枠の『相棒』(水曜日21時)と『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(およびその後継番組の『リーガルV』、木曜日21時)は、常に15~20%の高視聴率を稼ぐドル箱番組。視聴率は前枠の番組に引っ張られるので、この2番組の放送期間中の水曜と木曜の報ステは、自ずと視聴率の〝発射台〟が高くなる。テレ朝編成局関係者が語る。

「水曜と木曜の報ステの視聴率は硬派なニュースを取り上げても他の曜日より高くなり、悪くても12~13%台は当たり前でした。18日は通常より15分遅れで始まったとはいえ、それでも8・5ポイントも急落した上に最終的に1ケタ台とは前代未聞。極めて深刻な事態です。新体制になった報ステに嫌気が差した視聴者が逃げ出しているとしか考えられません」

 テレ朝の〝ドン〟と称される会長兼CEO(最高経営責任者)の早河洋(74)の肝煎りで元テレ朝アナの徳永有美(43)を事実上のメインキャスターに迎え、10月から新たなスタートを切った報ステ。チーフプロデューサー(CP)には朝のワイドショー『グッド!モーニング』(GM)のCPとして視聴率引き上げを達成した桐永洋(48)が抜擢され、番組もスタジオ演出重視のワイドショータッチに大きく変貌した。

 お笑いタレント内村光良との不倫騒動の果てに退社した徳永が13年ぶりにキャスターに復帰するという話題性の高さから、初日の10月1日の視聴率は11・4%と、前週末から1ポイント上昇した。しかしその後はしばしば10%を割り込むようになり、8%台の日さえある体たらく。桐永が6月までCPを務めたGMにさえ負けている。徳永を始めキャスターの顔触れをリフレッシュしたにもかかわらず、10月の平均視聴率は10・4%と、前月の10・5%からむしろ0・1ポイント下落した。

 水曜日の『相棒season17』、木曜日の『リーガルV』を受けた報ステの視聴率をもう少し追ってみよう。相棒初回の10月17日は17・1%を受けて10・1%(開始は30分遅れ)、第2回の同月24日は17・9%を受けて10・4%(同15分遅れ)。リーガルV初回の10月11日は15・0%を受けて10・3%(同15分遅れ)。いずれもぎりぎり2ケタで踏みとどまるのが精一杯で、リーガルV第2回の10月18日は前述した通りの惨状だ。

 その一方で相棒第3回(15・6%)を受けた10月31日は14・0%と高水準、リーガルV第4回が放送されるはずだった11月1日は15・4%と新体制下で初めて15%を突破した。

 だがこれには裏があった。10月31日は相棒の高視聴率を受けて始まり、番組中で東京・渋谷のハロウィーン騒動を取り上げ、さらに『世界体操ドーハ2018』の生中継を後番組に控えて番組自体が30分の短縮版で終わったため。また11月1日はテレ朝が中継したプロ野球日本シリーズ第5戦が延長にもつれ込み、リーガルVの全時間帯と報ステのほぼ全ての時間帯が日本シリーズ中継に充てられた。他人の褌で相撲を取った格好だ。

 つまり、新体制の報ステは何らかの特殊要因でもない限り、2ケタの視聴率を維持することさえ覚束ない事態になっているのだ。

「不倫で辞めた人なぜ起用?」

 新体制の報ステの視聴率が低迷している大きな要因の一つが、事実上のメインキャスター徳永に向けられた視聴者の嫌悪感である。

 徳永は2003年4月に内村との不倫騒動が表面化し、担当番組を軒並み降板したが、翌年4月の報ステスタートと同時に同番組のスポーツ担当キャスターに就任した。この人事の背景には早河のプッシュがあったとされる。だが最終的には内村との再婚を選び、05年4月にテレ朝を退社。〝セレブ〟にのし上がった内村の妻として主婦業に専念しており、17年1月からはAbemaTVの「AbemaNewsチャンネル」で『けやきヒルズ』のキャスターを務めていたものの、セレブ主婦の余技としか見られていなかった。

 それだけにキャスター本格復帰が伝えられると、当時のキャスターで権力者に厳しい視線を向ける小川彩佳(33)の降板を惜しむ声が上がり、徳永の〝前科〟は週刊誌などで大々的に蒸し返された。

 そして実際に徳永が画面に登場した10月になると、テレ朝に電話やメールで寄せられる視聴者からの「徳永辞めろコール」は途絶えることなく、メインの位置に座る徳永を視聴者が見慣れたはずの月末になって却って増加している。そのごく一部を紹介しよう。

〈いろいろ問題を起こした人をなぜ今ごろ使うのか、経緯が知りたい。常識として考えられない。何か裏があるのか。今までテレ朝が好きで見ていたが、もう見るのを止める〉(40代女性)

〈華もない、頭も良くない。不倫した人がなぜ帰ってきたのか不思議。普通の会社ではありえない。もう見ないわ〉(60代女性)

〈不倫して辞めた人がなぜ戻って来られるのか。(他人の)不倫のニュースがあったら、どう報道するの?〉(60代女性)

〈こんなお騒がせ女、番組から降ろせ。女子アナは他にいくらでもいる。このところ報ステそのものの評価が落ちている〉(60代男性)

〈何か落ち着かない。受け答えも雑で喋り過ぎる。年増感が出過ぎている。もう報ステが見たくなくなった〉(60代男性)

〈バラエティーのような雰囲気を醸し出す徳永アナにはがっかり。年齢の割には落ち着きがなく、代わった方がよい〉(60代男性)

〈「自分が一番」と勝ち誇ったような顔を見ていると引っぱたきたくなる。ニュースステーションの頃から見続けてきたが、あの人が出るのなら見るのは止める〉(60代女性)

〈流儀も笑い方も化粧も古く見苦しい。あんなポンコツ、誰が選んだのか。もうテレ朝を見るのは止める〉(50代女性)

〈小川さんは一生懸命でまあまあだと思っていたが、徳永さんはただの主婦が出ている感じ。起用の意味が全く分からない。もう少し政治に詳しい人にしてほしい〉(70代女性)

 いかがだろう。不倫アナ徳永に対する視聴者の見方はかくも厳しいのだ。しかも、逆に彼女を評価する意見は滅多に聞かれない。社長の角南源五(62)は10月30日の定例会見で「始まって間もないのでぎこちない面があるかも知れないが、徳永キャスター、竹内由恵アナウンサー(32)が加わったことでスタジオが明るくなり、親しみやすい雰囲気も出てきたのではないか」などと能天気に語ったが、早くも同日午後には、この発言に対する疑問の声が寄せられた。

〈社長が定例会見で徳永さんを良い方に捉えて発言したようだが、視聴者の意見は一切取り入れないのか? 業界の中だけでものを見ているから視聴者とのズレが生じる。徳永さんは感じが良くない。何だか会長がこの人に相当入れ込んでいて、AbemaTVにも会長が推して出していたとか。そのうち変な噂も出かねない。春頃には他の局アナに変えてあげてはどうか〉(60代女性)

 またしても徳永をキャスターに捻じ込んだとされる早河は、この意見をどんな思いで読んだことだろう。

時代錯誤の「亭主関白」礼讃

 実はキャスター復帰が発表された段階から、テレ朝関係者の間で囁かれていた徳永の致命的欠陥がある。10月29日の朝日新聞朝刊で劇作家・演出家の永井愛も指摘した「問題意識の欠如」。それは新体制2日目の10月2日に早くも明らかになった。

 18年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった京大特別教授の本庶佑がこの日、妻の滋子同伴で記者会見。「サイエンスは未来への投資。今儲かっているところにさらにお金を注ぎ込んでいては他国に遅れを取る。システマティックかつ長期的な展望で基礎研究をサポートしてほしい」と、近視眼的な日本の助成政策を鋭く批判した。これを受けて報ステも、本庶の問題提起に力点を置いたVTRを制作する方向で動いていた。

 ところが夕方の打ち合わせの段階で徳永が発した一言で、事態が一変する。主婦目線が売り物の徳永は、滋子が会見で「主人を支える側に回り、ノーベル賞を受賞できて大変嬉しい」と語ったことに反応、「奥さんの言葉が良かったですね」と発言した。するとCPの桐永はあっさりと徳永に同意。「奥さんの話でやれ」と、スタッフに方向転換を指示したのだ。

 その結果、スタジオでのキャスター間のやり取りやVTRの力点は本庶が示した重要な問題提起から離れ、「僕は、典型的な亭主関白として研究に邁進してきた」という本庶のコメントを加えたワイドショー風味に様変わりした。

 納まらないのは「亭主関白バンザイ」という時代錯誤の報道を見せられた女性スタッフの面々だ。桐永は放送終了後の反省会で「なぜあんな気持ちの悪いタッチになるのか?」と厳しく追及された。

 報ステスタッフは「本庶さんの会見は今の政府のやり方の問題を的確に指摘していたのに、それが全く伝わらなかった。元はと言えば、時代錯誤で能天気な徳永さんの発言がきっかけなのです」と憤りを隠さない。

幸せな〝セレブ妻〟の限界

 徳永の問題意識の欠如は、10月30日の放送でも露見した。石井啓一国土交通相はこの日、米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設を巡り、県による辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回処分の効力を一時停止すると発表した。これを受けて岩屋毅防衛相が工事再開の意向を表明したため、玉城デニー県知事は「自作自演の極めて不当な決定」と批判。第三者機関の国地方係争処理委員会に審査を申し出る考えを明らかにした。

 報ステもこのニュースを取り上げ、元共同通信社編集局長でコメンテーターの後藤謙次は「ソフトランディングで行くべきという意見も政府内にある。政府側もぜひ話し合いのテーブルに着くと。民主主義の原点に立ち返ることが大切」と、安倍晋三政権の性急で一方的な対応に苦言を呈した。

 ところがこれを受けた徳永は、首を傾げながら「でも、話し合いといっても、なかなか本当......難しいですよねえ」と、あたかも「もはや話し合っても無意味」とさえ受け取れる言葉を口にした。翌日にはすぐさま70代男性から怒りの声がテレ朝に寄せられた。

〈全く不適切な発言で、「沖縄(県民)はもう諦めろ」と言っているに等しい。沖縄の民意を理解しようとしていない気持ちの表れで、理不尽で強圧的な国の対応を是認するもの。これこそ安倍政権の思うツボで、前任者の小川さんならこんな発言は絶対にしなかった〉

 あるテレ朝元幹部は「この意見は全くの正論ですが、そもそも局アナ時代にスポーツやバラエティー番組しか担当した経験がなく、取材でも的外れの質問をすることで有名だった徳永に、沖縄の現状を理解しろと要求すること自体、土台無理な話です。しかも彼女は今、大ブレイクしたお笑いタレントの幸福なセレブ夫人。一般市民の感覚など持ち合わせてはいません」と分析し、次のように語る。

「早河会長には徳永に執着する何か特別な理由でもあるのでしょう。だが、看板報道番組のメインキャスターなど、彼女には明らかに荷が重すぎる。完全な人選ミスです。次の改編期にでも交代させないと、報ステの視聴率に悪影響を及ぼすだけです」

テニスのラリー見守る観客

 ところで10月からの報ステでは、それまでメインキャスターとして中央に座っていた富川悠太(42)が画面向かって下手のサブキャスターの位置に移り、復帰した徳永が中央に座っている。これに関して表向きは「どちらがメインというわけではなく同格扱い」と説明されたが、実際には富川がスタジオに設置された大型ボードやフリップの扱いなど〝汗を掻く役回り〟を担当し、徳永は着席してニュースの受けコメントや番組進行を担う。やはり事実上のメインは徳永なのである。桐永はこれを「天真爛漫な姉さん女房をしっかり者で働き者の旦那が支えるイメージ」と表現した。

 だが、テレビウォッチャーの吉田潮は『女性セブン』11月1日号掲載の記事中で、この徳永の状態を「真ん中に座って、首を振りながら両隣の富川キャスターとコメンテーターの会話を聞く姿は、テニスのラリーを見守る観客のよう」と揶揄している。メインキャスターとしての徳永がいかに非力かを射抜いた絶妙な表現だ。

 テレ朝の10月(1~28日)の月間平均視聴率は全日(6~0時)で7・7%を記録、13年6月以来5年4カ月ぶりの単独首位となった。ただ、19~22時のゴールデンタイムと、報ステを含む19~23時のプライムタイムは首位の日テレに及ばず、社長の角南は「まだかなりの差がある」との認識を示した。

 報ステの視聴率低迷の原因が徳永から醸し出される軽薄さ、さらにはCPの桐永が推し進めるワイドショー化にあることは明らかだ。しかし、この二人を任命したのが〝ドン〟早河であるのは言うまでもない。あるいは早河は、報ステの迷走を機に、この枠をドラマやバラエティーに替えてしまおうという〝ハラ〟でも持ち合わせているのだろうか。(敬称略年齢等の表記は発売当時のまま

テレ朝・報ステには目下、不倫アナに引き続き、セクハラCPへの罵詈雑言が寄せられているに違いない。ちなみに、テレ朝側は本記事には何ら抗議等を寄せなかった。

テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)

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「文春でも新潮でも何でも来い!」――。テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」の桐永洋チーフプロデューサー(CP)は、かつて、そんな怪気炎を上げていたという。それから1年余り、報ステのフィールドリポーター、森葉子アナウンサーへの"キスセクハラ"を本日発売の週刊文春、週刊新潮に取り上げられ、まさに両誌の十字砲火の末、CP更迭、BS朝日への出向に追い込まれた桐永氏の末路は、皮肉を超えて、今となっては運命的にすら映る。

他方、報ステはじめ、テレ朝の番組が自局の幹部職員の醜聞について沈黙を決め込むのは置くとしても、ゴシップ物では文春・新潮記事の"切り張り"まがいの内容に終始する各局ワイドショー番組も、自らの脛の傷が疼くのか、日本を代表する報道番組における醜悪なセクハラ事件については一様に静観に徹しているようだ。

それはそれとして、桐永CPを戴き迷走する報ステの問題点を種々報じて来た小誌「ZAITEN」。2018年11月号(同10月1日発売)掲載の《テレビ朝日"二人の洋(ヒロシ)"で「報ステ」自壊》レポート(9月4日付ZAITENブログをお読みください)に引き続き、今回はその第二弾として、19年3月号(同2月1日発売)に掲載した《テレ朝「報ステ」破滅へのバンザイ三唱》(ジャーナリスト・濱田博和氏寄稿)を以下に無料公開したい。

【編集部注】
9月4日に第1弾の記事を以下のブログにアップしています。
http://www.zaiten.co.jp/blog/2019/09/post-5.html

9月7日に第3弾の記事を以下のブログにアップしました。
http://www.zaiten.co.jp/blog/2019/09/post-7.html

1903tvasahi_hayakawa_kirinaga_tokunaga.JPG(写真は19年1月号掲載記事より。左下が桐永氏)

 2018年の暮れも押し詰まった12月26日(水)深夜、東京・六本木のテレビ朝日本社8階の特別会議室に、時ならぬバンザイ三唱が響き渡った。

 この日は看板報道番組『報道ステーション』が年内の放送を終え、番組スタッフら関係者約100人が参加して恒例の打ち上げが開かれた。宴もたけなわの頃、挨拶に立ったプロデューサーの鈴木大介が一人の女性社員を呼び寄せる。スポーツ局所属の彼女は早稲田大学に在学中、老舗サークル「バンザイ同盟」のメンバーとして、合格発表や卒業式といった学内イベントや結婚式、テレビ番組などに登場し、バンザイを繰り返してきた〝猛者〟だった。

 その女性社員の指導の下、民放を代表する報道番組と自他ともに認める報ステのスタッフ約100人が、一斉に早大流バンザイを三唱したのである。

 かつて歴代の自民党政権からその影響力を恐れられた『ニュースステーション』。だが、後継の報ステの現状は、後述するように内容、視聴率とも、とても打ち上げをバンザイで締め括れるようなレベルにはない。それが余興とはいえ、劣勢を精神論だけで乗り切ろうとした旧日本軍さえ想起させるような熱狂は、薄気味悪ささえ感じさせた。打ち上げ終了後、ある男性スタッフが呟いた。

「上が上なんだから仕方ない」

「上」とは、昨年7月から報ステのチーフプロデューサー(CP)を務める桐永洋(48)のこと。バンザイ三唱を含め、打ち上げの式次第の最終決定権を持つ桐永自身が早大OBに他ならないのだ。

 小誌は18年11月号掲載のレポート「テレビ朝日〝二人の洋〟で『報ステ』自壊」の中で、テレ朝の〝ドン〟と呼ばれる会長兼CEO(最高経営責任者)の早河洋(75)に抜擢されたCPの桐永の下、報ステが変容する様を詳述した。今回は桐永の知られざる正体について深掘りしてみよう。

 打ち上げのバンザイ三唱で母校・早大への執着を示した桐永だが、民放キー局のテレ朝にあって、その経歴は些か異色である。

「偏差値50」のCP

 広島県福山市出身の桐永は1986年4月、6年前に同市内に新設された県立高校普通科に入学した。ネット上で公開されている同校の偏差値や卒業生の進学先、さらには桐永の同級生の就職先を同窓会名簿で見る限り、同校の学力レベルはお世辞にも進学校と呼べるものではない。

 そんな地方の無名公立高を卒業した桐永は89年4月、夜間学部時代の早大社会科学部に入学するが、その際には同学部にこの年入学する学生から始まった自己推薦入試制度を利用し、学力試験を免除されている。当時の社学部は「政経など昼間学部は学力的に無理だが、早大ブランドが欲しい」という手合いが受験する穴場の学部として知られ、入試の難易度は昼間学部に比べてかなり低かったが、それさえ桐永は免れたのだ。

 事実、桐永自身も、当時の同学部のそうした評価を正しく認識していたと思われる。報ステのCP就任後もしばらく見られた自身のフェイスブックの自己紹介欄には、最終学歴を「早稲田大学卒」とするだけで、学部や学科名までは記載されていない。

 早大在学中、数多くの政治家を輩出していることで有名な雄弁会に所属した桐永が、93年4月にテレ朝に入社できたのは、180センチ前後の体格と、学生時代に鍛えた口八丁ぶりを評価されたからだという。ガタイの良さからか、当初は数少ない社員カメラマンとして取材部に配属。90年代後半は社会部で警視庁記者クラブや司法記者クラブに所属した。当時を知るテレ朝関係者が証言する。

「警視庁クラブでは殺人など強行事件を捜査する花形の捜査1課を担当したのですが、とにかくサボってばかり。夜回りのため会社からハイヤーを呼んでも、1課幹部の取材には行かずに遊び回っているだけでした。ネタも全く取れず、使い物にならないので、先任の1課担よりも前に、警視庁クラブから放擲されました」

 こうした背景もあってか、あるテレ朝関係者によると、同僚から出身高校を問われた桐永は、広島県内で最も偏差値の高い「広島大学附属福山高校」と答えていたという。少し調べれば簡単にバレてしまう嘘を臆面もなく口にできる、場当たり的な身のこなしはその後の累進にも役立ったようだ。しかし、学歴に対する感情は今もって強く桐永を捕えているらしい。

 報ステCP就任直後の所信表明演説で、桐永は「今の報ステのイメージは偏差値70くらい。東大入れるんじゃないかという感じ。偏差値50の普通の庶民が見た時に理解できないから、チャンネルを変えちゃおうとなっちゃってる」などと発言、内外から顰蹙を買ったことは11月号でも触れた。

 だが、見てきた通り、実はその桐永自身が「偏差値50の普通の庶民」で、所信表明では自らの偽らざる想いを率直に披歴したと考えれば、逆に話は分かりやすい。つまり彼自身、硬くて複雑なニュースを理解することが困難なのだ。そんな桐永を看板報道番組のCPに抜擢するのだから、報ステの視聴率アップに賭ける早河の覚悟には相当なものがあるのだろう。

報ステは「ワイドショー」か

 小誌は19年1月号掲載の「テレ朝『報ステ』徳永アナに視聴者の罵声」の中で、昨年10月以降の報ステの視聴率低迷について(1)不倫問題でテレ朝を退社した過去を持つ事実上のメインキャスター、徳永有美(43)が醸し出す軽薄さと無神経さ、(2)早朝のワイドショー『グッド!モーニング』の視聴率アップの功績を評価されて報ステCPに抜擢された桐永が推し進める、報ステのワイドショー化――の2点を原因に挙げたが、その状況は今も何一つ変わっていない。

 例えば、事実上の移民受け入れとされる出入国管理法(入管法)改正案が参議院で強行採決された12月8日の直前、7日の放送の前枠は「ISUグランプリファイナル カナダ・バンクーバー2018」の男女ショートプログラムの生中継で、報ステもこのニュースから始まった。

 ところが次のニュースは入管法改正案ではなく、「寒暖差で疲労する」という天気絡みのヒマネタ。フリップを使って寒暖差疲労度をチェックしたあと、アナウンサーの小木逸平(44)が「首を温めると効果がある。呼吸法も大切」などとまたもフリップで解説し、呼吸の仕方を出演者全員が実演して見せるという、桐永お得意の朝のワイドショー張りのスタジオ演出が続いた。この能天気なネタに費やされた時間は、何と11分だった。

 3番目にようやく入管法改正案問題が取り上げられたが、前日の審議で「17年までの3年間で69人の外国人技能実習生が死亡していた」とする法務省の内部資料が明るみに出たにもかかわらず、VTRはわずか3分半。件の資料を取り上げることもせず、スタジオ展開も合わせて7分で終了した。

 この日の視聴率は12・5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と同月最高を記録したが、前枠のグランプリファイナルが15・4%と高く、報ステの「発射台」もそれに助けられて高くなっただけ。番組開始後は一方的に下がり続け、ネット上には「報ステ終わった」との書き込みが相次いだ。

 同様の事態は、韓国の裁判所が元徴用工訴訟の原告側に対し、新日鉄住金が韓国内に所有する資産の一部差し押さえを認めた翌日の1月9日にも起きた。

 前枠の「サッカーAFCアジアカップUAE2019 日本×トルクメニスタン」の生中継を受けて、冒頭のニュースはお決まりのアジアカップ。次は元徴用工訴訟関連と思いきや、何とインフルエンザだった。ここで天気と合わせてVTRを6分半、さらにスタジオに呼んだクリニックの医師が、新たな抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」の仕組みや服用の注意点など、8分間も解説を続けた。

 元徴用工訴訟関連は結局、番組終盤に局アナの森川夕貴(25)が担当する「森川ニュース」のコーナーで、わずか1分間取り上げられたに過ぎなかった。

 果たしてこれが、日本を代表する報道番組と言われていた、あのNステの後継番組の姿なのだろうか。この日の視聴率は9・9%と1桁台に終わった。

年始も衝撃的な低視聴率

 こうした急激なワイドショー化を嫌気して、報ステから離れていく視聴者が後を絶たない。昨年12月(3~28日)の月間平均視聴率は10・0%と、前月比0・9ポイントもの大幅な下落。17回の放送のうち、目標の11・5%を達成できた日はわずか3回(前月は25回中9回)に過ぎず、2桁に乗せた日も8回(同15回)と半分以下にとどまる。週間平均視聴率も第1週から順に10・8%→10・3%→9・6%→8・6%と、文字通りのじり貧状態だ。

 また、徳永を事実上のメインキャスターに据えた新体制下では初めてとなるクール(昨年10~12月の3カ月)平均は10・5%と、前クール(同7~9月)から0・3ポイント下落した。これを見る限り、前述した指摘は的中したと言わざるを得ない。桐永の報ステCP起用に当たり、早河はクール平均視聴率11%台を厳命したという。だが徳永の起用は早河の強い意向によるもので、視聴率低迷の責任の半分は早河が担うべきものだ。

 19年の報ステは、新年の特番ウイーク終了後の1月第2週からスタートした。だが早くも2回目の同月8日の視聴率は7・6%と、衝撃的な低水準を記録。小誌1月号掲載の記事で、〝不倫アナ〟徳永の報道番組キャスターとしての適格性に不安を感じ、4月以降のスポンサー降板の可能性を仄めした企業も存在する。冒頭のバンザイ三唱は〝お手上げ〟の暗喩のようである。(敬称略。年齢等の表記は発売当時のまま

女性部下に対しても諸手を挙げて"進撃"していったのかどうかは知らないが、いずれにせよ、桐永氏の躓きの石は、すでに撒かれていた、否、自らが撒き散らかしていたことだけは確かだ。

なお、テレ朝側は上記レポート掲載の「ZAITEN」19年3月号発売後に、桐永の名誉を毀損している、またプライバシーを侵害しているなどといった内容の「抗議文」を小誌編集部に寄せている。ちなみに、小誌編集部は、出身校などの情報についてはプライバシーの侵害には該当しないとの弁護士の見解を得ている。

テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(1)

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明日9月5日発売の「週刊文春」および「週刊新潮」(ともに9月12日号)がそろって取り上げたテレビ朝日の報道番組「報道ステーション」のチーフプロデューサー(CP)桐永洋氏の"キスセクハラ"事件。その野獣の所業の一部始終は両誌をご覧頂きたいが、この桐永氏については、小誌も現在発売中の「ZAITEN」19年10月号(9月2日発売)で《テレビ朝日・報道ステーションCP「官邸忖度」の咆哮》と題し、7月の参院選報道で見せた"異様な忖度劇"を詳報している。しかし小誌はこれまでも複数のレポートで、昨年7月のCP就任当初から、桐永氏が、前身の「ニュースステーション」から続くテレ朝の看板報道番組の最高責任者として、およそ資質を持ち合わせていない人物であると警鐘を鳴らしてきた。

そして、ここにきて、同僚女性スタッフへのセクシャルハラスメントの語感をはるかに超えた蛮行の発覚......桐永氏が180センチを優に超える巨漢であることを考えると、被害者女性の味わった恐怖は計り知れない。

いずれにせよ、番組制作とはまったく別次元の醜聞で自滅した桐永氏だが、結果として、小誌レポート群はその末路を予言するような格好になったと言える。

そこで小誌編集部では、桐永氏の"報道人"としての資質、そして、そんな人物を抜擢した早河洋会長兼CEO(最高経営責任者)が齢75を超えてもなお君臨するテレ朝の"報道機関"としての資質を改めて問うべく、「ZAITEN」18年11月号(同年10月1日発売)で報じた《テレビ朝日"二人の洋(ヒロシ)"で「報ステ」自壊》(ジャーナリスト・濱田博和氏寄稿)レポートを以下に無料公開したい。

【編集部注】
9月5日に第2弾の記事を以下のブログにアップしました。
http://www.zaiten.co.jp/blog/2019/09/post-6.html

9月7日に第3弾の記事を以下のブログにアップしました。
http://www.zaiten.co.jp/blog/2019/09/post-7.html

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 7月12日深夜、東京・港区の六本木ヒルズにあるテレビ朝日本社5階のN会議室に、この日の放送を終えたばかりの看板番組『報道ステーション』のスタッフが集められた。着任したばかりのチーフプロデューサー(CP)、桐永洋(48)が〝所信表明〟演説を行うというのだ。局員と制作会社を合わせると総勢130人近いとされるスタッフを前に、桐永は冒頭から危機感を煽った。

「会社からは『報ステはこのままではピンチだから変えてくれ』と言われました。何がピンチか一言で言うと、視聴率の低迷です。報ステが看板番組である以上、有無を言わせぬ視聴率を取り続けるしかありません」

 確かに報ステの視聴率は桐永が指摘したように、メインキャスターが古舘伊知郎(63)から局アナの富川悠太(42)に交代した2016年4月以降、じり貧状態が続いていた。古館時代の視聴率は13~14%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)が当たり前で、16、17%台も珍しくなかった。

 だが、富川になって以降は良くて12%台、基本は1ケタ台に落ち、クール(3カ月)の平均視聴率も10%そこそこ。桐永は〝テレ朝のドン〟で会長兼CEO(最高経営責任者)の早河洋(74)から「報ステのクールの平均視聴率を11%台に上げろ」と厳命された上でCPに就任していた。

 テレビ局では、番組ごとの視聴率を1分単位で表示したグラフが各番組関係者に配布される。報ステのスタッフの間では、桐永が所信表明で視聴率推移に触れることは、ある程度予想されたことだった。だが、演説開始から7分が過ぎた頃、桐永が示した報ステの現状分析とその表現方法に、多くのスタッフが言葉を失った。

「やっている内容がちょっと小難しい。イメージで言うと偏差値70くらい。東大入れるんじゃないかという感じ。偏差値50の普通の庶民が報ステを見た時、何かすごく正しいことをやっていそうなんだが、理解できないから付いて行けない、重苦しくてチャンネル変えちゃおうとなっちゃってる」

 実際にこの演説を聞いたスタッフの一人が呆れ顔で話す。

「古館さんが去ってからの、報ステの視聴率低迷の原因は明確です。一つ目は早河会長の意向、そればかりか、菅義偉官房長官の顔色まで窺う篠塚浩・報道局長(56)の露骨な介入で、安倍晋三政権に対する批判的な報道がますます難しくなり、報ステに真っ当な政権批判を期待していた視聴者が離れていったこと。二つ目は、何の問題意識もない上にメインキャスターとして明らかに能力不足の富川アナの存在。勉強不足からくる的外れのコメントも多く、サラリーマン層が中心の視聴者から毛嫌いされています」

 別のスタッフは桐永の無神経さに嫌悪感を露わにする。

「世の中にはいろんな関心を持った、いろんな境遇の人がいる。その人たちに今起きていることを伝えるのが報ステの役割で、そのためには取材感のあるVTRを作ることが不可欠。そもそも偏差値を持ち出して表現すること自体、視聴者をバカにしている。あまりの幼稚さに愕然としました」

 さらに桐永は「我々がワクワクしてるから、富川や(サブキャスターの)小川(彩佳アナ=33)がワクワクしてる。そのワクワクが視聴者に届く」「自分の役割は整体師。皆さんの溜まった疲労というか、コリをポキポキッと動かすだけで見違えるように変わる」などと場違いな擬音語を連発、スタッフの失笑を買った。ある報ステ幹部は「桐永に嫌気が差した優秀なスタッフが辞めてしまうのではないか」と危惧する。

ロス支局長時代はゴルフ三昧

 報ステのスタッフを「無神経で幼稚」と呆れさせた新CPの桐永は1970年、広島県生まれ。中学、県立高校時代とバレーボール部に所属し、89年4月には、この年から始まった自己推薦入試制度を利用して早大社会科学部に入学した。予備校関係者が話す。

「社学部は今でこそ人気学部で、入試の偏差値も高いのですが、実は98年4月までは夜間学部で、『昼間学部は無理だが、早大卒のブランドが欲しい』という向きが入る穴場の学部でした。偏差値も他学部に比べて低く、学内では一段低く見られていた。しかも自己推薦入試なら、他学部よりかなり簡単な学力試験さえ課せられず、面接と作文で合格できる。初年度はハードルも相当低かったはずです」

 なるほど。「偏差値50の普通の庶民」などという大時代的な物言いの裏にはどうやら、桐永自身が自らの偏差値に対して抱く複雑な思いが存在するようだ。

 さて、社学部に入学した桐永はバレーボール部には入らず、政治家やマスコミ関係者を数多く輩出する早大雄弁会で活動、93年4月にテレ朝に入社した。桐永を知るテレ朝元幹部が語る。

「とにかく大変なゴルフ好き。報道局内でゴルフと言えば、真っ先に桐永の名前が挙がるほど。00年代前半にロサンゼルス支局長に赴任した際には、仕事は現地スタッフに任せて週3回はゴルフに興じていたそうです」

 ロスから帰国後、社会部で警視庁記者クラブのキャップを務めた桐永は、夕方のニュース『スーパーJチャンネル』のデスクを経て編成制作局(現・総合編成局)に異動。13年7月から15年6月までの2年間、同局編成部報道情報担当部長に就いた。この時期、桐永は自らのその後につながる番組編成上の〝策〟を施している。前出のテレ朝関係者が語る。

「午前4時55分から始まるテレ朝の情報番組の視聴率は、常に他局の後塵を拝してきた鬼門。早河会長の肝煎りで13年9月末からは『グッド!モーニング』(GM)と看板を掛け代え、MCにエース級のアナウンサーを投入したものの、視聴率は低迷が続きました。編成部の窮余の策が、『おはよう!時代劇』と銘打った時代劇の再放送枠をGMの前に設定し、未明に目覚める高齢者層を取り込むこと。名作時代劇を見せて、視聴率の〝発射台〟を嵩上げし、GM自体の視聴率も上げる。民放ではよくある小手先の手段ですが、この発案者が桐永だったのです」

 15年3月末の『おはよう!時代劇』スタートから約3カ月後の同年7月、何と発案者の桐永自身がGMのCPに就任する。編成部時代の彼の目論見はまんまと的中し、同年6月までの1年間は5時台が2・0%、6時台が4・6%、7時台が5・7%だったGMの平均視聴率は、桐永のCP任期3年目(17年7月~18年6月)には5時台で3・4%、6時台で7・1%、7時台では9・1%にまで上昇した。

 好調な視聴率が余程嬉しかったのか、桐永は前日の視聴率結果を誰彼となく自慢して歩き、社内の顰蹙を買っていたという。絵に描いたような〝自作自演〟だったが、早河の宿願を叶えた桐永は、その論功行賞として報ステCPに抜擢される。その直後に彼が行ったのが、件の所信表明だった。

「俺はアベ友じゃない!」

 その桐永のCP就任以降、報ステは安倍政権批判や重めの社会問題を取り上げる機会が激減、代わりに天気やスポーツといった軽めのニュースの比重が高まるなど、明らかに様変わりした。ネット上では「報道ステーションではなく、スポーツステーションお天気付き」などと揶揄される始末だ。

 例えば7月上旬の豪雨災害を巡る安倍出席の飲み会「赤坂自民亭」の問題。報ステは騒ぎになっても全く取り上げず、国会で追及された安倍が答弁した段階でようやく報道。同じ7月に自民党衆院議員の杉田水脈が行ったLGBTヘイト発言に対する大規模な抗議デモに関しても、取材しながら取り上げたのは1週間も後だった。

 また、一時は公開されていた桐永自身のフェイスブックには、元テレ朝アナウンサーで安倍側近として大臣にまで成り上がった丸川珠代(47)とのツーショットがアップされていたり、安倍の御用ジャーナリストで準強姦問題を報じられた山口敬之(52、元TBS政治部記者)と「友達」になっていたりしたため、桐永自身がネット上で〝アベ友〟と叩かれた。

 もちろん安倍官邸とのレポ(連絡員)役を務める報道局長の篠塚が報ステに介入してくる以上、部下の桐永がその意向に背くことは難しいのだろう。ただ、桐永の場合、アベ友とは少々事情が異なるようだ。報ステスタッフが話す。

「桐永自身はアベ友と称されることが我慢ならないようです。スタッフルームでは『何でそんなこと言われなくちゃいけないんだ。丸川とは同期だし、山口は警視庁記者クラブ時代に知り合った単なるゴルフ友達。オレは安倍が嫌いなのに、アベ友なんて書かれるのは迷惑千万。安倍批判はどんどんやって構わない!』と放言しています。それを聞いたスタッフは、またまた呆れ果ててしまうのです」

ニュース番組とは呼べない

 実は桐永CPの報ステが、安倍批判や重い社会問題をほとんど取り上げなくなった背景には、全く異なった理由が存在するという。別のスタッフが明かす。

「GMの視聴率が桐永CP時代に上向いたのは、桐永自身が編成部時代に〝発射台〟を高くしておいたことが大きいのですが、彼自身は『スタジオ演出に力を入れたから成功した』と吹聴しています。だから、時間帯や視聴者層が全く異なる報ステのCPになっても、取り上げるニュースを選ぶ基準はズバリ、スタジオ演出できるかどうか。そうでないニュースはせいぜい、短い『さまざまニュース』で済ませてしまうのです」

 事実、桐永は報ステをGM化する態勢を着々と整えている。古巣のGMで総合演出を担当していた系列制作会社のベテラン男性スタッフを報ステに異動させ、番組のスタジオ演出を一任。キャスターの顔触れが変わる10月以降、総合演出の担当者はさらに増える予定だという。GMから引き抜いたスタッフについて、桐永は「僕の考えていることをすべて実現してくれる。女性の好みまで知っている」などと軽口を叩いている。

 85年10月の『ニュースステーション』(NS)の放送開始から30年を超えたテレ朝の看板番組としては、俄かに信じ難い事態だ。

「確かに朝食や出勤の準備をしながらテレビを見ている視聴者が大半の早朝の情報番組なら、そうした手法が奏功することもあるでしょう。ところが、仕事先から帰宅して『今日の出来事をきちんと把握しておきたい』と考えるサラリーマン層が視聴者の中心を占める報ステの場合、小手先のスタジオ演出ではなく、きちんと取材したVTRでないと納得してもらえません。しかし、桐永CPになってから、スタジオ演出にやたらと人数を割いてスタッフを取材に行かせないので、VTRに取材感が全くない」(前出のスタッフ)

 スタジオ演出を極端に重要視する桐永の姿勢が、報ステの本番に悪影響を与えた具体例を一つ示そう。8月13日、月曜日。この日放送されたトピックスは(1)台風15号の動向を中心とする天気、(2)前日夜に拘留中の大阪府警富田林署から逃走した男の動向、(3)阿波おどりの運営を巡る一連の騒動――のわずか3本だった。

 特に(3)はスタジオ演出、VTR、さらには「総踊り」現場からの生中継と大展開した。その結果、安倍が前日夜の山口・下関での講演で「自民党の憲法改正案を秋の臨時国会で提出できるよう、議論を加速させたい」と発言した問題などは、短い「さまざまニュース」に落とされてしまった。前出のテレ朝元幹部は「7月以降、報ステを見ているだけでは重要な出来事が分からない。『ニュースを見たい』という需要に応えられない報ステなど、もはやニュース番組とは呼べない」と憤る。

 こうした方針転換の結果、制作会社所属のベテランスタッフの中には、来年3月末での契約解除を仄めかされたケースもある。NS時代から社会派のテーマを多数取り上げ、報ステでも原発や甲状腺がんの問題を提起していた50代前半の男性ディレクターAだ。

 番組を長年支えてきた実績があるにもかかわらず、Aは7月半ばにテレ朝の報ステ担当部長から「あなたの得意な社会問題の分野は今後あまり取り上げないので、契約更新は難しい」などと宣告された。これまで慣例だった次の担当番組の斡旋もなく、幼子を抱えるAは途方に暮れているという。

コメンテーターに〝アベ友〟か

 さて、こんな見当違いの桐永を看板番組のCPに抜擢したのは、 全番組の出演者に関する決定権を握る〝テレ朝の天皇〟、会長の早河であるのは言うまでもない。

 小誌は今年1月号掲載レポート「見城に踊る『早河テレ朝』軽薄の履歴書」でその実態を詳報したが、早河自身は若い頃から取材が苦手な内弁慶気質で、報道畑出身というよりは、ワイドショー(情報番組)のディレクター上がりと称する方が相応しいテレビ屋だ。

 テレ朝関係者によると、安倍政権の〝太鼓持ち〟、幻冬舎社長の見城徹(67)に籠絡された早河はかねてから、社会問題に強い関心を寄せるサブキャスターの小川を今年10月の番組改編期に交代させる意向だった。

 その後釜として早河は、3月末でNHKを退社したフリーアナウンサーの有働由美子にオファーを出したが、すげなく断られた。そこで早河が持ち出してきた〝隠し玉〟こそ、不倫騒動の末にタレントの内村光良と結婚して05年4月にテレ朝を退社したフリーアナウンサー、徳永有美(43)だった。同郷で同期の大下容子(48)を小川の後任アナに熱望していた桐永は、予想外の早河人事にひどく落胆したという。そもそも局アナ時代の徳永は、早河のお気に入り女子アナの一人だった。

「早河さんは編成制作局長当時、徳永アナが内村との不倫問題発覚で担当番組を降板したにもかかわらず、04年4月からスタートする報ステのサブキャスターに据えようと動いていた。古館プロの反対で結局、河野明子アナ(09年退社)に落ち着きましたが、それでも徳永は報ステの木・金曜日のスポーツコーナーを担当させてもらえたのです」(前出のテレ朝関係者)

 実は徳永のテレ朝退社時、早河は彼女に重要な助言をしている。

「退社の挨拶に来た徳永に『ギャラがかかるから、フリーになっても事務所に所属するな』と話していたそうです。ほとぼりが冷めたらテレ朝に復帰させる、という含意なのでしょう。でも、徳永の局アナ時代、報道向きの素顔を見たことなんてない。報ステ内では『小川が徳永に代わると、同じく問題意識のない富川とのコンビではニュースが伝わらない』などと早くも揶揄されています」(同、テレ朝は早河の発言を否定)

 報ステの驚愕人事はまだある。8月8日の新キャスター発表時には公表されなかったが、スポーツやエンタメ情報がメインとなる毎週金曜日のレギュラーコメンテーターに弁護士の野村修也(56)を起用するというのだ。

 野村は日本テレビ系の『情報ライブ ミヤネ屋』などのワイドショーや情報番組に出演し、大阪維新の会や安倍政権の応援団的な発言を繰り返す人物として知られる。ちなみにこの野村は中央大法学部出身、早河の後輩である。

 だが野村は、今年7月17日、第二東京弁護士会から業務停止1カ月の懲戒処分を下されている。野村は大阪市長(当時)の橋下徹に任命された大阪市特別顧問時代に、同市の職員を対象に政治活動や組合活動に関するアンケートを実施。これが弁護士の「品位を失うべき非行」に当たるとして懲戒処分を受けたのだ。このため、テレ朝は「処分期間中のコメンテーター起用の発表はタイミングが悪い」として、公表を先送りした。

 いくら野村本人が異議申し立ての意向を示したとはいえ、公に処分された弁護士を看板番組のコメンテーターに使うのは、コンプライアンス(法令遵守)の観点からもいかがなものか。

スポンサーからの厳しい声

 だが、早河や桐永のやりたい放題が罷り通るのかといえば、そこはスポンサーあっての民放のこと。関係者によると、報ステのスポンサーの中には突然の路線変更に不満を示すところが出ており、特にスポーツ・エンタメ路線に舵を切る金曜日のスポンサーからは「きちんとした報道番組と評価して提供してきたのに、話が違う」と厳しい声が聞かれる。テレ朝側は否定するものの、大手自動車メーカーなど数社がスポンサーを降板する意向を示し、営業部門が対応に追われた。

 加えて9月初めには、テレ朝社内に経費削減指令が出された。全日の視聴率は好調にもかかわらず、6月以降の毎月の売上高は前年同月比で最大5億円も減少しており、特にスポットCM(番組間CM)の落ち込みが、民放キー局の中で最も激しいという。報道局長の篠塚は「ネット時代が思ったより早く到来した」などと言い訳しているが、スポンサーのテレ朝離れが顕著になっているため、ついにネット企業に脱皮を図る方針のようだ。

 桐永のCP就任以降の報ステの視聴率は2カ月平均で11・0%と、前年度の平均をわずかに上回った。テレ朝関係者によると、小川との不仲ぶりを〝文春砲〟に直撃された富川は「誰が喋った? もう誰も信用できない!」などと疑心暗鬼に陥っている。その一方、文春報道で逆に好奇の目に晒され、視聴率的にまずまずのスタートを切れた桐永は「俺は正しい、間違ってない、数字を取ってる。何か言いたいなら(週刊誌でなく)俺に直接言って来い。文春でも新潮でも何でも来い!」などと怪気炎を上げている。

 その威勢がどこまで続くのか。「偏差値50路線」の報ステの舞台裏からは目が離せないが、小誌読者の視聴には耐えない番組に成り下がるのは必定だ。 (敬称略、年齢等は発売当時のまま)

桐永CPの「文春でも新潮でも何でも来い!」との雄叫びは、1年余にして現実のものとなった......

なお、テレ朝側は上記レポート掲載の「ZAITEN」18年11月号発売後に、政権の問題点について適切な報道をしている、スポンサーの離反はない、早河会長の名誉を棄損している、また、同会長と徳永アナの関係を否定するなどといった内容の「抗議文」を小誌編集部に寄せている。

百十四銀行「セクハラ事件」の見解および続報について

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百十四銀行・渡辺智樹会長が今月11月1日付で相談役に退くこととなった女子行員に対する「不適切行為」傍観事件。問題の不適切会合が開かれてから9カ月が経過した本日16日、高松商工会議所(香川県)で二人の役員が退任した――。

一人は同会議所会頭だった当の渡辺氏で、9日の地元マスコミに対する会見で表明されていた通りの辞任だが、ここにきて、もう一人、森田紘一副会頭(地元ゼネコンの「合田工務店」社長)が昨日15日突如「一身上の都合」から辞意を表明、本日付で即刻辞任する、極めて不可解な展開となった。

日本経済新聞の報道によると、森田氏が社長を務める合田工務店側自体が「本人と連絡がとれない」ため、辞任理由を把握していないという異常な状況になっているが(11月15日時点)、渡辺氏の会頭辞任を受け、その職務を副会頭の森田氏が代行する予定だった。それだけに、森田氏の突然の辞任は不可解の域を超えて、百十四銀行関係者をはじめとする地元・香川の人々に"ある疑心"をかき立てているのではないだろうか。

一方、小誌「ZAITEN」のツイッターでお伝えした通り、小誌記者は昨日、森田氏に関する"ある事実"を確認すべく高松商工会議所に取材を申し込んでいたのだった――。

それはともかく、女子行員に対する「セクシャルハラスメント事件」を初めて報じた小誌ZAITEN(2018年12月号「百十四銀行・渡辺会長『女性行員セクハラ事件』」記事)として、本ブログで現時点の見解を表明しておきたい。

なお、百十四側は2月の渡辺相談役(当時会長)と石川徳尚・執行役員本店営業部長(当時、前今治支店長、現在は解任)および女子行員らが参加した取引先との接待宴席について、取引先が女子行員らに対して行った行為は「不適切行為」であり、「セクハラではない」という見解を示している。

しかしながら、小誌が入手している情報を総合すると、2月宴席での行為はセクハラ行為に他ならないどころか、その語感を超えた非常に悪質なものであったと断じざるを得ない。そのため、小誌は今後も、今回の宴席での不適切行為を「セクハラ事件」と呼ぶ。

それにしても、11月9日に百十四本店で開かれた中間決算発表に付随したセクハラ事件の謝罪・釈明会見は、「被害者保護」を口実にした無内容なものに終わった。その一方で、小誌は会見に先立って百十四側に詳細な質問状を送付していた。

ところが、広報窓口の太田康之・広報CSRグループ長は「会議中」を理由に小誌記者の電話に出ることは一切なく黙殺の構えを見せた。そこで小誌が「広報側から回答がない場合は、綾田裕次郎頭取以下、首脳部の直接取材を敢行する」という旨を伝えて、ようやく回答文を寄越す有り様。その上、小誌記者も本店会見に出席したいという要請はすげなく却下された。

9日の綾田頭取による会見は当初の予定時間を大幅に超えたものの、百十四側の「被害者保護」を口実にした木で鼻を括った対応の前に、被害者を捕捉していない地元記者たちが攻めきれずに幕切れ、ほとんど新事実が出ることはなかった。それでも、女子行員を取引先の接待宴席に出席させた理由を「場を和ませるため」という、百十四の企業体質を雄弁に物語る答弁を引き出したことだけは成果だったと言えるだろう。

ただし、小誌が会見に先だって百十四側に送付した質問状の中身はおよそ会見での質問のように生易しいものではなく、さまざまな新事実を含んでいるものだったということは、読者の皆様にあらかじめお伝えしておきたい。なお、百十四側の回答自体は9日の会見同様、無内容なものだったことは言うまでもない。

というのも、香川県内の一部書店では告知されているようだが、小誌ZAITENは次号2019年1月号(18年12月1日発売)において、セクハラ事件の続報はもちろん、百十四銀行の経営問題を取り上げる予定だ。

そこで小誌は、9日会見前に送付した質問状とは別の質問状を百十四側に送った。しかし、窓口の太田・広報CSRグループ長は前回同様、小誌記者の電話には一切出ることなかったものの、回答期限を超えた11月16日18時になって「ご質問いただいております諸点は、個人または社内手続にかかる事柄等でございますので、お答えすることが難しいことをご理解いただけますよう、お願い申しあげます」とのメールを寄越した。

質問内容には、百十四の"諸問題"が縷々綴られているとはいえ、綾田修作元会長をはじめとする元経営陣の現在の役職など、単純な事実確認も含まれており、そのすべてが「お答えすることが難しい」はずはない。逆に、百十四が如何に小誌取材から逃れたいのかが分かる。ただ、太田氏がこのような対応をこれ以上続けるのであれば、綾田頭取への直接取材は元より、場合によっては「公開質問」を敢行するしかないだろう。

今月11月に創業140周年を迎えた百十四銀行。地元でのシェアは圧倒的で、主要企業のほとんどが同行をメインバンクにしている。その驕りからなのか、預金者を顧みることのない「殿様銀行」の如く振舞っているといった怨嗟の声が小誌編集部にも多数届けられているほど。それどころか、今回の渡辺氏らによるセクハラ事件を傲慢経営の"因果応報"と見る地元民は多いのだ。その一方、百十四内部からは、渡辺氏の前代未聞のスキャンダル辞任を機に、銀行経営を正常化したいという行員たちの勇気ある声も多く寄せられている。

しかし、セクハラ事件の"下手人"である渡辺氏、百歩譲って、百十四側の言い分を額面通りに記しても、若い女子行員が取引先に嬲られるのを口頭でしか制止し得なかった代表取締役会長が、その職を追われてもなお、相談役に居座り続けているのである。このような無道は断じて許されるものではなく、渡辺氏の相談役就任を甘んじて受け入れた綾田頭取の経営責任も問われるべきであると、小誌は考える。

繰り返しになるが、小誌ZAITENは次号で改めて百十四銀行の無道経営を追及することを予告しておく。

つきましては、読者の皆様におかれましては、12月1日土曜日発売のZAITEN1月号をぜひご期待ください。

【ZAITEN公式サイト】http://www.zaiten.co.jp/

【電話】03-3294-5651

また、百十四銀行に関する情報提供を以下の公式サイトフォームおよびアドレスで募集しております。

【情報提供フォーム】http://www.zaiten.co.jp/formmail/indict.php

【情報提供アドレス】indictment@zaiten.co.jp

ZAITEN11月号「テレビ朝日・報道ステーション」先出しレポート

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テレビ朝日の看板番組『報道ステーション』が10月1日月曜日から大幅リニューアルされる。7年半にわたりサブキャスターを好評裏に務めてきた小川彩佳アナがなぜか降板し、タレントと不倫醜聞を起こして2005年に同局を退社したフリーの徳永有美アナが突如、月~木曜日のキャスターに起用されるなど、その不可解な舞台裏は『週刊文春』に取り上げられ、大いに話題となった。
 小誌「ZAITEN」は10月1日月曜日発売の11月号で、テレ朝の天皇こと早河洋会長と、7月から就任した同番組の桐永洋チーフプロデューサーにスポットを当てた「テレビ朝日"二人の洋(ヒロシ)"で『報ステ』自壊」と題する、5ページにわたる詳細なレポートを掲載。報道番組の在り方を変えた『ニュースステーション』以来30年以上続いてきた、テレ朝の看板番組の自壊ぶりを詳報している。ぜひともご覧いただきたい。
 ところで本稿締め切り後の9月下旬の段階でもなお、テレ朝内部では10月以降の報ステの番組内容をめぐって紆余曲折が続いていた。そこでレポートには盛り込めなかった最新の事実関係を、掲載号に先駆けてこのブログでお伝えする。

一、テレ朝が10月からの報ステの新キャスターの陣容を発表した8月8日の時点では、毎週金曜日は小木逸平アナと竹内由恵アナがキャスターを務め、番組内容もニュースだけでなく、スポーツやカルチャー情報を充実させるとされていた。ところが、複数のスポンサーから「話が違う」と強硬な抗議を受けたことで、金曜日の"エンタメ路線"は撤回を余儀なくされ、月~木曜日と同様、ニュース中心の内容に落ち着いた。いったんはぶち上げた路線を撤回するなど、前代未聞の醜聞だ。この件について同社広報部は「そうした事実はない」と回答した。

一、8月8日の時点では未発表だった毎週金曜日のコメンテーターに、中央大法学部卒の早河会長の後輩で、弁護士の野村修也氏が起用されることが報ステ内で公表された(本稿締め切り時点では公表されず)。野村氏は橋下徹大阪市長(当時)の特別顧問を務めていた12年、同市の全職員に対して政治活動や組合活動に関するアンケートを実施した。これがプライバシーや政治活動の自由など基本的人権を侵害し、弁護士の「品位を失うべき非行」に当たるとして今年7月、所属する第二東京弁護士会から「業務停止1カ月」の懲戒処分を下された。いわば曰く付きの人物だ。

一、 キャスターとしての徳永アナの位置付けは表面上、現メインキャスターの富川悠太アナと同格とされている。だが実際には、徳永アナが着席してニュースの受けコメントや番組進行を担当する一方、富川アナはスタジオに設置されたボードやフリップの扱いなど「汗を掻く役回り」(テレ朝関係者)を担う。16年4月からメインキャスターを務めている富川アナは事実上、先輩の徳永アナにその座を奪われることになる。

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